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「想うものの欠片」第八話 ⑭

14
「残りはお前が食べなさい」
三時の茶の菓子は大抵余ってタースの胃袋に収まる。
皇帝はいただきます、と嬉しそうに笑うタースの食べっぷりを眺めていた。
「タース、お前はいくつになる」
「十五です」
「ちゃんと飲み込んでから返事しなさいよ、汚いわね」
「あ、はい。すみません」
コンコン、とノックされる。
タースは慌てて飲みかけた紅茶のカップを置くと、扉を開きに向かう。
「デシルです。ご報告したいことがございます」
「入れ」
皇帝の返事に合わせてタースが扉を開けると、日に焼けた黒い髭の男が立っていた。
船長のデシルだ。四十代前半くらいの彼は、タースの訪ねるまま飛行船の話をしてくれた人物だった。
ちらりと目があって、タースが笑うと太くつりあがった眉の下の目が少し緩む。
「失礼いたします。陛下、航行は順調ですが、ティエンザの飛行船が我らの背後についてきています」
膝を床について語る船長に皇帝は立ち上がって正面に立った。
「何機だ」
「視認できましたのは三機。まだ相当の距離がありますが近づいているようです」
「ふむ。放っておけ」
「は、しかし…」
「追いついたとして、この空の上で奴らも何か仕掛けてこれるわけではあるまい?」
「しかし」
「確かにティエンザとは交渉は決裂したが、敵対するわけではない。彼らも私をどうにかするつもりならティエンザで捕らえたはずだ。大方、我らがライトールに組することを阻止したい、その程度だ」
静かな言葉に大柄なデシルは体を小さくした。
タースは二人のやり取りを静かに傍らで聞いていた。
ティエンザの飛行船。あの飛行場には大勢の軍兵がいた。どの飛行船も、そう。これから飛び立とうという様子で物々しかった。あれが、この飛行船の後を追ってきているんだ。
デシルさんが心配するものもっともだった。もし、火薬を使われて、落とされるようなことがあれば終わりだ。
タースは皇帝の顔をじっと見つめた。
落ち着いた様子。いつもの穏やかな笑みを浮かべる口元に、今また紅茶のカップを運ぶ。
伏せがちの目は長い睫に覆われて、翡翠色の瞳に薄く影を落とす。
少し。そう、シーガに似ている。
「しかし、陛下!もし、もしあ奴らが火器を使うようなことがあれば」
上げた手で制されて、デシルは黙った。
「だとして、デシル。我らに、何か出来るというのかな?この船には火器は積んでいまい?我らレスカリアはどの争いにも加担しない」
「はい…。今は全速力で祖国に向かうしか」
「それでよい。そのまま進むのだ」
「あの、高度を下げたら?酸素が濃くなるから、速度を上げられると思うな」
タースの提案にデシルが目をむいた。
「敵船を捕捉出来なくなる」
「捕捉する必要はない。デシル、タースを艦橋に連れて行くのだ。タース、よいな」
「はい!」
嬉しそうなタースにデシルは眉を潜めた。


船内の通路を早足で進みながら、デシルはタースに質問する。
「お前はライトール人だといったな」
「はい」
「以前、ウィスロも言っていたが、お前は何ゆえ機械の知識を持っているのだ」
「え、あの。僕はライトールで機関車の整備士をしていたんです。その時にエンジンとかモーターとか、飛行船のこととか。一通り教えてもらったから」
目の前でデシルが立ち止まり、タースは額をその背にぶつけそうになった。
「そうか。ライトールではお前のような子供でも皆、当然のように機械のことを知っているのかと思ったぞ」
「それはないよ。僕は学校に行ってない分、仕事を早く始めたから」
タースの返事に、どうやらデシルは安堵の表情を浮かべた。
「そうか、そうだよな」
「うん」
「いやぁ、ライトール人が皆お前みたいだったらどうしようかと思ったぞ」
「どうって?」
「ん、まあ。なんていうか。我が国は技術に関しては相当遅れている」
タースは首をかしげた。
レスカリアのことはよく知らない。
「陛下がお嫌いなのだ、新しい技術や機械がね。この飛行船だって、唯一、ティエンザから譲り受けたものだ。自国では飛行船を作る技術はないからな」
「え?じゃあ、デシルさんはレスカリアでただ一人の飛行船の船長だ」
少し誇らしげに笑って、男はタースの肩に手を回した。
「すごいな」
「だが、それだけだ。タース。我が国では新しいことは敬遠されるのだ。しかし、周囲の国がこれほどの技術を持つようになっては、知らん顔をしているわけにもいかない」
「それで、鎖国を止めたんだ?」
「ん、まあ、民も感じるところがあるんだ。中には、我が国の文明レベルを嘆き、新たなものを取り入れようとする動きもある。だが、皇帝陛下はそれをもっともお嫌いになる。このところの異常気象で民は疲弊している。明るい希望のあるものであれば何にでもすがるのだ。だから、過激な反政府活動をするものも現れる」
「反政府活動?」
平和なライトールではあまり聴かない言葉だった。
「まあ、そういう輩もいるということだ」
デシルの歯切れは悪かった。

レスカリア帝国が船の航路をティエンザ王国と結んだのが三年前。それから少ししてライトール公国とも開通した。それまでは、一般の人間がレスカリアにわたることは許されていなかった。
レスカリアがどんな国なのか知らないけれど。
どこにでも、問題があるんだな。タースはティエンザの首都の疲れた人々の様子を思い出していた。大陸で最も技術の進んだティエンザも。地震や災害で大勢が生活の糧を失っていた。
ライトールにいた時は、機関車工場でも輸入する機械はティエンザ製で。ティエンザに遅れている、負けている。そんな声しか聞こえてこなかったのに。

文明の発達は、必ずしも人々が幸せになるものでもないのかな。

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ユミさん♪

はい~。原稿は出来上がっております。
でも、仁さまに言われてなんだか推敲したい気分もありますが。推敲するなら大々的に…。

そうです。わかります。ユミさんのせいじゃないんです♪
読みとりにくいんですよ~。特に、やっと出てきた神王さまの存在そのものを説明するのが。
へたくそだな~と思いながら。
かといって、これ以上視点を増やしたくなくて。
まだまだ、修行です。

いろいろと、メッセージを入れ込んでいます。
ゆっくり読み取ってください♪

新しいものって、必ずしも幸福をもたらしてくれるわけじゃない
ってことを改めて認識しました。知っていて損することはないと
思うけど、それをどう生かすかで、生み出さなくてもいいものを
生み出しちゃう可能性もあるわけで…。
うーん、やっぱりらんららさんの小説って、考えさせられます。
っていうか、読むペースが遅くて、すみません><
え、もう完結ですか?
この記事の下に、完結と書いてあるのをみたような…。
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