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「想うものの欠片」最終話 ②



タースは、不思議な感覚に戸惑っていた。
ぼんやりしているのもそうだが、どうも、感覚全体が鈍っていた。
先ほどの肩の打撲も、重い気はするものの痛みはない。寝ていたせいかむくんだ足も、自分の足ではないような感覚だ。頭をふり、目をこすり。自分の足をさすってみる。
随分、白っぽく見えた。
冷えた足を何度もこすってみた。なかなか温まらない。
それでも、服を着替えると、少しはましな気分になった。

そうだよな、海に落ちたんだもんな。命があっただけましだよ。
ふとそう思い。

そして。
脳裏にユナが浮かんだ。

「陛下!!」
思わず声に出していることに気付かず、タースは慌てて駆け出した。
陛下を助けなきゃ!どうなっただろう!まだ、あのジファルがそばにいるんだ。それも伝えなきゃ!
そうだよね、ユナ。
そばにもやもやとみえた白い影は頷いたように思えた。

「シーガ!首都へ行こう!皇帝陛下に会いに行くんだ!」
扉を開くと、眩しい景色にタースは目を細めた。
遠く青い海。青い空。タースが空から見た爆発に似た白い煙が海上から吹き上がり、風景の半分がすすでも塗ったかのように薄汚れている。空を見あげ、眩しい太陽とぎらり熱い空気にふと風景がゆがむ。

「危ない!」
数段の階段だが、崩れるように転ぶ少年をそばにいた女たちが支えた。

褐色の肌の人たち。
熱い腕。白い歯と笑顔。
「すみません。タース、しっかりしなさい」
「タース!」

目が回る。
ミキーの声に顔を上げる。その柔らかな色の髪を目の前に感じながらまた、ぞくりと走る寒気に目を閉じる。
「あの、医者はいませんか、この村に」
少年を支えるシーガの言葉に反応するものは少ない。

そばに座り込みながら、もう一度タースは頭を振った。
「大丈夫。ちょっと眩しくて」
その様子を見ていた女たちが、顔を見合わせた。
「あんた、もう少し休んでいったらどうだい」
「あの、医者はいませんか」
シーガの問いに女たちだけでない、集りかけていた子供たちも、首をひねる。
「いしゃって、何?」一人の子供がタースを見ながら聞き返す。
「え…」さすがにシーガも目を見張った。
「あ!」
タースは思い出した。そういえば皇帝の専用船にも、医者はいなかった。

「病気を治したり、怪我を治療する人は、いないのですか」
シーガは立ち上がり見回した。人々は不思議そうに異国の青年を眺める。

「そんなのは、いないんだよ。はい、ボウヤの分」
先ほどの女性がタースのそばに歩いてくると、水の入った袋を差し出す。

「ティエンザの船長さんも言ってたよ。そういうことが異国では出来るんだってね。足が曲がって動かなくなったのも、元に戻るってさ。けど、そういうのは、この国にはないんだよ。病のものも、けが人も。皆、礼拝堂で静かに祈りを捧げるのさ。生きるのか死ぬのか。それは神様が決めるんだ」
そういった女性は、タースの頭をなでると、あんたに神のご加護がありますように、と。優しく祈った。

「そうですね…この村では、新鮮な水も手に入りませんし、衛生上よくない。手当するにも何もない。タース、移動しますが、大丈夫ですか」
「うん、僕、首都に行かないといけない…」

タースの気持ちをどう受け止めたのか、シーガは黙って頷いた。女性たちと交渉し、物資を運ぶ荷馬車にのせてもらうことになった。荷馬車は村から半日ほどかかる街から物資を運んできているという。
ちょうど、先ほど到着した分が空になったところだった。

御者台に乗る二人は、嬉しそうにシーガを向かえたが、青年は無愛想なまま荷台に横たわるタースの傍らに膝を抱えて座っていた。
同じ姿勢の少女も、体を丸めて横たわり寒そうに震えるタースをじっと見つめる。
「お薬、効かないですの?」
小さくつぶやいても、シーガは応えない。
ミキーが額に触れると、タースは目を開け大丈夫と笑った。
「ちょっと、変なだけ」
「お前はまだ、何があったのか話していませんよ」

「…あの。僕、皇帝の飛行船に、紛れ込んだんだ」
タースは馬車の揺れに体を任せ、眼をつぶった。
そして一つ一つ、思い出しながら話した。

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