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「想うものの欠片」第十話④



教会からの束縛を離れて二日。スレイドはライト公領の政府庁舎の一画に来ていた。

三時の教会の鐘。戦争をしているのが嘘のように穏やかな午後だ。
今だ戦地は遠く、宣戦布告はしたものの本格的な開戦にはいたっていないのだろう。ティエンザ軍の飛行船がこの街の上空を飛ぶようになれば、鐘の音を耳にする余裕などなくなる。

庁舎内には忌章の黒い三角の旗が所々で揺れていた。
大きな窓をもつ、六角形の独特の形をした議場。かつて、二十四都市の領主とリュエル三世がこの国のために意見を戦わせた場所だ。
今は灯りもなく、厚いカーテンで閉ざされた室内はこもった空気とかすかな男の息遣いだけがある。
大公の席の背後に槍を交差させたタペストリーがある。それを前にして、スレイドは帽子を取った。小さく、祈りの言葉をつぶやいている。
がたん、と扉が開いた。

「お待ちしておりました」
スレイドは相手の顔を見ないように、膝をつき頭を垂れた。
「ああ、お前か。噂には聞いていた。大公閣下が重用していたという」
「恐れ多いお言葉でございます」
屈強な体躯。昔ながらの裾の長い衣装に身を包む、男。
ムハジク候だ。二十四都市の一つカヌイエの領主であり、現在はリュエル三世の息子トエリュの後見人としてこの国のほぼ全てを掌握している。
ムハジク候は軽く顎の髭をなでると、にやりと口元をゆがめた。
「スレイド、何故ミーア派を離れるのか」
「将来を考えますれば、当然のことです。今や、あなた様がこの国を制しておられる」

「ふん。まあ、いいだろう。お前は教会に顔が利く、その上大公に可愛がられていたのだ、何かしら役に立ってくれるのだろうな」
「はい、なんなりと」
「うむ。わしはこの後、国軍を指揮するために前線へと向かう。ついて来い」
「ありがとうございます」
スレイドはちらりと眉を動かした。
前線、つまり現在ライトール軍が戦線を敷く、北部。シモエ教区との境。ライトールに戻ったばかりのスレイドには戦況はつかめていない。

「これは、トエリュ様とも検討した結果だ。トエリュ様もお前のことを気にかけておられた。よく尽くせば領地を与えることも考えておられる」
ムハジクは穏やかな笑みすら浮かべながらスレイドの肩を叩く。
その真意はともかく。トエリュの中でスレイドは特別視される存在だった。それが功を奏したといえる。

「謹んでお受けいたしましょう。ムハジク候、トエリュ様にぜひ面会を。前線へ向かう前にご挨拶申し上げたい」
「ふん。いいだろう」
ムハジク候は以前大公が使っていた部屋。かつて、供に茶を飲んだあの部屋へと向かっていた。

いずれ。殺す。
スレイドは前を歩く男の背に、堅く誓っていた。

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史間さん~

シーガに対してはある種同情的な。同志のような感覚を持っていますよね、スレイドさんは。
年上だからこそ、シーガの不器用さや子どもっぽさが気になるのかもしれない。逆に、タース君のほうがよほど逞しいと気付いている。
うん。
スレイド…描いてよかったキャラですよ~♪(←自画自賛
メイジ亭。分かりやすいでしょ?(笑
想像しやすい、親しみやすい名称を使おうと思っていて。
この世界の食べ物や武器、道具、衣装。ブランドや有名店。妄想は楽しいです~。

本当のことを言えば、チョコレートは存在できない気候の世界ですが…(自爆?

スレイド(久々に)かっこいい~*>▽<*
そんで、言葉の端に、シーガとの約束だけは守る姿勢を。
この国に在る人を疎ましく、憎らしく、ムハジクに殺意を覚えている最中にも。
愛されてますね、シーガ♪
父の威厳は、確実にスレイドの中に生き続けている。
彼自身がそれに気づき、先へと進んでいけるように願います。

あとメイジ亭のチョコレートケーキ、食べたいです^^
相変わらず食べ物美味しそう(ヨダレ)
また続き読みにお伺いします~♪
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