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「想うものの欠片」第九話 ⑫

12
甲板では、薄暗い中、全員が並んでいた。そこに加わるとすぐに、背の高い褐色の肌の男が来て、船員名簿片手に名前を確認する。レスカリアの検査官なのだろう。
「あんた、は…」淡い金色の短い髪の先に灰が雪のように積もっているのが目に付いた。
「乗客です」
「シデイラ、なのか!?」
不意に検査官の声が大きくなる。
「え、はい」
少し憮然としてシーガが応えると男は不意に腕をつかんだ。背後の部下に怒鳴る。
「おい、ちょっとこい、こいつを捕まえるんだ」
シーガは振り払って、一歩下がった。
「なんですか、いきなり!」
「そうだぜ、あんたら、何でそんなことするんだ」
船員が怒鳴る。
駆けつけた二人の検査官がシーガにつかみかかろうとするので、船員がそれを止めようと飛び掛り、シーガも一人の腕をひねって、投げ飛ばした。
「止めろ!お前ら!」
ポンスの怒鳴り声に、船員二人は他の船員に抑えられてその場から引き離された。
「あんたもだ!シーガ、上陸できなくなるぜ!」
ポンスの言葉に、シーガは蹴ろうとしていた足を止める。
投げられた男が忌々しげに頭を振りながら起き上がると、シーガの目の前に立った。頭一つ大きい。がっしりした体躯。
太い鼻、くぼんだ眼窩の目がぎろりと睨む。
がつっ!!
仕返しとばかりに殴られ、腹にも膝蹴りを受けた。
よろけるシーガをマルリエが支えた。
ミキーが派手に悲鳴を上げていたが、それは船員の一人が押さえていた。

青年の白い頬に傷がつき、切れた唇から滴った血を手でぬぐう。
「理由くらい教えていただかないと!」
マルリエが、シーガを庇った。
「ふん、いいか。我が国は、シデイラを排除している。シデイラはノワールトの大陸にあるシモエ教区に送られるべきなのだ。この国に入ることは禁じられている。もし、上陸すれば、牢獄行きだ。このまま船に留まって大人しくしているか、あるいは上陸して牢獄に住むか。どちらかだ」
「…どういう、ことですか」
「そういう決まりなのだ」
「ですが!皇帝もシデイラでしょう!?」
「陛下と一緒にするな!」
また殴ろうとする検査官の拳は、ポンスが受け止めた。

「シーガさん、ここは」
下がるしかないです、とマルリエもシーガを船室のほうへと引っ張る。
不満げに睨みつける検査官との間にポンスが入り込んだ。
「まあまあ、暴力は止めてくださいよ、だんな。俺たちは交易のために来ているんだ。ここでこれ以上事を荒立てたら、俺たちだってこんな危ない国は願い下げですよ、いいんですか?開港以来、もう随分入港する船が減っているんじゃないですかね?」
ポンスが大きめの口でにやりと笑う。白い歯が目立った。
検査官はじろりとポンスを睨むと、ふんと身を翻す。
「いいだろう、そいつが下船しないように船室に閉じ込めておけ。おいお前、荷の積み下ろしが終わるまで見張っているんだ」
検査官は部下らしい一人に命じ、それに追われるようにシーガとそれを支えるマルリエ、ミキーが階段を降りる。
「手当てします、こちらへ」
マルリエが二人を医務室に連れて行くと、見張り役の男は扉の外に立つ。
時折扉から丸い窓で中をのぞく。


「…困りましたね、シーガさん」
黙ったままのシーガに、耐えかねたようにマルリエが口を開いた。
「まさか、シデイラの扱いがそんな風になっているとは。知りませんでした」
「…シーガさま」
シーガは考え込んでいた。
このまま上陸できなければここまで来た意味もない。
「どうします?諦めますか」
マルリエがアルコールに浸した綿をシーガの口元に当てて消毒する。
しみるはずなのに顔色一つ変えない。伏せた銀のまつげは翡翠の瞳に影を落とす。
「口をゆすぎますか」
マルリエが立ち上がって、部屋の隅に置かれていた大きな水がめのコルク栓を抜いた。
コップに水を注ぐ。
「シーガさま、タースに会いたいです」
「…」
「ねえ、シーガさま、タースに」
「黙りなさい!」

シーガの怒鳴り声にマルリエも思わず水をこぼした。
振り向いて、二人の様子を見つめる。
タース、という共通の知り合いがいるのだということは伺えるが。ことあるごとにタースの名を出すミキーに、シーガは時折苛立った様子を見せていた。
シーガも上陸したいのだろうに、状況が許さない。
ミキーの願いとはいえ、今のシーガには酷だろう。
ミキーをなだめてあげようとマルリエが立ち上がる。
「タースは!タースは、自分を犠牲にして助けてくれましたの!大変なことも、つらいこともたくさんあって、それでも護ってくれましたの!」
「そんなこと、分かっています!あのバカは迷惑にならないよう離れたり、囮になって逃がしてくれたり。ええ、あのお人よしはいつもそうです!自分の想いを押さえ込んで人のために尽くす、あれほど真っ直ぐな優しい人間は見たことがありません!分かっていますよ!私だって、会いたいのです!あれがいなければ危険を犯してレスカリアに来たりしません!」
「そしたら!そしたら、船を降りるですの!タースを迎えに行くです!」
二人の言い争いに唖然としたマルリエは、扉の前に突っ立っていた。シーガがこんな風に感情的になるところを初めて見た。シーガが以前言わなかった、レスカリアにわたる理由は、そのタースという人に会うためなのだ。
じろっとシーガが振り向くのでマルリエは顔を引きつらせた。
「マルリエ、協力してくださいますか」
その迫力に嫌と言えるはずもなかった。
「こちらへ。ミキー、お前は私がいいと言うまで、扉から外の見張りの相手をしていなさい」

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ユミさん♪

おお~ここまで一気に!
ありがとう!
シーガさまのこのシーン…描いていてとっても恥かしかった~。
こういう「らしくない台詞」を言わせるの、ドキドキしちゃいますね。
海からタースくん(笑
うん~確かにリンクできるタイミングでもありますが♪うふふ。そこはちょっぴり先に延ばしてあります~。
「大好きなタース君」ぶふっ。笑える~。
続きをどうぞ、楽しんでくださいね!

わわわ

シーガ様ってば、素敵♪
やっと素直に、タースくんのこと思っている気持ちを、全面に出しましたね~(*^^*)
それにしても、シーガ様ともあろう人が、拒絶されるとは!!
くぅぅ、許せん!レスカリアの検査官!!
そういえば、どうしたかな~、タースくん。
わたしは海の中から拾い上げられると勝手に想像してましたが(笑)
ミキーちゃんも、シーガ様も、早く大好きなタースくんに会えるといいですね!!
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