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「音の向こうの空」第二話 ②

―第二話『少女、歌、奏で』―



ペンをインク壷に戻すと。オリビエは楽器に向かう。
譜を残しタイトルをつけなくては曲として残せない。けれど今は。この想いを音にしておきたい。

いくつか弾き、やはり書こうと手を止める。
調子の出ない日とは、こういうものだ。
と、開かれた窓の外から誰かの歌う声がした。
聞いたことのある曲だ。
歌詞もなくただ、ららら、と歌う少女。

オリビエは窓辺から外を眺めた。
わんわん!と激しくほえられた。

「あ、ごめんなさい!」
街の少女だ。アネリアと同じくらいか。白い犬を抱きしめ、こちらを見上げる。

真っ青というのか。空を映す瞳にオリビエは何もいえなくなった。
少女は立ち上がり、青年に微笑んだ。

「素敵な曲ですね、つい、口ずさんじゃった」
「あ、ああ」

あれは自分がついさっき思うがまま奏でた短いフレーズだったのだ。それすら記憶に遠いオリビエは少し呆けた様子で少女に見入っていた。

「侯爵様の楽士様でしょ?わたしキシュといいます。美しい音楽が大好きなの。この、ランドンもね」
ランドン、といわれ犬がワフンと嬉しげにほえた。

「あ、ゴメンナサイ。お邪魔してしまいましたね」
「いや、もう一度。歌ってくれないか」

少女は不意に頬を染めた。
いや、ついさっき通りに面した窓から音を拾って口ずさんだ、その上「つい」と悪びれずに笑って見せた。
なのに歌えといわれると躊躇する?
「あの、でも」
「いいから、もう一度」
オリビエは無性に、人が奏でる自分の曲を聞いてみたくなっていた。

「君、オルガンは弾けるの?」
「無理です、そんなの」
今度はぷんと口を尖らせる。ワフンと犬も同調する。
「じゃあ、歌ってみて」
とがった口が青年に見つめられて徐々に緩む。

「しょうがないな!笑わないでね」
不意に口調まで変わり、キシュと名乗った少女は後ろに手を回し、合唱の練習の時のようにふと腹に力を込めると歌いだした。
それは犬も聞き入る。

少女は才能があるのだ、一度聞いただけの曲を最初から、口ずさんで見せた。その上、オリビエが思うまま弾いた不安定なそれは、歌いやすく省略されるのか譜面に落としやすい。
オリビエは、窓から身を乗り出して、少女を誘った。
「ね、君、ちょっと手伝ってくれないか」
きょとんとしたキシュはすぐに仕方ないな、と大げさに肩をすくめ、テラスを回って犬と共に入ってきた。
「犬は外に」
扉を開けたオリビエが眉をひそめると、キシュはあら、と笑った。
「だめよ、ランドンは私の護衛だもの、私に何かあったらただじゃすまないんだから」
気付いて、オリビエは自分の突然の思いつきを恥じた。
見知らぬ少女を家に呼び込むなど、見ているものがいればなんと噂されるかわからない。これが侯爵の耳に入れば、何か良くない結果を生むかもしれない。

オリビエは戸口に立ったまま、チェンバロを珍しそうに眺め回すキシュを見つめていた。
どうしようか。
このまま帰すのもおかしいか。

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