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「想うものの欠片」第九話 ⑤


ティエンザでも南に位置するメノスは、首都とは違い温かい。海からの風が心地よく頬をなでた。港のあちこちに残されたユルギアたちの様々な思念が耳につく。それも、なぜか今はシーガの気分を害さない。
シーガは昔から酒場や商店、競技場。人が集る場所が嫌いだった。雑多な人間の思念が押し寄せ、頭が痛くなる気がした。
しかし、今はそれが波のざわめきのように心地よい。
「雑種の匂いに…慣れたのでしょうか」
「シーガさま、タースはお魚臭くないですの」
「…」

馬車を海沿いの通りに止めると、シーガたちは船着場に沿って歩く。夕刻、ほとんどの船はすでに無人で、無機質なおもちゃのように波間に揺れる。太いロープが静かに波に揺れる。
船の影を落とす海は深く濃い。ミキーは恐る恐る覗き込んで、何も見えないと知るとつまらなそうにシーガの脇に戻る。
ぎぎ、と船の軋む音。ちゃぷ、とどこかで波がつぶやく。

「お嬢ちゃん、どこまで行くんだ?レスカリアまでなら俺の船が最終だぜ。明日からは渡航禁止令が発令されるって噂だ」
目指す船の上から男が声をかけてきた。男がまず眼にするのはどうしても、少女のほうだ。
「ポンスさんですか?」
日に焼けた腕をむき出しにした男は、くわえていた煙草を手に取ると笑った。
「ああ」
「トット亭の亭主に伺いました。レスカリアへ渡る最も安全で安くて早い船だと」
「あのくそ親父。まあいいや、今度あったらたっぷり美味いもん食わせてもらうか。あんた、レスカリアへ行きたいのか?銀貨十枚でどうだい」
シーガは男の乗る船、そしてその姿を上から下まで観察する。
「ええ、馬車は積めますか」
ポンスと呼ばれた小さな貨物船の船長は眉をこりこりと指先でかいた。同時に人懐こい笑みが八重歯からのぞく。
「悪いが、あちらさんの要望でね。そういった類は持ち込み禁止ですぜ。乗るなら身の回りの荷物だけにしてくださいよ。せっかく到着しても、上陸許可が下りなきゃ意味がねえ」
「そうですか。仕方ありませんね。売ってきますから、少し待ってもらえますか」
眼鏡の下の顔を見せた青年にポンスは見とれた。落ちた煙草の灰を膝で受け、あちっと叫んで飛び跳ねた。
「いいさ、美人は大歓迎ですぜ」


ポンスの船は中型の蒸気船だ。
船首から船尾まで、ミキーのちょこちょこした歩き方で約五分。
甲板の上をものめずらしそうに散歩して帰ってきたミキーは、船首に近い辺りで海を見つめるシーガにすがりついた。
「シーガさま!あっちに行くと夕日が見えますの!綺麗ですの」
ミキーは青年の手を引く。
「ポオトの景色はとっても綺麗でした、でも。この海ばかりの景色も素敵ですの!」
「一人で見てきなさい」
「シーガさまも一緒ですの」
強引に腕ごと担ぐようにしてミキーは渾身の力で引っ張る。
んー、とうなる少女にシーガは目を細め、歩き出した。
「ミキー、耳が見えていますよ、しまいなさい」
「シーガさま、リロイはまた会えるですの」
「ばかですね」
「リロイはシーガさまのことが好きですの」
「その台詞、以前も聞きましたよ」
「ですの?」
船尾に到着するとミキーはシーガの前に立ち、大きく見える夕日を縁取るように手をかざした。白い三本指は長い袖に隠れ、いじらしく見える。透ける髪は黄金に輝く。
少女の行動は、馬車と馬を売った青年の気持ちを思いやってのことだろう。それが分かるからシーガも黙ってそばにたたずむ。
日が沈む西はティエンザ。遠く、アバズカレズ川の河口とそこにかかる国境の橋が見える。その右手に見える陸地はライトールだろう。小さな街明かりは群青に沈み始めた夕闇に、こぼれた砂糖のようにちらちらと儚い。
波間に今にも溶けて消えてしまいそうだ。

メノスの港から約二時間。
それだけなのに随分と遠くはなれたものだと、シーガは想う。

親しんだ大陸から離れていく。次はいつ戻れるとも分からない。
今は黒い影だけになっているそれを、じっと見つめた。

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松果さん♪

ありがと~!!
はい、シーガさま。だんだんと成長してます(笑
そう、レスカリアへ行けば、どうなるか…は、うふふ。お楽しみですが。
まずは。海の旅です♪

旅立ちですねー!

シーガさま、変わってきましたね。
ついには大陸を離れて…
でもレスカリアへ行ったらもうシーガ「様」とか「銀聖」とかいう身分じゃないんだよね?
大丈夫かなあ…パパにも会ってもらいたいような、そうでないような。あ~9話でもドキドキが続く…
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