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「想うものの欠片」第九話 ①

これまでのお話~。
シーガたちと離れ、一人レスカリアへ向かう飛行船に乗り込んだタース。
そこで、皇帝陛下に出会います。
皇帝陛下はタースに優しくしてくれました。
しかし、レスカリア帝国でクーデターをもくろむ【逆月】という反政府組織にはめられて、タースは皇帝暗殺犯として追われます。

一方。自分がレスカリア帝国の皇太子だとスレイドに聞かされたシーガ。
彼もまた、タースと同じレスカリア帝国を目指します…。



第九話『海』


「タース、タース」
かすかに歌うように、声援のような抑揚で少年の名が繰り返される。
少女は馬車の座席で足をゆらゆらさせながら、窓辺に張り付いたままだ。景色が変わり、海が見えても、さして感動を口にすることもなくただ呟きを繰り返す。かすかな声で繰り返されるタースの名は、まるで呪文のようだ。
それに呪われている気分になるシーガは何度もミキーに声をかけたが、少女は会いたいですの、と訴えるだけだ。
「ミキー、そろそろ、メノスの街です」
「ですの」
少女の視線は窓の外。
「…お前は、嫌がらせですかそれは」
ため息交じりのシーガの声にミキーは振り向く。
「会いたいですの!レスカリアへ行きたいです」
「ですから、メノスに向かっています」何度も口にした言葉をもう一度繰り返し、シーガはため息を吐く。
スレイドと別れた晩、シーガは何事もなかったかのように宿に戻った。
その時からミキーはタースのことを言い続けている。

シーガにも迷いはある。
自分がレスカリアの皇太子だといわれ、ではレスカリアにと。そう単純に行動できるはずもない。現皇帝の脅威となる、その理由で捨てられた自分が戻れば何が起こるのか。考えれば考えるほど決意は鈍る。
ダルクにレスカリアへ逃げろといわれ、そばにいたいと言ったタースを思い出した。あの時のタースも同じ気持ちだっただろうか。
逃げ場を失ったタースにレスカリアへ行けと言っておいて、自分は躊躇している。これまで生きてきた基盤、身分も社会的立場もすべて失い、人目を避けて他国へと渡る。それがどれほど心もとないことなのか。

私は安全な場所に生きていた。
それを自由ではないと感じていた。
両親の存在を探しながら、これまでレスカリア帝国にまで気持ちが及ばなかったのも無意識に恐れていたのかもしれない。何もかもを捨ててまで探し出したいのかと問われれば首を横に振っただろう。
自分自身への甘さを突きつけられる。

「ねえねえ、シーガさま。飛行船がよかったです」
少女の通る声がシーガを現実に引き戻す。
「…嫌です」
「どうしてですの?」
「あんな怪しげな乗り物。自動車ならまだましです。走る理由が分かりますから。飛行船は理解を超えます」
「でも、飛んでますの」
「タースが飛行船に乗り込めたとは思えませんよ。飛行場はティエンザの軍の管理下にありました。危険ですからね…まあ、あの性格では無茶もしそうですが。どちらにしろ、ミキー。私は飛行船には乗りません。レスカリアへ渡るなら船が安全です」
「…海臭くてもいいですの?」
ふと少女の顔を覗き込む。
「ほら、シーガさま、港町はお嫌いでいつもこーんな感じで眉にしわがよりますの。お魚と海と猟師さんたち。ポオトを思い出しますの」
「…それは、我慢します」
「シーガさま、オトナになりましたの」
「は!?」
ミキーは嬉しそうに腕にすがりつく。
「タースがいいましたの。お髭が生えた時に。オトナになるんだって。オトナになるっていうのはカンヨウになることだって。カンヨウって何、って聞いたら嫌いなものも好きになるように努力できることだって」
少女の表情にシーガはふと真顔になる。溜めた息を静かに吐き出した。
「…お前も変わりましたね。博愛主義者の人形でしたが。それが、なぜ怒ったり泣いたりするようになったのですか」
ミキーはきょとんとした。大きく見開いた夕日色の瞳は戸惑いを見せ、そしてふいに笑った。咲くかのように。
「ミキーだって悲しい時があります!腹立たしい時もあります」
「…ですから、以前は違いましたよ」
「タースがくれたですの!タースのルリアイは優しくて、強くて、悲しいです」
シーガは思い出して、荷物から小さな革の袋を取り出した。
これまで、あちこちで集めてきたルリアイだ。それを見るとミキーは両手を差し出す。
「…お前はタースのこぼした涙を吸い取ったことがありますね」
中から一粒受け取ると、ミキーは白いレースのブラウスの胸元にそっと当てる。
次に手を離したときには、すでに何も握られていなかった。
「ルリアイはユルギアに実態をもたらす。キドラの例にあるようにそれだけではないのですね。ルリアイ自体に思念が宿っている」
シーガが最初に持っていたルリアイにどんな思念が宿っていたのかは分からないが、タースがこぼした涙はあの時のタースの想いがこもっていただろう。シデイラの純粋で強い思念が結晶となる。それを取り込むことでミキーは豊かな感情を持つようになったのだ。

「…お前は私が幼い頃から持っていたルリアイとタースのこぼしたものと。そして今、私が与えたもの。いくつものルリアイを体の中に持っている、そういうことですね」
ミキーはこくんと頷いた。
「何か、変化を感じますか」
ミキーは両手を重ねて胸に当てた。そっと目を閉じる。


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松果さん♪

まんまと罠に(笑
いえね~ちょうど、八話くらいかな、まとめて公開という手法をとり始めたの。
展開がのろいので、読みたい人にはたくさん一気に行ってもらおうと思って、そうしたんです。タイマー予約で公開が出来るというものの、やっぱり公開したものを確認するとかの作業が必要になるから、一気に公開する分、らんららも手間も省けてその時間をブログ散策や執筆に使えるという一石二鳥の手なんです。

一話ずつ読んでくださるのももちろん嬉しい♪
物語は逃げませんからね、お時間のあるときに好きなだけ読んでください♪

ホッ!

八話、やっぱり一気読みしちゃってここまで追いつきましたよ。
いや~、シーガ様の父上に会ってしんみりとしたり、たくさん食べるタース君にニマニマしたり、最後はパラシュートですかっ!とドキドキしっぱなしでしたが。
九話、またミキーちゃんとシーガの登場でホッ。
今度こそ、今度こそ~じっくり読み進めます(毎回言ってる)
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