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「音の向こうの空」第八話 ③

第八話:葦のように真っ直ぐ



「すみません、夕食は外で」
「は、散々心配させておいて、何をしていたのです?男爵と一緒でしたね。あの男と仲良くなったのですか?」
つかつかと近寄るズレンは普段より大きく見える。いや自分が髪を拭きながらで、うつむいた状態だからか。目線がズレンの首元くらいだ。
「!」
不意に腹に拳を受け、オリビエは息がつまる。
「オリビエ様、身勝手な行動は控えていただかないと。困ります」
避ける間もない二発目は深く、かがんだところで胸倉をつかまれる。ぬれた髪が頬に当たった。
オリビエの首に腕を回し強引に引き寄せると、ズレンは囁いた。

「キシュに、会ったのでしょう?」
「……」
「まあ、いいでしょう。オリビエ様、今日の市役所の騒ぎをご存知ですね?いいタイミングでキシュが現れた、そう思いませんか」
「え?」
「デマを流し、市民を扇動したものがいます。噂が真実でないと知った市民はすぐに引き上げたが、その間に侯爵様の大事な楽士さまは行方不明。後数時間、姿を現さなければ、私は兵を酒場に差し向けるところだった」
ことの大きさに唖然とし。
「オリビエ様。貴方が人質になった場合。侯爵の命で貴方に怪我の一つも許されていない私はどんな処罰を受けることやら。女にそそのかされてのこのこついていくなど。あきれてものも言えません」
人質?
「理由、を。何故僕がそんなことに巻き込まれているのか、何も話してくれないじゃないか!」
キシュが、何か企んでいたというのか?あの笑みの奥にそんなものはない、なかったと。信じたい。
葦のように真っ直ぐ。
男爵の言葉が殴られた胃のあたりでうずく。

「聞けば、今後一切勝手な行動をせず、キシュにも会わず。大人しくかごの鳥でいてもらえますか?」

オリビエは顔を両手で覆った。
何を、どう信じろと。

「二度と私に逆らわず、キシュとも縁を切り、これまでどおり従順な楽士さまでいるのなら、友達の演技を続けてやってもいいんですよ」
「ズレン!」
オリビエはつかみかかった。
それすらあっさり交わすとズレンはオリビエの腕をひねり上げる。
「……ズレン」締められれば痛みに声がかすれる。
「オリビエ、自分がいかに力ないか。思い知ったほうがいい。一人で生きていけもしないくせに。確かにお前の音楽は人の心を打つだろう。だが、それだけのことだ。お前は思想も力も、人の話を聞く耳も持たず、まともな判断もくだせない子ども。自分の理解が及ばないことに腹を立てて、暴れているに過ぎない。こうしてからかって苛めるのが楽しくて仕方ないですよ」
「く……」
「どうしました?暴れないのですか」
ひねられた腕がミシと軋んだ気がした。
「いた…」
腕。
ぞくと恐怖心が走る。折られたら楽器が弾けない。
この期に及んでもそんなことしか浮かばずしかもそれが圧倒的な恐怖心を沸き起こす、そんなふうになったのは、そう育てられたからか。男爵の顔が浮かんだ。
悔しさに眼が熱く感じる。

「っと、腕を折るのはまずいな」まるで今気付いたかのようにつぶやいて、ズレンはオリビエを解放する。

「もう遅い、子どもは早く寝るんですね。それとも添い寝してもらわなきゃ眠れませんか?」
痺れた腕をさすりながら、オリビエは二階の自室に駆け上がった。
悔しさを音にしたくて、もぐりこんだ布団の中で空しく指先だけが叫んでいた。
まさしく、ズレンの言うとおりだから。

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