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「音の向こうの空」第二話 ⑥

―第二話『少女、歌、奏で』―



何か、とてつもなく弱みを握られたかのような感覚に陥る。そんなに僕はおかしなことを頼んでいるのか。
無理難題なのか。
こんな年下の少女、音楽の何が分かるわけでもない少女の機嫌を取りながら曲を聞かせて宥めなければいけないのか。

考えてみれば、思うまま弾く曲は内容を問われても困る。ただ、人形のように繰り返して歌ってくれればいいのだ。だが、この少女はきっと、「何を思ったのか、何を表現したのか」としつこいだろう。
想像するだけでぞっとしないか。
これは間違っているんじゃないか。

似合いもしない、菓子を焼いて呼び寄せようなんて。
侯爵に知られたらまずいだろうし、こんな風に誰かに僕の曲を聞かせるのはどうなんだろう。男爵の件があってから、侯爵はますます他所で奏でることを嫌っている。一時は侯爵家に住まわせると言い出して。さすがにそれでは息が詰まるから、何とか宥めたのだ。

これが知れて侯爵家に閉じ込められるようなことになったら。僕は本当にかごの鳥だ。
外に出られず、憧れる空ばかりを曲にする。
自由に、なりたい。


ふ、と。
ため息と共に演奏の手が止まった。
いつの間にか指は心を奏でていた。


ら。

振り向くと少女は真っ直ぐ、真剣にオリビエを見つめながら、小さく曲を口ずさんでいた。
「君」
「キシュって名前があるよ」
「キシュ、今の」
「歌えるよ。歌って欲しいんでしょ?」
「…いいや、今のはいいよ」
あれは、取り留めない、どうしようもない想いが音になった。聞けば苦しい気分になるだろう。聞いて幸せな気分になれる曲でなくては、客には受けない。
「歌いたいの」

「え?」
いつの間にか少女の手が据わるオリビエの肩に静かに乗っていた。
少女が口ずさむ旋律はオリビエが思ったほど不快なものではなかった。

それは静かで低く、流れているかどうか分からない川面のようだ。そして少しばかりの小石に波立つ、脆さが垣間見える。やはり自分らしすぎて気分が乗らない。
「ごめん、それは」
少女は歌い続ける。
「キシュ」

最後の一音まで、キシュは歌いきった。
ほう、と息を吐き出して。少女は悲しげに青年を見つめる。
「これ、譜面にはしないのね」
「ごめん」

「とっても素敵なのに。聞いたら皆感動するわ」
「キシュ、そうだ。言ってなかった。僕の曲ね、君はきっと覚えてしまうだろうけど、誰にも言わないで欲しいんだ。僕以外の誰にも聞かせないで欲しい」
侯爵に知れたら。それは、気をつけなくては。
「なんで?どこで何を歌おうと私の勝手だわ」
頬を膨らませる。

「侯爵様に言われている。僕が、奏でるすべての曲は彼のものだから。許可なく侯爵様以外の人間に聞かせるのは禁じられているんだ」
キシュは口を尖らせた。膨らんだり凹んだりする少女の頬がなぜか視線をひきつけた。赤みを帯びた唇が胡桃割り人形を思い出させるのは何故だろう。

「その、僕が頼んでおいて悪いんだけど、僕の曲を僕にだけ聞かせて欲しいんだ」
少女はさらに首を三十度くらい傾けて睨む。

「だから。毎日美味しいお菓子を用意するよ。シューレンさんにお料理を教えてもらえるように頼んでおくから。だから」
「毎日なんて、無理」
「あ、そうか。君の好きなときに来ればいいよ。僕がいなくてもシューレンさんがいてくれるしね。気が向いた時に、聞いて歌ってくれれば」
「貴族様って、よく分からないけど。贅沢だよね」
「そうだね」
「だって、それじゃ私のランドンと同じじゃない」
「え?」
「オリビエは貴族様の犬と同じってこと」

次へ♪
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松果さん♪

そう、キシュは奔放です!
赤毛な印象はちょっぴりエレインの影響かもです♪魅力的だから~彼女♪

うふ、ランドン。気付くと必ず何かしら動物を描いています。
楽しいですよね、主人公がシリアスでも場を和ませてくれる♪

キシュの才能、これがいずれ……いやいや、まだ書いていないことは語りません…。
楽しんでくださいね~♪

ふふ、オリビエったら奔放なキシュに振り回されてますね。
でもキシュって凄い才能!一度聞いただけの曲を自分のものにしてしまうなんて。
オリビエの寂しい毎日に、希望を与えてくれるといいんだけど。

個人的にはランドンが気になっちゃったりして・・・動物好きなので。
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