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「想うものの欠片」第八話 ⑯

16
飛び立ってから三日がたっていた。
「おめ、なんだか楽しそうだべ」
タガがニコニコ笑う。
隣でカガも同じ顔だ。
「うん、僕、学校って行った事がなかったから、いろいろな知識を教えてもらえるのがすごく楽しいんだ」
「優等生面になったなぁ~」
ウィスロがタースの頼んだ朝食をつつきながら笑う。
「あ、それ」
「おまえ、食べないのか?手をつけてないじゃないか。コリャなんだ?うめえな。こんなもん、あったかな」
「ジャガイモのグラタンだよ、ジャガイモをミルクで煮て、チーズをかけて焼いてあるんだ。熱いから冷めるの待ってるんだ」
「お前は美味いもんをいろいろ知ってるな」
タースが頼む食事は、いちいちパルを唸らせ、ウィスロたちはタースが頼む食事を手本に注文のレパートリーを増やしていた。
「ええと。そうかな?ライトールだと、このくらいは普通にどこでもあるし、誰でも知っている料理だよ?」
「ふん~。ライトールは、行った事ないな。この間のティエンザが初めてだ」
「あ、そうか。鎖国していたって聞いたからね」
タースが全部食べられてしまわないうちに皿を自分に寄せ、抱え込んだ。
「んだ。ティエンザにしても、ライトールにしても夢の都だ」
「夢の都?」
タースはまだ熱いグラタンを冷まそうとふうふうと息を吹きかけていた。
「ライトールが?逆に、僕らからしたら、レスカリア帝国って言ったら神秘の国って感じだよ!特に信仰の深いライトール人には聖地だからね」
「なに言ってやがんだよ、レスカリアは、時の止まった国さ」
ウィスロは低い声で小さくつぶやいた。
「つまんねぇ、国だ」

それを聞き取ってタガもカガも神妙な顔つきになる。
タースは三人の様子に首をかしげた。
皇帝に仕える仕事の彼らが、国を批判する?だから、低い声になるんだろう。
先日、船長のデシルが言っていたことを思い出した。
「…でも、僕は皇帝陛下は好きだな…」
そう、文明や科学が進むことで人が幸せになれるとは限らない。皇帝陛下は五百年前のことを知っているから、だから、レスカリアを鎖国したんだ。
「陛下は悪くない。だが」
ウィスロはそこで言いよどむ。
視線を上げてタガとカガとを見て、それからまた、ポツリとつぶやいた。
「タース、お前もレスカリアに着けばわかる。あんまりな、期待するな。多分お前さんが思うような国じゃねえ」
ウィスロは残ったパンを口に押し込んで、コーヒーを飲み込むと無言で立ち上がった。タガもカガも後に続く。
「あ、ねえ!ウィスロ、後何日で到着するの!?」
タースの質問にカガが振り向いた。
「あと少しだ」
そしてタガ。
「今日の昼にはつくだ」

気になりながらも、タースはまず、空腹を訴える腹に応えてやることにした。
グラタンはもう、すっかり食べごろでタースを待っているから。
一口目をすくいかけて、船の揺れに手を止めた。
高度を下げたために気流の強い場所ではこれまで以上に揺れる。レスカリアへの到着が近いことを想う。見知らぬ国、レスカリア。
「おい、タース、ほれ、そろそろ陛下のお目覚めだぜ」
よだれの垂れそうな一口目の運搬途中で、パルの声が邪魔をした。

「う」
うらめしそうに白髭の料理人を見つめると、パルは噴出した。
「とっといてやるさ、な、行ってこい、お目覚めのお茶を置いたら時間をくれるだろ?」
タースは大切そうにグラタンの乗ったトレーをカウンターのパルに渡すと、代わりに茶のセットが準備されたトレーを受け取る。
添えられているクッキーにすら、お腹が鳴った。
「絶対に、とっておいて!」
真剣なタースにパルは悪戯な笑みで応えた。
気になるなぁ、あの笑い。
タースの頭の中はホクホクのジャガイモでいっぱいだ。甘いんだよね、チーズの塩分が聞いていて、焼けた焦げ目が香ばしくて。
想像するとさらによだれが出てくる。
皇帝の部屋の前まで来たときに、また、ジファルの姿を見つけて、タースはなんともいえない深いため息を吐き出した。

「おい」
「あ、おはようございます」
ジファルが睨むので一応の挨拶はする。いつものようにさらっと通り過ぎる予定だったが、目の前にジファルが立ちふさがった。
「あの、なんですか?」
不意にジファルの手が顔の前に伸びた。
「うわ!?」
両手がトレーでふさがれているタースはよけようとして後ろに下がる。
ガチャと皿が傾く。
「なんだよ!」
目の前に伸ばされた手を危うくよけると、タースは睨んだ。
「こぼれちゃうじゃないか!」
「ばかもの」
もう一度、女の手が自分の顔に伸ばされるので、もう一歩下がろうとした。腕をつかまれた。
「動くな、ばかもの」
殴られるのか、と思わず目をつぶった。
と、女の手がタースの口元をぬぐった。
「?」
目を開けると、ジファルは親指の腹をぺろりと舐めたところだった。
「朝食を食べたのか?みっともない、顔につけたまま陛下にご挨拶か?鏡くらい見ろ」
グラタンがついていたんだ。
タースは顔が熱くなるのを感じながら、それでも口を尖らせた。
「口で言えばいいのにさ、ビックリするだろ」
「言ったところでお前は自分でぬぐえるのか?」
憮然と返されて、タースはあ、と気付いてまた顔を赤くした。
両手はふさがれている。
「あ、ありがとう」
「言葉遣い」
「…ございます」
ジファルはフンと睨むと、いつもどおりタースの変わりにノックしてくれた。


「今日のお茶、少しチーズの香りがするわ」
皇妃の鋭い一言に、タースは密かにぎくりとする。
「あ、ええと厨房でチーズを焼いていましたから、それで」
「ふうん」
ちらりと眺めるとミレニアはソファーに背を持たれかけて足を組み替えた。
思わず視線をそらす。
「チーズをね、早朝からそんなものを誰が食べるんだろうなぁ」
皇帝は穏やかに笑いながら小皿のクッキーに手を伸ばす。
「うん、これもチーズの味なのか?」
タースは首をかしげた。
クッキーはいつもと同じはず。

皇帝の足元に、クッキーが落ちた。

「え?」
「やだ、陛下、こぼして…」
タースが目を丸くし、ミレニアが落ちたクッキーに手を伸ばそうとした時だった。

「うぐぅ」
胸を押さえ、皇帝は苦しげに震えていた。
「陛下!?」
見る見るうちに顔が青くなっていく。
そのまま、そう、硬直したまま。
朽ちた木のように皇帝は大きな体を横たえた。

「きゃあ!!」
何が、起こっているのか。
タースは目を丸くしていた。
「誰か!」
ミレニアの声に我に返るとタースはきびすを返す。
「お医者さんを!呼んで来ます」
と、タースが扉を開ける前に、ジファルが飛び込んできた。
押しのけられて、タースは床にしりもちをついた。
「陛下!」
皇帝に駆け寄るジファル。

と。
次の瞬間、ジファルは銃を構えた。

タースに向かって。

「!?」
「貴様!陛下に毒を盛ったな!?陛下に反意を抱く【逆月】(そげつ)の一味だな!?」

「ち、違う!」
弁解しようとしても、味方はいない。
皇帝は意識がないし、皇妃は半狂乱で叫んでいる。
何かが腕をかすめ、それが銃弾だと気づいた時にはタースは走り出していた。

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