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片翼のブランカ 10

<<ココちゃんの冒険第10話です!>>

下層の荒々しい岩山が小さく見える。ラタは力強く、軽々飛んでいる。
翼が上下するたびに、ぐんぐん高度をまして、早くなっていく。
冷たい空気に、ココは目をぱちぱちさせる。
「冷たきゃ目つぶってろよ!」
ココの体を翼ごと抱きしめて、シェインが笑う。
「見ろよ」
だって今、目をつぶれって言ったのに。
ちょっと、ぷんとして、ココはもう一度目を開いた。

「うわ」
岩山はなくなって。見えるのは遠く遠く遠く、どこまでも青い海。
果てしなく、海が続いていた。
空は灰色で、暗くて。ただ、水平線のあたりだけがぼんやりとうすい黄色に光っている。
冷たい風に、目を細めながら、ココはどきどきしていた。
初めて見る。上層の砂漠もきれいだったけど、ここもきれい。
ココの下で、ラタがなんか言った。
「ん?」
振り返っても、もう岩山は見えない。
「下層はな。ココ。言葉に特別な力のない守人が住んでいるんだ」
「岩山に?」
「いや、あそこは隠れ家だって言っただろ。ほら、あそこ。薄く、みえるだろ」
シェインの指差す方向に、白いペタンとした感じのものが、遠い海に浮かんで見えた。
近づいていくと、それが島だと分かった。
「ラタもおなかすいたって」
「なに?」
「えとね、ラタもお腹すいたの。ココも」
「お前、もうちょっと感動してくれてもいいんじゃねえか?」
「かんどう?」
「いいよ、いいよ。どうせお前は成長期なんだ。食い物のほうがいいよな」
「うん」
分からないけど、食べ物美味しいの。
「買出しだけだからな。余計なことするなよ」
「ん」
「お前、目立つんだからな」
「ん」
「だから、翼動かすなって!」
嬉しくて、わくわくして、ココはつい、パタパタしたくなる。
「だって」
「下の街で翼出したら、二度と連れて行かないからな」
「はあい」
教室でしたように、右手をピンと伸ばして、お返事。
「…」
ラタが笑った。
「ふふふ」
ココも笑う。
「恥ずかしい奴」
シェインは不機嫌。

街は白い四角い建物が、ずうっと並んでいた。
どれも同じ形に見える。
島の真ん中に向かって、始めは1階しかなかったのが、2階建て、3階建てと、段々に背
の高いものになっている。
「ここはな。あの一番大きい建物にいる領主が治めてるんだ」
「りょうしゅ?」
「そうさ。こういう島は、後いくつかあるが、どれも領主がいる。でなきゃ、治安が守られないからな。領主には、力があって、皆逆らえない」
「ふうん」
「いい領主もいれば、悪い領主もいる。けど、基本的に、守人は人を殺すような真似はできないからな。そう、悪いこともできないわけだ。まあ、領主のお気に入りをああやって、自分の近くに住まわせる程度のことは、どこでもあるわけだ」
「・・?大きい建物がそうなの?」
「ああ」
「・・ココ、あれ食べる」
「ああ?」
先ほどから、あちこち見回していたココが、果物売りの屋台に目をつけた。
その通りは市場。
たくさんの人が行き来して、ココたちはラタに乗ったまま、少し高い位置から見下ろしていた。
「ラタもそれがいいって」
「お前、さっきから、ラタラタ、って、うるさいぞ。ラタは果物なんか食わねえ」
果物屋の前で、不意にラタが止まった。
「なんだ?おい、ラタ」
背のご主人を振り返って、ラタが鼻を鳴らす。
「おい、まさか、食べるってんじゃ…」
「ココ、あれがいい!」
一口くらいの大きさに切られた、さまざまな果物が盛られている、甘そうな皿を指差す。
「しかたねえな」
すと、とシェインが空角から降りる。かっこいい。ココは思う。
自分もと、飛び降りようとするココを抱きとめて、おろしてくれた。
「ココ、次は自分で降りる!」
「ばか」
大人の身長ほどの、ラタの背から、ココがまともに降りられるわけはなかった。
頭からすっぽりと、白いローブで覆われて、まるで白綿ネズミみたいとカータが笑った、そんな格好で、ココは石畳の通りを走る。
「おい、ばか」
目的の店に一目散だ。
「へい。いらっしゃい」
「ココ、これ」
「はいよ。お連れさんは?」
「俺はいらん」
「ラタは、そっち」
「勝手に買うな!」
「えと。じゃあ、ココの止めて、ラタのだけにする」
たいして考えもせずに、ココはラタのほしいと言った緑色の果物を買った。
大切そうにささげ持って、ココはおとなしく通りの隅に座っているラタのところに駆けていく。
「ラタ、これ」
ラタの目の前においても、ラタは食べない。
「あれ、嫌い?」
果物の横に、ココもしゃがみこむ。両手で頬杖を付いて、じっとラタと果物を見比べる。
「ラタ?」
ココは、そっと一つつまむ。
ラタが鼻を鳴らす。
「怒ってる?」
「…」
ラタは黒い丸い瞳で、じっとココを見詰めていた。
「おい、食べていいぞ」
何か別の買い物を済ませたシェインが背後にたった。
『許す。』
シェインの一言で、うれしそうにラタが果物にかぶりつく。
「あ」
全部食べちゃった。あっという間だった。
ココはちょっと恨めしそうに、ラタをにらんだ。
「なんだよ、お前が、いらないって言ったんだろ。」
ココをひっぱり起こして立たせると、シェインが笑った。
「…だって」
お腹すいた。
ラタが首をもたげて、ココの頬をなめた。
「…うふ」
ラタの顔はココの二倍ほどある。ラタが頬をすりよせると、ココは押されて転ぶ。
「いやん、ラタ」
ココはそれでもうれしそうだ。
ラタがさらにココにすりよろうとする。
「おい、間違って踏むなよ」
ラタにフードの先をくわえられて、引き寄せられて、頬をなめられる。
「うひゃ、いやん、ラタ」
はしゃぐココを眺めながら、煙草を取り出す。
「おい、用なら早く言えよ」
行きかう人ごみの中、一人立ち止まっていた男が、恭しく膝を付いた。
「シェイン様。デデム候が、ぜひお越しをと」
「うるさい。俺は盗賊に身を落としたんだ。候にしてやれることなどないと伝えておけ」
シェインは背後の男を振り向きもせずに低く言った。
その声は、さして大きな声でもなかったが、背後の男は縮こまった。
一瞬、通りを行きかう人々が、立ち止まった。
静まる。
「ココ、行くぞ」
「あは?」
いつの間にかフードが取れて、銀色の髪、白い顔が見えていた。
ラタがゆっくり立ち上がる。
「シェイン様!」
男を無視して、シェインは買った荷物をラタに載せる。一人で乗り込もうと、ココはばたばたとラタにすがり付いていた。
ラタが、ココのローブを加えて、引っ張り上げようとする。
「うんと、えと。」
あと少しで、ココの手がラタの翼の根元に届く。あと少し。
「おい、無茶するな」
シェインが気付いて、ココに手を伸ばそうとした時、ずるりと大き目のローブが抜けて、ココが地面に落ちた。
「…」
「ばか」
横たわったまま、顔を手で覆って、ココは足をじたじたする。
「痛いよ、うえ、痛い」
泣き出しそうなココを、片手で拾い上げて、シェインが飛び乗る。
振り向けば、通りの誰もが彼らを見詰めていた。
「ココ、二度とここにはこれねえぞ」
「痛いよ」
ココはただ、しがみついている。
「シェイン様、それは、まさか」
「なんだ、うるさいぞ」
再び、男はよろよろと後ろに下がる。
「怪我を、なされたのでは…」
座り込みながら男が言う。
「…そうか?ココ」
「…」
ココは、しがみついたまま何も言わない。ぎゅっと目をつぶって、じっとしている。
「おい?」
「シェイン様、どうか、お手当を。あの、お急ぎになられたほうが」
忌々しそうに、男を見下ろして、シェインはため息を一つついた。
「仕方ねえな」
しゅんと頭を下ろしている、ラタの首を軽くなでた。
「お前は悪くない。ラタ、大丈夫。落ち着け」
シェインがそうささやくように言うと、弱々しげに震えていた空角は、鼻息を一つ吐いて、軽く頭を振った。
「よし、お前も乗れ」
足元の男を引っ張り上げた。
ざわざわと、遠巻きに彼らを見詰める人々の輪を、上から眺めながら、シェインは領主の館に向かう。
「シェイン様、空角は、大丈夫ですか?ブランカを、その、傷つけてしまっては」
「大丈夫さ。矛盾があるからな」
「矛盾?」
「契約の、矛盾さ」
にやりと笑う。
「あの?」
「矛盾を突けば契約は、無効になる。いいか、守人は第一の契約でブランカを傷つけることは出来ない。ラタも俺の契約に縛られている。だからラタもブランカを傷つけられない。
同じだ。
だが、同時に、俺は生きものを傷つけない。
それは、俺の契約にラタが縛られることで、ブランカを傷つけたラタが報復を受けることと矛盾する。だから、ラタさえしっかりしていれば、大丈夫なのさ。
まあ、普通は契約の重さに耐えられずに、死ぬ。契約とはな、とても強い、暗示のようなものなんだ。それをかけるのが、神官の役目だ。いやな役目だよな」
「はあ」
男は首をかしげる。
それでも、普通は空角の飼い主も同時に報復を受ける。
シェインほどとなれば、その契約の重さすら、跳ね返すのだろうか。
「あなた様は、その、なぜ神官をお辞めになったのですか?」
「ふん。ろくなもんじゃないからさ。契約なんて矛盾だらけだ」
「はあ」
男は黙った。
力を持って生まれたのに、それを使おうとしない。なぜなのだろうか。
守人として生まれたからには、皆、力を望む。力があるものが最上。逆らうことは許されない。エノーリアはそういう世界だ。力がないものは、そのようにしか生きられない。
この人のように、選ぶ権利すらない。
ただ、この下層で、貧しい暮らしを続け、いつか死んでいく。
あえて、下層を選んで住む。その意図は分からなかった。

 「片翼のブランカ」続きはこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-66.html


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genre : 小説・文学

ひろさん

ありがとうございます!
この作品、かなり描写少なくて勢いで書いているので、ラストまとめるの苦労しちゃいました(^^;)
楽しんでいただけると嬉しいです!
どんな感想いただけるのか、楽しみにしています!

遅ればせながら…

ホント、らんららさんには、日頃お世話になりっぱなしでしたのに、「片翼のブランカ」をここまで読むのが、今日になってしまいました。
ここまで一気に読みました。
すっごく面白いです。
独特の世界にわくわくしています。
そして無垢の存在、ブランカがとっても可愛いですね!!
外界に触れて、またたくさんの感情や世の中の仕組みを吸収していって……最後にはどうなるのでしょうね。
また、続きを読みにきます。それでは~。

さっそく遊びに参りました♪
小説書けるのってすごいですよね。登場人物一人一人の気持ちの描写や背景の空気をつたえなければならない。詩とはまた違った感動や発見があって、新鮮な刺激をいただきました。

続きを読みにまたきます!!

こんにちは!!
今回の作品はかなりソリッドに描写されてますねえ。
無駄な描写を極力拝して、伝えたいことの要点、核の部分だけ描写している。
効果を上げている、と思います。
読者は読んでいて、「ハッ」としますし、婉曲表現より、こうした表現の方が読者にダイレクトに伝えたいことが伝わる。
らんららさんも色々な方法を試してる最中のようですし、らんららさんの色々な文体が拝見できそうで、楽しみです。
で、物語、又色々と発展していきますねえ。
続きが楽しみです!!
では、又参ります!
ぽちっと。
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らんらら

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