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「想うものの欠片」最終話⑰

17
ウィスロは泣き続けるタースを、抱きしめていた。
「タース、俺たちだってな、陛下を憎んでいるわけじゃないんだ。ユナのことだって、皆どれほど悔やんだか。陛下の一番近くにいるあいつに、だれもクーデターのことを言い出せずにいた。あいつが、陛下を慕っているのは皆知っていたし、あいつはまだ子供だった。我らの思想を理解できるか怪しかった。ジファルが説明しようとしたんだ。だが、あいつは混乱して陛下に訴えようとした。だから、…仕方なかったんだ。ユナがいなくなったことで、陛下は感づき始めた、だから、お前を犯人に仕立てようとした」
「ひどい、よ。…ねえ、ユナ」
タースは傍らのユナが白く揺らぐのを感じていた。
ずっと近くにいる。
「ジファルだって、苦しいんだぞ!あいつは、家族を病で亡くした。ガネル司祭に相談した時、たいした病気ではないといわれた。だが、この国には治す薬がない。医者もいない。外国から呼び寄せることも禁じられている。お前たちが、街でしたような技術の一つもない。求めて当然だろうが!生きる権利はだれにでもあるんだ!」
「ユナにも、あったよ」
ウィスロは黙り込んだ。
「…僕を、陛下に会わせて欲しい。僕があったからって、何か出来るわけじゃない。でも、僕は陛下に会いたいんだ」
大きなため息を、男が吐き出した。
肩を落とし、タースの体にかかっていた力も抜けた。
そっと、タースは起き上がる。
「なあタース、お前、なんでそこまで陛下を慕うんだ。俺たちとだって、仲良かったよな」
立ち上がって、男を見下ろした。
床に膝をついたウィスロは小さく見えた。

「僕、シデイラの混血なんだ。知ってる?僕みたいな子供は、生まれてはいけないんだ。ずっと疎まれて育った。愛してくれた母さんも、父さんも。僕がいたから、住んでいた場所を追われた。苦労して。最後には僕のせいで死んじゃった。僕は母さんの言いつけどおり、誰にでも優しい、いい人間であろうと思う。でも、だから。僕に優しくしてくれる、本当に僕を大切にしてくれる人には、僕が母さんや父さんにしてあげられなかったことをしたいと思って」

また、タースの頬を小さな蒼が転がる。かすかに音を響かせ、ルリアイはウィスロの足元で止まった。目の前に光る美しい蒼を、男はじっと睨んでいた。
「だから。陛下を助けたいんだ。陛下が、どんなに皆に憎まれたって、平気だ。僕だって憎まれてきた」

大きな男は涙を流していた。褐色の頬に、いく筋も光る。もともとウィスロはそういう話に弱い。
「お前は、なんて…」肩を震わせて、タースのために泣いてくれた。
言葉にならず、何度も涙をぬぐう。

タースは手を差し出して笑った。
「ほら、ねえ、ウィスロさん。僕を陛下に会わせて欲しい。何かするわけじゃないよ。ただ、僕は陛下の役に立ちたいんだ」



時折よろめくタースを、支えながら、ウィスロは狭い階段を上った。
所々開いている窓から、異様にどんよりとした空が見えた。

遠い大陸で、恐ろしいことが起ころうとしていたことを、タースたちは知ることもない。ラニウムと火薬を積んだ飛行船は今この時も空を漂っていた。

ひどく冷え始めた空気に、ウィスロは眉をしかめていた。
この季節、この国にこんな気温はありえなかった。
なにもかもが、変わっていくようだ。
タースは寒いのか、体を震わせた。

「タース、俺は、初めて見た」
「え?」
「お前の、ほら。涙が固まっただろうが」
「…ああ、ルリアイ?」
「そう、それだ。この国には昔から言い伝えがあってな。まあ、おまじないみたいなもんだが。大切な人にそいつを贈るんだ。ペンダントにしてな。それをもらった人は自分が可愛がっているペットにかける。そうするとな、その人が死んでしまっても、そのペットの中に宿って、生き続けるっていうんだ」
「…ジファルに、贈ったら?」
ウィスロが、こぼれたルリアイを拾っていた理由がわかった。

「何で俺が、ジファルに贈るんだよ」
「他に贈りたい人いるのか?」
男は、黙った。
人のことには同情して大声で泣いたりわめいたり出来るのに、自分のことはどうにも不器用なんだな。タースは面白くなって、男の背を数回叩いた。

「僕。いろんな、いい人に出会った。嫌なこともあったけど。ウィスロさん、会えてよかったと思ってる」
「何、お別れの挨拶みたいなこと言ってんだよ」
「あ、そうだね。変だった」

陛下に会う。
タースは不思議と、心が落ち着いていた。



大きなドアの前に立つ。
両側にいたレスカリアの側近たちはウィスロの顔を知っていた。大司祭の命令だというと、慌てて扉の前からはなれ、二人を通してくれた。

ウィスロが、ノックする。
「陛下。私です。ウィスロです」
中から開かれた扉。
その目の前に。
銀の髪の青年が立っていた。その隣には、すがりつくミキー。
二人ともタースを見つけると目を大きく開いた。

「シーガ!」

駆け寄ろうとして。
シーガの横にガネルが。そして、彼らの正面のソファーに皇帝と皇妃が並んで座っている事に気付いた。

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