08
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「想うものの欠片」第九話 ③



ティエンザ一の港町は、昔からの石造りの町並みを残していた。大陸で最も多くの航路を持つ主要港でありながら、その姿は昔のままだった。
海の灰色と空の蒼、そこに馴染む暗褐色の街は所々にオレンジ色の旗をつけた漁船が並ぶ。時折、新しい蒸気船が穏やかな海面にうねりを振りまきながら走り抜けていく。蒸気を利用した汽笛が数回、船がすれ違うたびに交わされる。

船着場のそばにある料理屋に馬車を止めると、シーガたちは昼食のために立ち寄った。
立ち居振る舞いの優雅な、黒尽くめの青年と、クリーム色の長い髪を真っ白なレースのワンピースと一緒にくるくるとなびかせる美少女は否応なく目立つ。
店内に数人いた客がいっせいにシーガたちを眺め回した。
いつものことで、シーガは無表情を貫く。ミキーやタースの前で時折見せる笑みも、今だ他人の前では披露することもない。
「いらっしゃい、お客さん、シデイラだね?」
正面切って問われたのは初めてだった。大抵は触らず、近寄らず。遠巻きにあれはシデイラだと噂する。シーガは、眼鏡をとった。
「ええ」
それ以外に応えようがない。
「気を悪くしないで下さいよ、いや、初めて見たんでね。綺麗なもんだな」
「…」
無言で返す青年に、店主は太い眉を下げて笑う。四十代前半、表情が豊かなのは顔に刻まれた笑い皺でわかる。丈夫そうな白い歯は日に焼けた肌に映えた。
「いやぁ、この街で商売してるといろんなものを見るけど、さすがに違うなぁ」
忌み嫌うという様子はない。シーガは少し不思議に想う。
「二人してお人形みたいだな、なんだい?お嬢さん」
ミキーの視線に店主はさらに嬉しそうに頬を赤くした。
「シデイラのこと、嫌いじゃないですの?」
「ああ、なんだ、そんなことかい?」
男はその場にしゃがむと、イスに座る少女と視線を合わせた。
「この街はティエンザの玄関口なんだよ。新しいものはまず、ここから入ってくるんだ。最近は飛行船なんてものも開発されたが、結局はまだ船が主流さ。いうなればここが時代の最先端。今時、民族がどうのって柄じゃないね。第一ユルギアなんてもんは迷信だ。そんな古臭いものに振り回されてるようじゃ、この街じゃやっていけないさ」
元は船乗りだったのか、日に焼けた逞しい店主は頭に被った真っ赤なバンダナをぎゅっと締めなおし、ちょっと待ってな、と少女に片目をつぶって見せるとカウンターの奥に入って何やら皿を持ってきた。
「これは、生の魚ですか?」
シーガが問う。テーブルに置かれたそれをミキーが興味深そうに触ろうとする。シーガに睨まれて少女は小さく舌を出した。
「レスカリアから入ってきた料理ですよ。あっちでは魚を生で食べるんだそうです。そいつをメノス風にアレンジしたんですよ。美味いですよ。こいつを食べずしてこの店に寄ったなんて言えません。サービスしますから、どうぞ、召し上がってみてください。この白身魚の薄切りはね、ほら、こうして新鮮なオイルとレモン。これだけで最高に美味いですよ。ここに海の塩と胡椒」
鼻歌でも歌いだしそうな様子でミルを回す。
「っと、待ってください、コショウは苦手です」
思わずシーガは手で口元を覆った。鼻につんとする、アレが苦手なのだ。
透き通る白い魚の身は真っ青な皿の上に綺麗に円を書いて並ぶ。オリーブのオイルがキラリと宝石のようにその上に光る。絞られたレモンの香り、鮮やかな黄色。飾られた新緑のリーフはみずみずしく揺れた。
シーガはその美しい料理の中に、かすかに見える無粋な黒いコショウの粒を睨んでいた。
「子供みたいだな、美味いぜそれ!」
向こうのカウンターに座る男が声をかけた。
「この店は俺たちメノスの住人の自慢なのさ」
「食べてみなよ、僕も好きだよ」
隣のテーブルの親子連れも、そろって口を出す。
「…」
「シーガさまはオトナですの」

次へ
ファンタジー小説ブログランキング
関連記事
スポンサーサイト

ユミさん♪

うふふ~ミキーちゃん、どうなるんでしょう?
お楽しみに♪

お店、つい、書いちゃうんです♪
旅を描くと、移動、見る、食べる。なので、ワンパターンなのについ、料理店を書きたくなってしまうのです。
店主さん、海の男です♪ささっとお魚を捌くのです♪

ミキーちゃん、人間になりたいよね~!
わたしの中では、もう普通の女の子です♪
恋をしたり、顔を赤らめたり、心臓がとくとくしたり(*^^*)
でも、ユルギアのままなのかなぁ…。
最後にはっ!って期待しちゃいますけど^^

シーガ様、最初から受け入れられて良かったですね♪
豪快な店主さん、大好きです!


Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。