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「想うものの欠片」最終話 ⑩

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城壁はそのまま、皇帝の宮殿へと続いている。上から街の人々を眺めながら、タースはシーガから数歩後ろを歩く。
前を歩く青年は、無表情。黙ったまま、とにかく宮殿へとまっすぐ向かっていく。
何故教えてくれないのか。
はあと苛立たしげにため息を吐き出して、タースは首をぽりぽりとかいた。
「そういう性格だけどさ。わかってるけど」
つぶやく声もシーガには聞こえているはずなのだ。

宮殿前の広場は、閑散としていた。
都市の何処を見ても、大勢の人がいたのにそこだけは忘れられたかのようだとタースは思う。
もちろん、宮殿への入り口に当たる正面は巨大な石の門と鋳物の柵がある。オトナの身長の二倍以上ある柱ごとに、ぐるりと軍兵が立っていた。
ちょうど、小さい子供が興味深そうに近寄り、その母親ともども、追い払われたところだった。

人がいない理由が、そこで分かった。
タースと目が合うと、軍兵の一人が肩に背負った銃剣を鳴らしながら近づいてきた。
ティエンザ人だ。この国の人ではない。
「おい、お前ら、何処から来た?ライトール人か?」
「あの、僕…」
「!?あああああ~!!お前はっ!」
言い終わらないうちに軍兵が皮の手甲をした腕を突き出すので、タースは反射的にかがんでよけた。
むと睨まれ、さらに数歩、下がる。

「なんだよ、ってあれ?」
この軍兵、どこかで見たことがある。


「お尋ね者!」
軍兵が叫んだ時には、タースはすでにシーガとミキーの手を引いて、走っていた。
「なんです!?タースっ!」
「きゃはは!タース早いですの♪」
タースにしがみついて振り落とされないように肩にぶら下がるミキーは楽しそうに笑った。
「あれ、あの兵たち。ティエンザの博物館で僕を追いかけた奴らだ!」



息を切らして、三人は城壁から人ごみの市場へと駆け込む。
並んだテントと、ひしめく人並みで三人は何とか逃げ切った。

「は、まいった」
「ガネルが来ていることが確実になりましたね」
「タース、これ、もらったですの」
人ごみを歩いている間に、ミキーは呼び止められいつの間にか果物を手にして戻ってきた。
赤い熟れたパパイヤだ。
ふわりと甘い香りがした。
傾きだした陽に、狭い路地の市場はランプが灯され始めている。
「とにかく、宿を探しましょう」
「うん」
「あ、そうです、ミキー、それを」
少女からパパイヤを受け取ると、シーガは二人をそこに待たせ人ごみに消える。
青年の後姿、市場のテント、ランプに照らされる町並み、並ぶ窓辺。順に見回す。

街には市場の露店以外、常設の商店らしきものは見当たらなかった。
広場を囲むこの界隈もほとんどが共同住宅のようで、この時間、窓から向かいの窓に渡したロープから取り込まれる洗濯物の影がちらほら揺れる。じっと暗がりに目を凝らすと、たくさんのロープが渡されていて、まるで横断幕を掲げたライトール公国の首都のようだった。建国記念日のパレードを思い出した。

タースとミキーは人ごみから離れ、露店の裏側のアパルトメントの壁際に立った。
薄い黄色いレンガを積んだ建物は、昔ながらの建築技術だとタースは話す。
「空気が乾燥しているんだ、だから、この石でも強度が保てるんだな」
「きょうど?」
ミキーがタースの真似をして、脇の家の壁面をついと人差し指でなでてみる。
「あ!」
指先がうす黄色く汚れた。
「なにやってるんだよ、ミキー。ほら。貸して」
タースがぽんぽんと軽くミキーの指先をはたく。絹の白にそれは小さいしみになった。
「きょうどってなんですの」
「建物を支えられる力のことだよ。ほら、ミキーが触ったくらいで石の粉がついただろう?これ、きっと風と雨とで、風化が始まっているんだ。でも、乾燥しているから、石の中の微細な空洞に水分が入り込まない。中からカビが生えたりひび割れたりはしないんだ」
「もろい石で出来ているというのですか」
シーガだった。手に深紅の薄い羅紗をかけている。
シーガが口を挟むことは珍しかった。
いつもタースが建物の歴史や構造を語っても、一切興味を示さなかった。
なんとなく嬉しくなって、タースはにっこり笑う。
「そうだよ、このレンガは低温で焼き固めてあるだけだから、もろいんだ。ティエンザやライトールにある建物のレンガは、もっと高温で焼き締めてあるんだ。そうだね、この間の地震みたいなのが起こったら、かなり崩れると思うよ」
そういいながら、タースは見上げた。
が、視界が赤い。
「なに?」
シーガが、手に持っていた深紅の生地を頭からかぶせていた。
それはすごく長い生地で、そのまま肩から、腰、すっぽりと全身を覆った。
まるで、そう。
道行くレスカリアの女性たちのようだ。
「お前はこれを着ていなさい。黙って大人しくしているのです」
「なんだよ、これ!平気だよ、自分だって追われる身の癖に!」
「タース、お化粧しますの?」
ミキーは嬉しそうだ。
「しない、しないよそんなの」
「え~」ミキーは布を取ろうとするタースの手にしがみつく。
「ほら、行きましょう。タース、この国に宿はないのです」

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史間さん♪

女装タース君、想像したら変だったので却下でした(笑
新連載、なんとなくね、書いてみたくて。
らんららもすっかり遅れています…。
憑依!!うん。近い!!
勝てるか、タース君!!

っというか、リレー小説、うだうだしてます。
きっと、いずれ、完結させます…うく~。

お化粧するですの♪

おはようございます!
新連載はじまってますね…おおう(涙
とにかく日参の勢いでこの物語を最後まで楽しもうと思います!

タースの重要な過去第2弾。
憑依してるのかな~とは薄々思っていたのですが、ってことは最近思念が強くなってきているということでしょうか。
己の内側に克つ。
大丈夫、タースならできます!
と拳を握りつつ、ではまた!
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