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「想うものの欠片」最終話⑱

18
「タース!!」
ミキーが駆け寄る。
タースの腕をぎゅっとつかむ。タースの右腕はあまり感覚がなかった。
悲しそうに見上げるから、タースはミキーの頭を優しくなでる。
「大丈夫だよ」

額に。
シーガが手を当てていた。
「なんだよ、シーガ、熱はないってば」
笑ってその手をどける。
「ごめん、あの、僕」
少年の視線がシーガの背後、今ソファーから立ち上がって一歩踏み出した皇帝に向くのを、シーガは黙って見送った。
「なんだ、どうしてお前がこいつを連れてくるのだ」
ゆらりと皇帝のほうへと歩き出すタースをガネルは怪訝な顔で見つめる。
「おい、何をぼさっとしておる、その大男と子供を捕まえろ。あちらへ」
ウィスロは近づいてきた側近をにらみつけた。
「ウィスロ、お前は何を!」
ジファルだった。
皇帝へと真っ直ぐ歩むタースの肩をつかんで止める。
「!止めなさい」
シーガと皇帝が、同時に言葉を放ち、ジファルは眉をひそめた。
ジファルが見つめているのは、自分と少しだけ身長の違う少年。タースは、まっすぐ皇帝を見つめたまま、ふわりとジファルの手を振り払う。
「!お前……」
何を見るのか、青ざめたジファルは動けずにいた。

タースが皇帝の目の前で、片膝をついた。
その正しい姿勢、厳かですらある最敬礼は、タースのものではなかった。
「…ユナ」
皇帝は自ら膝をつき、タースを、いや、彼と共にいるユナに手を差し伸べた。

シーガは皆が動けない理由を悟った。タースのそばにいた少年。はかなげにタースの陰に隠れるようにしてついてきていた少年は、やっと想いをとげたのだ。
ゆらりとタースの体の回りの空気が揺れた。陽炎のように周囲が歪んで見えた。
一瞬の出来事。理解できたのは、シーガと皇帝、ミキー、そして皇妃だけだろう。
いや、ジファルも見ていたのかもしれない。
女性は青い顔をしてかすかに唇をかみ締めた。

「ご苦労であったな」
皇帝の言葉に、タースは笑った。
陛下は全て理解している。僕が犯人じゃなかったことも、ユナが殺されてしまったことも。
わかってくれている。
これまでとまったく変わらない陛下の様子に、タースは嬉しくなる。
まるで父親に褒められた息子のように、タースの表情は明るい。
その表情はもう、タースだけのものだろう。

「陛下、皇妃さま、ご心配申し上げておりました」
嬉しそうに頭をなでられるタースを、シーガは静かに見ていた。

「あ、…ええい、ジファル!その子供を捕らえろ!まったく、役に立たん。おい」
ガネルは大柄な側近に顎で指し示した。
その男は、あの博物館でもいた男だ。タースのためにしてやられたことを思い出し、にやりと笑った。
「あの時はよくも、やってくれたな?」


男が歩き出すのと同時に止めようとウィスロが一歩でる。
「ウィスロ!我らの目的を忘れたのか!」
ジファルの叫びに、ウィスロは拳を握り締めた。
ジファルはガネルの側近より先にタースに駆け寄ると、皇帝から引き剥がし、殴りつける。
「!やめなさい!」
またもや、シーガと皇帝の言葉が重なる。
互いに一瞬だけ視線を合わせる。シーガが駆け寄ろうとしたとき、タースは力なく床に座り込んでいた。

少年の耳元に。冷たい音が響いた。
ジファルの銃が突きつけられた。


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史間さん♪

ウィスロやこの国の抱える問題。
何が一番なのか、このあたりは問題提起まで(笑
らんららも正義を語る輩は胡散臭いと思いますし、真実自体形のないものと思う大人ですが。

取り巻くキャラに比べてタース君は、一途です(笑
子どもですし。社会的なことに関して何か思想を持つ必要もないくらい阻害されて生きてきていますしね。
自分がこうしたいと思うことを素直に行動しようとする。間違っていようと、おかしかろうと。
危うくもあり強くもある。
そんな子です(笑

さて、獣。
期待にそえるかな?

あ、そうそう。史間さんならきっと大好きだろうなと思われるケータイ小説発見、というか、らんららが今はまってます。
【seventh summer】唐沢ナオさん著。新人賞受賞作家さんですが、この作品は現代もののサスペンス。いや、もう。史間さんと同じ匂いと完成度を感じさせる。
オススメ。(←って、なぜここで?

ダーズー!(驚

ここに来て、なんつーことに!びっくりですっ

ウィスロの言うこと、もっともですね。
無意味に文明が発展することを美徳とするのはいただけませんが、
治せるのに障害によって治せない、
ほんの一歩の前進が許されない。
それはきっと何かを放棄した怯えだと思うので。
そういう意味では、タースの優しさ、まっすぐさ、一途さは浮世離れしていて、
私みたいな汚れた人間には理解できないといいますか。
あまりに潔癖な正義に、すこし違和感を覚えるわけです。

ま、でもそこが彼の取り柄なんですが~。

タースの内なるあの獣が、そろそろ目覚めそうですか?
一同に会した面々と緊迫した展開。またお伺いしますっ><
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