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「想うものの欠片」最終話⑫

12
宮殿内の一画にシーガは連れてこられた。
部屋では侍従らしい女性が二人、シーガを恭しく迎えた。

大理石の浴槽に、沸かした湯を何度も運びいれ、女たちが準備を整えるとシーガは体を洗う。用意された服を身につけた。
絹のシャツ、刺繍で飾られた上着は丈が長く、腿の半分まで隠す。大仰な袖は折り返され、カフスには宝石のボタン。
ひざ下までの柔らかい革のブーツに、ズボン。
白と金、海の青と夕日の黄色が肩と裾を飾る。
それが自分の容姿に随分似合うことに鏡を見て気付く。
「この衣装は?」
見とれていた侍従は、慌てて視線を床に落とした。
「フィメイア陛下のものとしてお造り申し上げたものです。まだ、袖を通されていないものでございます」
「…皇帝陛下は、どうされている?私に、何故このようなものを着せるのですか」
侍従は困ったように、黙り込んだ。
「知らないですね、そう。仕方ない」



がちがちだ。
そこまで、固く縛らなくても、というくらいタースはきっちり手首を縛られていた。そのつながれた先を引くティエンザの軍兵は、まだ酒がどうのと愚痴をこぼし、タースに八つ当たりする。
宮殿の地下へと進んでいる。
どうせ、地下牢とかってのだろう。タースは建物を値踏みしながらその造りがライト公領にあった旧聖堂と同じだと気付いた。同じ時代に、同じ建築家の元設計されたのだろうか。とすれば。
連れて行かれる先は、ちょうどタースがスレイドに連れて行かれたあの地下の部屋。あんな感じだろう。けれど、この建物のほうが綺麗に磨かれているのは、使途が違うから。現役皇帝陛下の宮殿ともなれば手入れも行き届くというものだ。旧聖堂は、もっと汚れていた。
と。
そんなことに気をとられ、前を行く軍兵が立ち止まったことに気付かない。
ドン、とぶつかった。
「いて!なんだよ。止まるなよ」
ぶつかった鼻を押さえようと手を上げたところでまた、ぐんと引っ張られた。
「な、…!!」
目の前の、灰色の作業服。
大きな体。
見上げないと目線が合わない。
「ウィスロさん!!」
飛行船の機関長は無言で眼を見開いている。
「邪魔をするな」
軍兵が忌々しそうに押しのけようとするが、ウィスロのほうが大きい。巨大な褐色の手のひらで押し返されて、軍兵は数歩よろめいて壁で止まった。
「貴様!」
もう一人の軍兵が銃剣を突きつける。
それでもウィスロはタースから目を離さない。
「あの…」
タースが口を開こうとすると、太い眉がぐんとしかめられる。
しゃべるな、ということか。
タースはいきり立ってウィスロに殴りかかる軍兵の様子から、ティエンザの軍とウィスロが必ずしも友好的な関係でないことを直感した。
殴らせておいて、じろりと軍兵を睨むと、ウィスロは壁際に離れる。
「ったく。脅かしやがって、お前らに協力してやったんだろうが、大人しくしてろよ」
「ほら、お前は来い!賞金首が。何でお前が金貨一万なんだ、納得いかないぜ」
意味もない八つ当たりをしてタースの頬を殴ると、また、ぐんぐんと引っ張る。
よろめきながら、タースは振り返る。

ウィスロがじっと見送っていた。


なにがあったんだろう。
陛下は無事なんだろうか。
ティエンザ軍に征圧されている様子だけれど、街ではそんな感じはなかった。
今はただ、宮殿内がティエンザのものになっているということか。ウィスロや、他のレスカリアの人たちが反抗しない理由は。
理由は。
陛下が、…人質!?

「さあ、入れ!」
重い鉄の扉を開いて、暗がりに突き飛ばそうとする。その瞬間を狙って、タースはかがみこむと背後の軍兵の股間をかかとで蹴り上げた。
「うぎゃあ!!!」
なんとも無様な悲鳴を上げて、そいつが座り込んだ。
「貴様!」
すぐに、もう一人が銃剣で背中を叩いた。
振り向いて応戦しようとするタースの腹を蹴る。

ぐ、と。こらえる。
が、次に銃剣の切っ先が腕を薙いだときには、よけようとして、転んだ。
背後にあった寝台に腰を打って、タースは動けなくなった。
「へ、このやろう!」
散々殴られ、数発目の蹴りで意識が遠くなりかかる。

「いて~」
まだうめいているもう一人を思い出したのか、殴っていた男は攻撃の手を休めた。
「は、バカだな、抵抗なんかしやがって」
「こんな、ことして。ただじゃ済まさないんだからな」
タースが、睨みつける。
「はあ?」
勝ち誇った顔で男がタースの喉元をつかむ。
ぐ、と息が詰まる。
「僕は、皇帝陛下と仲がいいんだ、こんな、こと…」
言葉が途切れる。
「なんだって?聞こえねえ」
「おい、俺にやらせろよ」
股間を押さえてうずくまっていた男が立ち上がってきた。
「は、バカだな。皇帝陛下様は俺たちの言いなりだぜ?さっきの大男だってそうだろうが。この国はな、我がティエンザ王国の属国になるのさ」
やはり、陛下が人質に。
タースは唇を噛んだ。
どうやって救い出そう。
どうやって陛下を助けよう。
陛下、助けなきゃ。

喉元から男の手が離れた。
つぶっていた目を開くと、目の前に血走った男の目があった。

「覚悟しろよ、ガキが!」
男が振り上げた銃剣が、キラリと暗がりに光った。

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