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「音の向こうの空」第四話 ③

第四話:思想の騎士、ファリの街



この国には二つの権力がある。
教会と貴族だ。
そしてその頂点に国王がいる。

数百年前に当時の国王が神に似た存在であると自分を位置づけてから、国王を頂点とした身分制度が確立された。大まかに身分制度を説明すれば、国王のすぐ下に司教会に属する司教たち、そして貴族。その下には平民と農民がある。

司教とは貴族の家系から聖職者になったもののことで、同じ聖職者でも司祭は平民と同じ扱いであった。
貴族の特権は、「租税を納めなくて良い特権」があることや、「領地を持つ特権、その領地から租税を徴収する特権」などだ。細かいものになれば、帯剣の特権、家紋の特権、風見鶏の特権、狩猟の特権などもある。

人々は教会からの租税と、領主からの税、そして国税。三十の苦役を担っていた。
これらは小作農民や貧しい町民にとって重圧であった。

このところ発展してきた工業を経営する商人、弁護士や医師など、平民でありながら下級の貴族より資産を蓄えるようなものも現れていた。彼らはブルジョアと呼ばれ、下級貴族から特権を購入する裕福なものさえいた。

宮廷はここ数年、新大陸の独立戦争へ派兵したり隣国と競って新たな港を建造したりするなど浪費が続き、国庫は破綻しかけていた。
その上、昨年は酷い干ばつで、農村では餓死者も多いという。
オリビエは噂と今目の前に見える農村の風景を比較していた。

昼下がりの黄色い日差しの下、麦畑は緑色の穂を揺らした。人気のない田舎道。道の脇で牛を引いた老人が一人、オリビエたちの一行が通り過ぎるのをじっと待っている。その小さな姿はすぐに流れ去っていく。

東にはアウスタリア国の高い山々が真っ白い峰をそびえ立たせている。
このエスファンテ市は平地が多く、穏やかな気候と綺麗な水がある。昨年の干ばつでも侯爵が広い領地から徴収した麦の一部を村々の農民に配給した。
各地で起こっているという農民一揆の噂も身近ではない。
思想家が集会を開くような街でもない。遠い首都で始まろうとしている議会のこともオリビエにとっては他人事だった。


「ああ、すごい!」
何度目かのオリビエのため息にルグラン市長は髭を揺らして苦笑いする。
「ファンテル卿、子どものようですな」
「あ、でも、見たことないですよ、こんな美しい建物があるなんて!やっぱりファリはすごいな」

オリビエは馬車が駆け抜ける町並みに感動していた。道が石畳になったときには驚きと共にその振動に閉口していた。それでもファリに近づくにつれ増えていくアパルトメントや豪華な飾りのついた聖堂、赤く塗られた酒場の扉にも感心する。

通りでは馬車が群を成してすれ違う。そんな光景は見たことがなかった。

そして今、招待されたロスレアン公の屋敷で馬車を降りてオリビエはもう一度。すごい、を口にしたのだ。

「オリビエ、疲れたわ、手を引いてちょうだい」
アンナ夫人の声が響くとルグラン市長は下卑た笑いを浮かべ、肩をすくめる。そそくさとオリビエのそばから離れて馬車から荷物を降ろしている下男に声をかけていた。

侯爵はとそちらを伺えば、婦人のよき夫である侯爵は丁度ロスレアン公の執事の挨拶を受けているところだった。すでにこちらに背を向け、侍従長のビクトールを従えて案内に従って母屋の正面へと歩き出している。通常ならその隣に夫人も寄り添わなくてはならないのでは。婦人もそれに気付いたらしく、立ち止まるとオレンジのドレスを翻す。
が、彼女の視線は高く。
壮麗な母屋の建物を見上げていた。

空にそびえるような尖塔を持つ華やかな様式の古い建物は、白い壁に新緑の蔦をまとい、風に揺れるそれらは建物が息をしているように見せた。昔のバジリカだというそこには聖なる十字が高く掲げられている。さび付いたそれに白い鳩が胸を膨らませ佇む。

次へ♪
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chachaさん♪

時代背景。いやぁ~いろいろと説明しておかないと、今後響いてきちゃうんです(^^)/
さまざまなことが、起こってきますしね♪

パリ。この頃のパリ。
資料をあさったものの、結局かなり妄想が入っています。
雰囲気を伝えられたら、うれしいです~!!

こんにちわ~^^

ゆっくり。読んでおりますです♪
時代背景をしっかりと合間に挟んでくださる、らんららさんの心配りが素敵です。とても自然だから、いつの間にか知識を得ている感じで。
こういう時代、本当にあったんですよね。なんだか私も田舎育ちなもんで、オリビエと一緒におぉ~となっておりますが^^

気がかりなのは、何も知らないキシュ。
でもでもきっと、シューレンさんがちゃんとお相手してくれそうだから大丈夫…だろうけれど。
オリビエを出し惜しみする、ちょっと子供じみた侯爵に、オリビエを狙ってる(?)アンナ夫人。
この二人をきっかけに、何かひと騒動起きないかとドキドキ中です(笑)

また来ます♪^^

松果さん♪

いらっしゃいませ~!!
おお!?完結ですね!?
どきどき!
明日朝、いや、いや、どうしよう~。
朝の短い時間では想ったままの感想を書ききれるかどうか!!
むむ。
時間がたっぷりあるときに読みたいっ♪楽しみにしてます~!!

お久しぶり

ファリの町並み…んふふー素敵素敵、目に浮かぶようだぁ。
子どもみたいに驚いてばかりのオリビエが可愛い♪ でも、アンナ夫人が一緒じゃなにか一波乱ありそう…(それはそれで楽しみだったりする)

ブログ完結したので、しばらく読み専になります。せっせと読んで追いつくからね~
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