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片翼のブランカ その6


気付くと、なんだか暖かいところに、ココは眠っていた。
頬の下に、柔らかい暖かいものがある。
嬉しくなって、ココは頬ずりした。
「やあね、くすぐったいわよ。」
カータと呼ばれた女の人だった。ひざの上に、ココは頬を乗せていた。
「あんた、翼、どうしちゃったの?片方しかないじゃない。怪我したの?」
彼女は、ココの大切な翼を、丁寧に拭いてくれていた。
すぐそばに、暖炉がある。
暖かい。
ココは金色の目を細めた。
幸せ。
「眠いの?」
「ココ、ね。生まれたときから、一個しか持ってないの。だから、ココはいつまでも大人
になれないし、出来損ないなの。」
「・・ふうん。」
カータは手を止めた。
「ココね、大人になるの嫌なの。ココ、何になるか分からないし。ココね、もう、会いた
い人もいないし、行きたいとこもないし。大人にもならないし。教室も抜け出したの。」
「・・悪いブランカだ。」
横のほうで、男の人の声がした。
「ココ、悪いの?」
「・・そうじゃないわよ。」
カータがくすと笑った。ココの下の柔らかなひざも揺れた。
「大人になれないから悪いわけじゃないでしょ。シェインも、ブランカは素直なんだから、
からかっちゃだめよ。」
「知らんね、そんなこと。」
「ほら、きれいになった。」
翼も、髪も、鬣も、きれいにさっぱりして、ココは嬉しくなった。
起き上がる。身が軽い。
「ありがとう。」
にっこり笑うココを、じっとカータは見つめた。その蒼い瞳は澄んで、きらきらしていた。
ココも見つめ返す。
「カータ、って、きれいね。」
そっと、その頬に手を伸ばす。
「あら、可愛い!」
ココは抱きしめられた。
ふくよかなカータの体が、ココにネムネ先生を思い出させる。
ちょっと、きゅんとなる。先生は、どうなっちゃったんだろう。もう、会えない。
「見て、この子の瞳、金色だわ。ちょっと、他のブランカと違うのよ。」
「片翼だしな。」
「その言い方、かわいそうでしょ。」
「お前みたいに、ペット扱いするほうが可哀想ってんだ。」
「ぺっと?」
ココは、そっと、カータから離れて、男の人のほうを見た。
黒い服の、大きな襟で顔を半分隠している。
柔らかい羊の毛のクッションにもたれて、煙の出る細い棒をくわえている。その煙は変な
においがした。
ココは、興味深そうに、そっと近寄る。
「あの、だれ?」
くすくすと、カータの笑う声がする。
「お前こそ誰だよ。」
男はにらみつけた。
「ココは、ココなの。えと、十年のクラスで、一番小さいブランカなの。」
「胸張っていうことか。」
「えと。」
「俺は、シェイン。あいつはカータ。俺たちはな、このエノーリアで一番の盗賊さ。」
「とうぞく?すごいね。一番なの!」
「ああ、すごいんだ。」
シェインはご機嫌で、ココの頭をなでて、横に座らせた。
「シェイン、煙のにおいするね。」
「ああ。煙草か?」
「うん。フワフワするにおい。」
「変な奴。」
「あの、とうぞくって何?」
二人は一瞬、顔を見合わせた。
「まあ、ブランカだからな。しょうがないか。」
ココは、カータの差し出したチーズの乗ったパンをくわえて、シェインの顔を覗き込んだ。
「とうぞくってなあに?」
「悪い奴らから、大切なものを取り返す仕事のことだ。」
「・・ふうん。悪いやつって、えと、ルーノみたいな人?」
二人はココの言葉に顔を見合わせる。
「ルーノって、神官のことか?」
「しんかんって知らないけど、ルーノ怖い人だったよ。怒鳴るの。だからココ、逃げてき
た。」
ちょっと得意げに話をするブランカに、カータは笑った。
「えらいじゃない。」
「うん、ココが痛いって言うと、ルーノは怒るけど何もしないの。だから、逃げたの。」
「・・まあ、そりゃそうだ。」
くすくす、シェインが笑う。
二人が嬉しそうに笑うので、ココも嬉しくなってきた。
「ココ、ルーノは、いや、俺たちもそうだが、守人はみんな、お前を傷つけたりできない
んだ。お前が痛いって泣くと、俺たちは死んでしまう。」
ココは首をかしげた。
「なんで?」
「契約があるんだ。守人にはね。」
そこでシェインはもう一度煙草をすった。
「ブランカは、知りたいことしか知らないって言うけど。ココはいろいろ聞くのね。」
「ねえ、けいやくってなに?」
ココはカータに抱きついて甘える。
「甘えんぼね。」
もう一度ぎゅっと抱きしめてくれるカータに、ココは嬉しくなる。そういうの初めてだっ
た。
「契約にはな、いくつかあるんだ。第一の契約は太古から守人が存在するために神と結ん
だ。守人にとって最も重要な三つの契約。言葉と契約は全てを律し、永遠にその力に縛ら
れること。ブランカを守り育て、決して傷つけないこと。生きとし生けるもの全てを、守
ること。守人の名の由来はここからきている。」
「言葉、と契約?」
「そうだ。お前はブランカだから分からないかもしれないが。守人は、言葉に力がある。
言葉の強さは人によって違う。強いものほど高い地位になる。だから、神官は一声で他の
守人を操ることすらできるんだ。そして、その力の上下関係を無視して逆らうことは第二
の契約で禁じられているわけだ。」
「第二の契約はね、ココ。守人が守人の社会の秩序のために決めた契約。守人は生まれた
ときに名をもらうけれど、教会で名をもらうときにね、第一と第二の契約に同意すること
になる。つまりどんな守人も、第一と第二の契約には逆らえないってわけ。」
「逆らうと?」
ココは今度はシェインのほうにもたれかかる。
意地悪な笑みを浮かべて、男は低い声で言った。
『死。』
「し?」
「やめてよ、シェイン、今心臓が止まりそうになったわ!」
本気で、カータは震えていた。
「なあに?」
「ほんとにブランカは平気なんだな。言葉に影響されるのは守人だけか。」
「ひっどいわね。ねえ、ココ。怒ってやって。シェインの言葉は神官と同じくらい強いん
だから、恐ろしい言葉に力をこめたら相手は死んじゃうわよ!」
背中を押されて、ココは首をかしげる。
「あの、ココ、怒るってどうやるか、分からないよ。」
ぷっ!
シェインが吹き出した。
「そりゃいい。」
「ココ、怒るってのはね、こうするの。」
パシッと、カータの手が、シェインの頬を打った。
「きゃ!」
ココはびっくりして、左右の守人を交互に見つめた。
「何すんだよ!」
「うるさいわね!人に向かって『死』なんていうもんじゃないわよ!ココがもし平気じゃ
なかったらどうするの!ココが死んじゃったら、私たちだって契約違反なのよ!死ぬんだ
から!」
「死ななかったんだからいいだろ!いちいち、うるせーな!」
「うるさいとは何よ!」
立ち上がったカータに押されて、ココが大事に抱えていた、おいしいチーズの乗ったパン
が転がった。
「ああ!」
「え?」
カータが下を見る。
パンはチーズを下にしてべたりと、床に張り付いていた。
「ひどいよ!ココのが!ココのが!」
半分泣きそうな顔をして、ココが訴える。
「ぷ、ココ、それが怒るって事だぜ。」
ココは、そっとパンを拾う。粘ついたチーズは、パンの表面をはがして床に残った。
「うえ。」
泣き出した。
「ごめんね、ごめん。泣かないでよ。」
「さっさと食べないからだぜ、どうせ、もう冷めて美味しくなかったさ。」
「分かったから、ほら、新しいのあげるから。」
荷物からまた、パンを出そうとするカータに、シェインが言う。
「おい、食料無駄にするなよ!」
「ほんとにけちなんだから、いいわよ、私が次に食べる分をあげるわよ!それでいいでしょ!」
「おう、ついでにダイエットでもしろ!」
ぺし、とシェインを叩いたのは、ココだった。
「お、なんだお前。」
「・・。」
睨みつける金色の大きな目が、そのうち涙で潤み始めた。
「やるか?」
シェインは面白がって、ココの銀色の髪をつんつんとつついた。
「うー。」
小さくうなって、ココは生まれて初めて、誰かにつかみかかるということをした。
あっさり抱き上げられ、足をばたばたして終わった。
「お前、小さいな。ブランカってこんなもんかな。」
「十歳って言ってたわよね。いろいろなんじゃないの?いいじゃない、守人の十歳よりは
ちょっと小さいけど。」
ココは、床におろされた。ココが立って見上げると、ちょうど、シェインの足の長さと同じくらいだ。
カータは、シェインより少し小さいので、ココの頭の先が丁度、きれいなおへそくらいになる。
選んで、ココはカータに抱きつく。
「お、なんだそりゃ。」
「あらま。嫌われたわね、シェイン。」
「ふん。もしかしてココ、お前男か?」
 シェインはにやりと笑う。
「おとこ?」
「やあね、ブランカにはないって聞いたわよ、それ。」
「分からないだろ、来いよ、ココ。」
「いやだ。」
ココの体を確認しようと、シェインが捕まえる。
「やあね、何喜んでるの。止めなさいよ。いやらしいんだから。」
「とか、いいながら、お前黙ってみてるじゃねえか。」
「まあね、気にならないって言ったらうそになるわね。」
カータが目を細めた。暖炉で焼いているチーズをひっくり返す。
「ココ、ね、何にもしないから。ほら、大人しくしてたらパンあげるわよ。チーズがとろ
けて美味しそうでしょ?」
ココは、チーズのにおいをかいで、上目遣いのままうなずいた。
「お前のほうが、どっちかっていうとひどいな。」
「・・。」
「やっぱり、ないのね。性別。」
「・・人形見てるみたいだ。」
「やだ、人形のそこ、見るの?」
カータがクスと笑う。
「ばかやろ!例えだろ例え!」
寝転んだまま、首をかしげながら、でも、ココは幸せな気分で、美味しいパンとチーズを
ほおばる。今度は早く食べてしまおう。落としちゃう前に。
「美味しい!」
まだ、何か言い争う二人を眺めながら、ココは幸せな気分でいっぱいだった。
もうさびしくない。
新しいことたくさん教えてもらった。
ラクみたいな特別な子は、いないと思った。
でも、カータも、シェインも、特別。
ブランカとも、先生たちとも違う。
嬉しくなった。

「あら、見て、翼抱えて寝てる。」
くすくすとカータが笑った。
「子供だな。」
「大切なのよきっと。一つしかないから。」
「さびしいんだろ。」
「・・そういう感情、あるのかな。」
「泣いていたし、あるんじゃねえの?」
ココは二人が伝え聞く、ブランカとは違っていた。
姿は翼と瞳を除いて、まさしくそれなのだが。
子供の顔、白い肌、銀の髪が背の途中まで伸び、それは鬣(たてがみ)だという。白い翼、
足首から先だけが、大型の猫科と同じ爪を持った足をしている。そこには真っ白い毛皮が
ある。
不思議な、生き物。
足と翼を見なければ、守人と同じ人間なのだが。

 「片翼のブランカ」続きはこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-62.html


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theme : オリジナルファンタジー小説
genre : 小説・文学

kikurageさん

ありがとうございます!
ぜひ、読んでください!
ココちゃん、がんばりますよ!らんららのキャラクターの中で一番の癒し系です。
癒されたい時のお供にぜひ。

らんららさん、お久しぶりです(^0^)/

ココちゃん、学校の外へ逃げ出して、しまいましたね。
シェインとカータは、盗賊と言う言葉を口にしておりましたが、極端に極悪人ではなさそうですね。特にカータの優しさにホッと胸を撫で下ろしております。

ラクとネムネ先生がいない今、信頼して頼れるのは、シェインとカータだけですね。

続きも気になりますので、また訪問させて頂きます(^▽^)つ

アポロさん

お疲れ様です!
楽しい週末でした?
週末アポロさんとこの小説、読めなくてとても寂しかった!
また、すぐ行きますので。
楽しみです!

団長さん

癒されてください(^^)/
書きながら、らんららも癒されてます!
短くするつもりがつい、キャラクター掘り下げてたら、長くなってきている!!
ちょっとひやひやしながら書いています。
また、きてくださいねー!!

>ω< ココ~!!

やっとおいついたよ~!!
ココの変化がとっても面白い!!
ラクがいなくなっちゃったのがとっても寂しいけど、これからの展開が楽しみです!

いや~、なんでこんなにココには癒されるんでしょう(/∀\*)
なんだかココはやっぱり他とは違うようですね?
いったいどうしてなんだろ~??
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らんらら

Author:らんらら
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