10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「音の向こうの空」第一話 ②



音楽堂の南側は庭に面している。小さな池や花壇を備えたそこは、茶会の会場ともなる。こうした場所はこの敷地内にいくつかあるが、オリビエが奏でるチェンバロ*の曲を聞きながらの茶会はここでだけ開かれる。
それも、必ず三十人以下の小規模なものだ。
(*チェンバロ=ピアノの元となった鍵盤楽器。弦を叩くのではなく、弦を引っ掛けることで音を響かせる)
以前、侯爵は友人のロントーニ男爵に「大広間でもオリビエの曲を」とせがまれたらしいが、侯爵は首を縦に振らなかった。貴族はそれぞれにお気に入りの楽士を抱え、その自慢のためにわざわざ他家のパーティーに同伴させるものもいるという。楽士が著名になるほど、抱える貴族は「芸術のよき理解者」との誉れを受け、鼻を高くするのだ。
オリビエの雇い人、リツァルト侯爵のその対応には、出し惜しみしているとか、変わり者だとか。
そんな噂が囁かれるのも当然だった。

オリビエは侯爵の対応は自分が未熟だからだと感じ取っていた。
悔しいが、オリビエ自身、まだ亡き父親に追いついていないと思っている。
今年十八になるが、楽士の世界では子ども扱いだ。
新しい楽器の発表会などに連れて行かれると、どうしても周囲の目は冷たく感じた。
「お父上譲りの腕前とか。ぜひ拝聴したいものですな」
そんなことを言われても、その場での演奏を侯爵は許さなかった。


オリビエはギシと小さく鳴かせて音楽堂の扉を開く。

音に気付いた。

白く彩色されたオリビエの、いや侯爵家のチェンバロの前に派手な赤がたたずんでいた。
「アンナさま」
振り向いた侯爵夫人の表情を見て、オリビエは足を止めた。
常なら彼に向けられる侯爵夫人の表情は笑顔だ。それが今は違う。
バン、と乱暴に鍵盤を手のひらで叩いて、夫人は靴音を響かせながら青年に歩み寄った。
今年三十五になる夫人は真綿のように真っ白な肌をした美女で、王家の血を少しだけ引く。その由緒正しき生まれの美しい外見を見事に裏切り、厚めの唇に塗りたくった紅がつやつやと青年に迫る。

次へ
関連記事
スポンサーサイト

ミナモさん♪

侯爵様の気持ちは秘密♪v-392
侯爵様のキャラ、らんらら一押しですよ(笑
優しいんだか厳しいんだか。
また、この夫人が書いていて楽しい!!

父の影は…

オリビエには、まだまだ大きな壁なんですね。

でも公爵様の意図は??
未熟だからとか出し惜しみではなくて、オリビエを想ってのこと…だったりして。

公爵夫人とオリビエ。
ど~なっちゃうの??
わ~、気になるぅ~っ!!!
Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。