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「音の向こうの空」第三話 ⑤

―第三話『春を待つ鳥』―


クリスマスから新年にかけて、オリビエは侯爵家で過ごす。シューレン夫人に休暇を与える意味もある。その間侯爵家で行われる様々な催しにオリビエの曲は欠かせないものになっていた。クリスマスのミサではオリビエの奏でる聖歌は人々を泣かせた。

新年を祝う夜会でも、大広間でダンスが繰り広げられるその一方で、オリビエが演奏をする音楽堂にも客の足が途絶えなかった。皆、踊り疲れては飲み物を手にオリビエの曲を聴きに集った。

一年でこのときほど、これまで作った曲を総動員する日はない。楽譜が尽きれば即興の曲を奏でる。

侯爵の姪に当たる女性の子どもが、無邪気に窓からの雪を眺めるのを横目に見ながら、可愛らしい曲を奏でる。深々と積もる雪は窓の外を青く白く染めていく。夜の闇に音楽堂の明かりが漏れ、雪原に反射して煌く。

その子には今朝、雪だるまを作ってとねだられたばかりだった。オリビエが困っているとビクトールが代わりに小さな雪だるまを窓辺においてくれた。
今も小さなレディは窓の外の白い彼に新年の挨拶を告げているのだろう。


敷地内の礼拝堂で鐘が打たれ、新しい年の始まりを知る。

それを合図に、オリビエのこの年の仕事は終わる。
ふとため息と共に立ち上がり、まだ残っていた客に一礼する。

若い男女、先ほどの子どもが眠ってしまっているのを静かに見守る侯爵の姪。老夫婦。温かい拍手が鳴り止むとオリビエは焚き続けたストーブのために乾燥した喉を潤す。
空腹など感じている暇はなかった。
少しずつ人の気配が減る室内で、イスに座ったまま鍵盤をそっとなでる。

侯爵にもらったブルゴーニュの白ワインを庭の雪で冷やしていたことを思い出し、テラスに出る扉を開く。
差し込む冷気に頬が引き締まる。いっそ心地よさを感じてオリビエは一人テラスに立った。

かすかに届く大広間の人々のざわめきも、庭の木々が積もった雪を落とす音も。全てを心地よく変えてしまう。雪に埋め尽くされた庭は好きだった。音すら美しく変える。

「風邪を引くぞ」

振り向けば、見覚えのある栗色の髪。ランプを背にした影だけでも、分かる。

ロントーニ男爵。
ふと眉をひそめたがその背後に侯爵の姿を見つけオリビエはホッとする。いつだったか、ロントーニ男爵がオリビエを譲って欲しいと言い出したときには、あまり近づくなと侯爵に言われた。

二人は仲が良いのか悪いのか、オリビエには測りかねたが、侯爵家の夜会や茶会には必ずと言っていいほどホスタリア・ロントーニ男爵は顔を見せた。

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