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「想うものの欠片」第九話 ⑧


「後二日でつきますぜ、だんな」
甲板で船首が波を切るさまを眺めていたシーガにポンスが話しかけた。
「早いのですね。もっとかかるのかと思いました」
風に髪を押さえる青年。銀色が潮とは違う甘やかな香りを運ぶようにすら見える。思わず大きく息を吸ったポンスは人懐こい笑みを浮かべて青年の隣に立った。
かすかに煙草の匂いを振りまく船長にシーガは気付かれないくらい小さく眉をよせた。
「この航路はね、定期船のとは違いますぜ。ちょいと、遠回りに見えるんですがね、ハヤと呼ばれる潮流に乗るんです。定期航路より潮の流れが速いんですよ。もちろん、季節や気候によって潮の流れも影響を受けますからね、ハヤを捕らえきれないと逆にもう倍の日数がかかりますぜ」
ポンスは自分の航海術の凄さを胸を張って強調しているものの、目の前の美青年にはピンと来ていないようだ。
「海も様々なのですね」
「まあね、ここ最近の潮流は随分変動が激しいんです。今回のこの潮も随分速い。ちょっとおかしいくらいですぜ」
再び視線を深い青の海面に戻す男にシーガは尋ねてみた。
「ポンスさん、この船がレスカリアに運ぶのはなんですか?機械類は持ち込めないのですよね?」
「ああ、小麦、砂糖、干し肉です」
「食料ですか」
「俺たちにはよく分かりませんがね、あっちも異常気象でね。作物が取れないらしい。食糧難ってやつですぜ」
「…それで、他国から輸入するしかないのですか」
「まあ、そういうことです。帝国政府が買ってくれるから、俺たちにはかなり旨い商売ですぜ。ティエンザの市場価格より数段高い値で引き取ってくれる」
「…そういえば、ティエンザも物価が上がっていましたね」
「ああ、そのうち、レスカリアにまで売ってやる物はなくなるかも知れませんぜ。実際俺たちもこの後ティエンザに戻れば次はいつ渡航できるか分かりません」

戦争が始まれば、食料は軍隊のために国に買い取られ、ますます市民に届かなくなる。
ライトールではどうなのだろうか。
ティエンザほど貧窮している様子はなかったが。いや、だからこそ、ティエンザは豊かなライトールの国土を欲しているのかもしれない。
それぞれ、理由はあるのだろうが。

「ポンスさん、レスカリア帝国の皇帝に会ったことはありますか」
「へ?」
「あ、いえ、なんでもありません」
「ありますぜ。どんな船も、登録して入港許可書をもらうためにね。一度、帝都まで行って謁見する。あの人は、うん。あの人もシデイラでしたね」
「どんな、人でしたか」
「いい男ですぜ」
「はあ…」
「隣にいい女をはべらしていて。皇妃さまだろうが、もう、この世のものとは思えないほど綺麗なんです。皇帝どころじゃないですぜ、そっちが気になって」
「はあ」
「あれがまた、色っぽい格好してるんです。この辺まで見えていて、こう、もうちょっとって感じでさ。ま、あっちは男が上半身裸なんです、女だってそりゃ薄着になりますぜ」
ポンスは無精ひげをざらざらとなで、ニヤニヤと笑う。
「…」
「なんです?だんな」
「いえ」
「女の話でそこまで不景気な顔されたのは初めてですぜ、もしかしてあんた…」
「いいえ、もう結構です」
立ち去るシーガの背を眺めながら、ポンスはニヤニヤと笑う。無表情な青年をからかういいネタを思いついた、そんな顔だ。

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