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「想うものの欠片」最終話 ①

第十一話 『想うもの』



「シーガさま!タースが、タースがいるですの!」


そうミキーに告げられ、シーガは教会に駆け込んだ。
蒸された空気、怪我人の呻き声と血と腐肉の匂い。雑多な思念が渦巻いて暗がりに翳のように染み付いている。
肌を粟立たせる重い静寂。
それすら感じないほどに、シーガは少女の後を急いだ。
祈りのための机は寄せて並べられ、臨時のベッドにされていた。片隅の床には、たくさんの白い布を被った遺体の山。腐敗を防ぐためか、真っ白い塩が振りかけられていた。

割れた天窓からの明かりの中。
多くの人々が横たわる一角に。
見覚えのある少年の姿があった。
目を閉じ、天窓に向くまつげはピクリともしない。
それはちょうど斜めに差し込む陽に白く光る。透き通るような肌は青白く、神々しくさえあった。

手を伸ばそうとし、シーガは躊躇する。ミキーは既にすがり付いていて、絹の柔らかな手で少年の額をなでている。
色のない唇。濡れ乱れた黒髪。海に落ちたのか、津波に飲まれたのか。
…生きて、いるのか。

「タース!」
ミキーの声に我に返り、シーガはタースの肩に手を置く。濡れた服は冷たい。
シーガが抱き起こそうとした瞬間、ふ、と。
少年が息を吸った。
それにあわせて胸が上下する。

「!?タース?」
ピクリとまぶたが揺れる。
「タース!タース!起きてください」
少女の声に、少年は小さく眉を寄せた。
シーガが、そっと額に手を当てる。
冷えた体はこの蒸し暑さにありながら、氷のようだ。
「タース」
青年の呼びかけに、小さく頭を振る。
不意に、目を開けた。

「あ…」
見回す。
タースはぞくりと身震いし、肩をすくめた。
「寒い!」
「お着替えしましょ、濡れてるです」
ミキーは戸口に駆け戻り、荷物からごそごそと服を引っ張り出した。

「あ、あれ?ミキー…シーガ?あれ?なんで?」
震えながら、タースは二人を見つめる。
シーガたちとはティエンザ王国の首都で別れたはずだった。いや、その前に、ここは何処なんだろう。
タースは暗い中まだ状況が分からずにいる。何度もけだるそうに頭を振った。
「ね、タース。お着替えちゃんと持ってきましたの。タースにも欲しいと思って」
衣装で膨らんだ荷物。そこには、タースの分がしっかりと収まっていた。
「ミキー、お前は」
あきれたように、小さく笑うとシーガはミキーからタオルを受け取る。先ほどもらった配給の水で濡らしてしぼると少年の顔を拭いた。

海水でべたべたしていた。
潮の臭いを放つ服を引き剥がすように脱ぐと、左の肩から背にかけて派手に痣ができていた。赤紫に腫れるそれは、海に落ちたときの衝撃を物語っていた。
「お前は、一体なにをしたんですか」
「え?ええと…僕、飛行船から、飛び降りて」
体が冷え切っているせいか痛みも感じられない。シーガの示す場所を見ようと首をひねる。

体を拭くシーガの手が止まる。
そのタオルを掴み取ると今度はミキーがタースの喉元を拭こうとする。
と恥かしそうにタースはとどめて、自分で拭けるよと笑った。
「飛行船、からですか?」
「あ、うん。あのさ、ええと。いろいろあって」
タースは上手く言葉が出てこない。どれから説明したらいいんだろう。どうにも頭のとこかがぼんやりしている。
「あ、ミキー、ごめんそれ。ポケットに」
ミキーが丸めかけた上着に手を突っ込むと、タースは何か取り出した。

「あ!」
それがルリアイだと気付いて、ミキーが手を伸ばす。
「だめ、コレは僕のだから」
大切そうに握り締め、タースは祈るように胸元に寄せた。
その様子を見て、シーガはもう一度、タースの手からタオルを奪った。
「まったく、臭いですよ、髪もほら、べたべたです」
「え、ああ」
シーガはそのまま、タースの頭を下げさせると、水をかける。
黒い髪に紛れた埃や砂を丁寧に洗い流した。

「シーガが白い服なんて、珍しいね。眼鏡も変わってる…ああ!?」
タースは傍らに立って髪を拭いてくれる青年を見上げた。その、帽子の下。
「髪がなくなってる!!」
シーガは、目を細めた。
襟元でざっくりと切られた髪。
今頃はまだ、船の中だろう。マルリエが成りすましてくれている。

「タース、静かに。このレスカリアでは、シデイラは牢獄行きだそうですからね」
「タース、タース」

ミキーに靴下を脱がされながら、タースはまだシーガをじっと見ていた。
何か、そう。青年の表情が違って見えた。髪形のためだろうか。短くなった髪はコレまで女性らしく見えていた青年を、凛々しく、逞しく見せた。
日に焼けたのか。なにがあったのか。
シーガは以前よりずっと、笑顔が様になっていた。

「何かあったんだ?大丈夫なの?」
「ええ。上陸するための代償…いえ。もう、必要ないのです。もともと、自分の姿をさらすことで両親を探そうと考えていました。ですからわざと髪色が目立つよう伸ばしていました」
「え?両親を探すの諦めたの?って、ミキーちょっと」
「いいえ。それは、後ほど話しますよ」

タースは下着まで脱がそうと無邪気に挑むミキーを追い払うのに必死だ。シーガの話どころではない。
「ほら、ミキー、来なさい。タース、外で待っていますから、着替えが終わったら来なさい」
「あ、うん」
寝台代わりのテーブルから、そっと降り立とうとして、一瞬よろめく。
「タース?」
「あ、ううん。大丈夫」

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史間さん♪

パパ、今頃どうなっているのやら?
お久しぶりです。らんららもやっと時間が取れるようになりましたよ~♪
ゲームなど今更やっています。『テイルズ・オブ・ディスティニー』を。
そのうちバトルで勝てなくなって断念すること請け合いですが。ストーリーだけは知りたくて旦那様のプレイを横で見守る日々です。

いよいよ最終話へ!

挑みたいと思います!お久しぶりですみません><
ドキドキします~!
タース死んだと思った……!よよよ、よかったぁ(涙)
無事再会できたところで。
パパに会わないと大変だ!

松果さん♪

ありがと~!!
お返事遅くてごめんなさい!

そうそう、シーガさまも成長していますよ♪
うふ。
楽しんでくださいね~♪

ついに~!

最終話、楽しみにしてました。
タース君と再会!
シーガも、随分と逞しくなったもんだ。
でも…一抹の不安。タース君、大丈夫なの?
また一気読みしたいところだけど、ガマンガマン。
連休中の楽しみにとっておきます。
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