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「音の向こうの空」第二話 ⑤

―第二話『少女、歌、奏で』―



「うん、ほら、家の中ばかりだからそんな真っ白な顔して痩せてるのよ。貴族の奥様にはもてるかもしれないけど、街の子には全然魅力的じゃないわ」

ずいぶんな言われようだ。
似たようなことを先日男爵にも言われたために、自覚がないわけではない。

「意気地なしなのね」
「違う、犬はだめだ。触れないから」
「意味が分からないわ。行こう、ランドン。ねえ、なにもらったの?お腹痛くない?」
そんなことを言いながら、少女は歩き出す。

「ちょっと、待って!」
窓から叫んでも、少女はちらりと振り返るだけだ。

オリビエはテラスへと周り、一瞬躊躇したが、外へと走り出した。
「待てって!」

オリビエの家のさほど広くない庭を横切るように少女は通りへと抜けようとしていた。豆ツゲの小さな垣根をぴょんと身軽に飛び越えた。犬も続く。
「待て」
同じようにまたいで、オリビエは通りの石ころに躓きそうになりながら、追いついた。
息を切らせた青年に、犬が嬉しそうに近寄ってきた。

「わ、待て。やめろって」
立ち上がると犬はオリビエの腰に抱きつく。
「おい、止めろって!」
あはははは。
面白そうにキシュが青年の顔を覗き込んだ。

「やっぱり犬が怖いんでしょ?」
「違う!咬まれたらいけないから、触れない」
「なにそれ」
「いいから、こいつ何とかしろって!」

ふーん、ふーん、と首をひねりながら、少女は犬を呼び寄せた。
「変な人。ねえ、ランドン。咬まれるのが怖いくせに怖くないって言うの。変なの」
「あの、犬はどうでもいいんだ。君、もう一度歌って欲しいんだ」
「ますます変な人」
「頼むから。曲作りを手伝って欲しいんだ」
少女は黙った。

「僕は、弾き出すと夢中になっちゃうから、だから、君にそれを聞いて欲しくて。聞いて、歌って欲しいんだ。僕も君の歌なら譜面にできるんだ」



キシュに茶を入れてやり、犬がキシュの足元に寝転んで、やっとオリビエは自分のチェンバロの前に座ることが出来た。
少女は美味しいと何度もため息をつき、それを作ったメイドを尊敬すると繰り返す。
「変人なのに、お金持ちはいいわね。こんな美味しいものを毎日食べられるんだから」
「変人、は余計だと思う」
「変人は変人。私、これを作った人にお料理を習いたいな。なんていう人?」

少女の敬意はすっかりシューレンさんのもので、オリビエは複雑な気分だが、機嫌を損ねてもいけない。
「シューレンさん、っていうんだ。毎日来てくれる」
「どこの人?名前からすると外国の人みたいだけど。この町の人じゃないの?」
「え、近くだと思うけど」
「思うって?知らないの?」
呆れたようにキシュは紅茶のカップを置いた。
食べる手を止めて、青年を見ていた。
そんなに悪いことじゃないはずだ、とオリビエは思うが。

「朝、顔を合わせるだけだからね。僕は侯爵家に出かけるから、その間に家の掃除や夕食を作っておいてくれるんだ。彼女を雇ってくれているのも侯爵家だ。だから、どこのどういう出身の人かは知らない」
言いながら、言い訳に思えてくるのが不思議だ。十三の時から毎日顔を見ている。何をしなくても毎日来てくれるから、あまり意識したことがなかった。
誕生日すら、知らないな。

「…変なの。今度紹介してね。あんたのいない昼間に来るわ。いろいろ教えてもらおうかな」
完全に馬鹿にされている。ここは、我慢。我慢だ。
「メイドになりたいの?」
「ううん。ちがうよ。でもこんなに美味しいお菓子、自分で造れたら幸せだもん」
「あ、それはそうだね」
少女のもっともな発言にいちいち頷いている。
「ね、変人さん」
「…オリビエって名前があるけど」

「じゃあ、オリビエ。この間の曲、弾けるの?あれ、気に入ったな」
早速呼び捨てなのかとため息を漏らしながら、オリビエは手を鍵盤に置く。
あの曲は何度も弾いた。
「秋風のタルト」
弾き込んだために最初のような切なさは薄れている。けれどその分、穏やかな優しさのある曲になる。
「淋しい曲だね」
途中でこんな言葉を挟まれると、演奏は中断。

「あれ、止めちゃうの?」
「え」止めてはまずかったかとオリビエは首をひねる。
少女は紅茶を一気に飲み終わると、オリビエの傍らに立った。
「ねえ、もっと弾いて」
「いや、君が淋しいって言うから。気に入らないのかと」
「なに、つっかかったの、私のせい?」
「え、違うけど」
失敗したわけじゃない。
ただ、曲の途中で口を挟まれるなど、両親を亡くして以来なかった。
「じゃあ、弾いてよ」
「途中で何か言われると弾きにくいよ」
「じゃあ、歌わない」

次へ♪
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龍くん♪

いらっしゃいませ!
すごい時間だわ、確かに(笑)
改めてこの辺を読み返すとなんだか新鮮。
オリビエ、少しは大人になってくれるといいのですが…^^
これ、一応、歴史ものとしてランキングには載せています…そういう内容、のつもり…?ジャンルが難しい…。
様々に展開していきますので、お楽しみに~♪

こんな時間ですが

眠れないのでふらりと立ち寄らせて頂きました。
おそくなりましたが、第二話、完読です。
自由きままなキシュちゃんは、まさに猫といった感じですね。文を読んでいるだけで、自由に動く彼女の愛くるしさが伝わってきます。また、どこか達観しているのに、子供くささが抜けていないオリビエの一面もいいですね。
また、時間が出来たら、第三話、読みに来させていただきますね。
それでは、失礼しました。

ユミさん♪

うふ~。そういっていただけると嬉しいっ!
キシュちゃん、いろいろと暴れん坊です(笑
大人しいオリビエには丁度いいカナと♪
そう、この物語、『野いちご』では『恋愛』ジャンルに登録しています…うふふ。
切ない恋愛、書くぞ~!!(←コメントに力をもらっている)

あはは^^;

オリビエすっかり尻にしかれてる感じですね^^
キシュちゃん、可愛い☆ちょっとおしゃまな女の子って雰囲気ですね。
らんららさんの小説に出てくる女の子ってラブリーなんですよね~♪
この二人が、音楽以外の場面で何かあるのか楽しみにしてます!
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