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「音の向こうの空」第五話 ⑧

第五話:切り取られた空


その日の午後には、部屋にチェンバロが運び込まれた。ビクトールが侯爵に許可を取ってくれたのだろう。
下男が五人がかりでそっと運び入れたそれは、相変わらず真っ青な空を抱いていた。

オリビエは慈しむように時間をかけて調律して行った。
音に納得し、アネリアへの気持ちを音に昇華させる頃には、メイドが手をつけられることのなかった冷めた茶を温かい夕食に取り替えた。

「少し、聞いていていいかな」
夕食と一緒に運び込まれた客人は、食事用のテーブルにしっかり席を取り、椅子にもたれかかるとくつろいだ。
ロントーニ男爵の存在も、オリビエはただ、小さく一度頷いただけだ。

賑わう街、ファリ。今夜もそこでは自由が歌われ、叫ばれるのだろう。
人々のぎらぎらした粘りつくような情熱が、この国を変えるのかもしれない。あのパレードの高揚した空気。喧騒が力の渦のように集っていた。
オリビエがあれほどの熱意を持って、あのかわいそうな少女に愛情を注ぐことが出来たならきっと何かが違っていただろう。
そんな情熱を、音を奏でること以上に何かに向けられたのなら、オリビエの人生も変わったのかもしれない。

だが、オリビエには音が、楽器が、それを奏でる指が必要だった。
お前の生き方は一つの思想だ。
マルソーの言葉は音をにじませた。そこに存在していい、といわれたのと同じだ。
このままオリビエという音楽家として、生きていいのだといわれた気がした。

静かに緩やかに。音は伸び、空を翔る。そのために描かれた楽器の空は、いつもの蒼を讃えてオリビエの思いを受け止める。

そこでこそ息が出来るのだといわんばかりに、オリビエの指先は鍵盤を走る。踊るように走るように。疾走し続ける。その先が何であろうと音に限りはない。

ふと、オリビエの手を誰かが包んだ。演奏は強引に中断される。
いつの間にか眼を閉じ演奏していたオリビエは気分がついていかず、それと知るまでぼんやりとしていた。
見上げると、侯爵が大きな手でオリビエの手を包み込んでいた。
「もう、休みなさい」

立ち上がると、いつの間にか室内にはメイドや医師、ロントーニ男爵、そしてアンナ夫人の姿もあった。皆、静かにそこにいて、何一つ音を立てなかった。
オリビエはまったく意識していなかった。
侯爵に支えられ、ランプの明かりの中、ベッドに横になると急に疲れを感じた。医師に痛み止めをもらうとすぐに眼を閉じた。

ああ、そういえば、いつの間にか夜になっていたんだ。

オリビエは深く眠る。

次回第六話は7/21公開予定です♪
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松果さん♪

ぬお~ありがとう!!
メルマガ…一つも発行できなかったらどうしようかと(笑
【水凪の国】は文章とか全然だけど(おい…^^;)代わりに読みやすくて楽しいと思うので、お子様にも是非…って宣伝?

さて、マルソーの言葉。ずっとずっと、オリビエの中で深く根付いていきますよ。自分にとっての音楽とは?

創作や芸術、こころに宝物を抱える若者は、きっといずれその壁に突き当たる。自分の中のその宝物と現実との両立に悩んで。
そこ、書きたいところなんです!
お忙しいと思いますが♪また是非、楽しんでくださいね~♪

悲しいジレンマだよ

またご無沙汰してしまいました。
やっと落ち着いてコメントできます。

アネリアとの再会シーンは心が痛かったよ~(泣
そう、音楽にしろ絵にしろ文章にしろ…何らかの芸術に魅入られた人間ってのは、それが自分の一部になってしまっているのだよね。それはもう、「業」のようなもので。
傍から見ていると、「私とどっちが大事なの!」とやるせない思いなんだけど。たとえ家族や恋人でも心の中のその位置には入り込めない。若いアネリアにそれを理解しろってほうが無理だけど…悲しいなあ。
「お前の生き方はひとつの思想」というマルソーの言葉は、なにげないようだけど重い。

さてと読書の秋は読みたいものが多くって、でも生活は忙しいよ~。あ、メルマガ登録したよん。毎週楽しみにしてるからね♪

kazuさん♪

ありがとう!!

アネリア。
悲しい子です。彼女への想いと音楽への想い。

相反することではないはずなのにそうなってしまう。芸術を志す人々が必ず一度は悩む部分だと想います♪

好きなことに没頭してしまう、なのにそれを恋人は嫌がる。オリビエの場合はまだ、他者が要因ですからましですけどね。

そんな葛藤を込めてみました!

さて、奥様。

来ますよ~これからも、もっともっと。パワーアップですから!!
何を言い出すのか、何をやらかすのか、楽しみに(?)していてください!
らんららも楽しみです!!

・・・アネリアさん・・・・・

アネリアさんの、現状に・・・寂しくもあり辛くもあり。
ビクトールさんのいう、アネリアさんに同情していただけ・・・
でも、それでも。オリビエくんはアネリアさんを好きだったはず。
だけどオリビエくんにとって、音楽は息を吸うことと同じくらい必要不可欠のもので。
アネリアさんは、寂しかったんだろうなって。
誰だって、誰かの一番になりたい。
例え、恋敵がひとではなく音楽だとしても。
同じ女性として、アネリアさんの心情に共感します。。。

でも、オリビエくんにとっては、とても辛いことになってしまって。

奥様の気持ち・・・、いやいやビクトールさん。
私もちょっとくみ取れません(笑
背景を考えれば、オリビエ君にとっても理解はできても納得のいくものではないはず。
だーっ奥様ーーーっ、と登場のたびに叫ぶkazu^^;

来週、続き楽しみにしてます♪
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