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「音の向こうの空」第八話 ⑧

第八話:葦のように真っ直ぐ



深く椅子にもたれたまま、ズレンは大きくため息を吐き出した。
懐かしすぎる。
幼い頃よく遊んだ酒場。キシュの父親が経営する【子羊亭】に座った。そろそろ夕刻で、灯が沈むという時刻なのに、この店は静かだった。
密かに待機させている数名の衛兵たちも、夕餉の時刻のはずなのに静まり返ったこの下町に少々拍子抜けしていることだろう。
何か、あったのか、とズレンは思考をめぐらせる。
夕刻になっても、アンナ夫人とオリビエ、ビクトールは戻ってこない。行く先を誰も知らなかったために、こうしてズレンは心当たりの一つである店に来ている。
「あ」
数回目にズレンが勝手にあけたワインをグラスに注いだ時、店の奥からキシュが顔を出した。
「びっくりした!何?珍しいね」
少女が客席に近づくと、後ろからいつもの四足の足音も続く。
「今日はオリビエと一緒じゃないのか」
ズレンの行儀悪くテーブルに乗る足の向こうで、キシュは隠し事をしていますといわんばかりに両手を後ろに回した。
「あのバカ、お前にそそのかされればどこまでも着いていきそうだからな」
「そんなことないよ。そ、それに、オリビエちゃんとは何の関係もないもの」
「関係?」
「あ、友達でもないってこと」
「……家の前で待つくせにか?」
「それはパンのためだよ」

ズレンは黙って立ち上がる。
「今日は休業か?お前の親父はどうした」
「知らない。遊びにでも行ってるんじゃないの?」
「物騒なもの、持ってか」
物騒なのはズレンも同じ。腰のサーベルがチャキとテーブルの縁に当たった。
そこから真っ直ぐ見える厨房の奥、壁にかかっているはずの大振りの肉用ナイフがすすけた壁にシルエットだけ残してなくなっていた。
「何のことかわかんないよ」
ズレンはおもむろに立ち上がる。何を感じ取るのか、ランドンがワンワンと吼えた。
「嘘はつくな」
「う、嘘なんて」
キシュが慌てて逃げ出そうとした瞬間。背後から抱きしめられた。
背の高い、力の強い腕。
それだけで指先一つ動かせなくなるほどの動揺。
間違いなく青年は、少女の幼い頃からの英雄。夢見ても高嶺の花の凛々しい存在だった。
「お前はいつも生意気で。怒鳴っても殴っても、言うことなど聞かない。そうだろう?」
「な、殴るの?失礼しちゃう、女性の扱い方を知らないんだから…」
「女として扱って欲しいのか?」
「せ、セイリア姉さんはっあんたのこと…」
「関係ない。俺は昔からお前のことが気になってた」
「嘘ばっかり。そんなの、嘘、だってあんなに仲が良かった」
第一、ズレンがエコール・ミリテールに通いだした頃、キシュはまだ十歳に満たなかった。ズレンにとってはただの子どもだったろう。
「本当のことを知りたいか?ならば、お前も本当のことを話すんだな」
強引な腕。大きな手に全てを包まれ、身動きの出来ないまま唇をふさがれる。経験の浅い少女には、痺れるようなそれは息すらまともにできはしない。
「嘘…なんで」
「お前が嘘をつくからだろ」
まだ幼い身体に触れるズレンの手が容赦なくキシュの想いを捕まえる。

次回、第九話は8月11日公開予定♪
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ゆつきさん~♪

いらっしゃいませ!
すっかり音楽にはまり、ただ今オペラのお勉強中だったりします(←知識がちっとも追いついていないので常に勉強中…笑)

オリビエが大人しいので、周囲が行動力を発揮しています。男爵…、うむ。そうか、そこがツボなのね。ここから皆活躍ですよ♪
壮大…嬉しい…でも、まだまだ!!
欠片が欲しいのはらんららも同じですっ!!

最近の野いちごはすっかりご無沙汰ですが、皆元気かな~?

第8話まできましたです

それでも男爵に惹かれるわたしはヤバイでしょうか(笑)

壮大です~。
過渡期の時代を生きる彼らに、過去の真実まで絡んできました。らんららさんの頭の中身がふしぎ!
そして、欲しい! その欠片が……(笑)

アンナ夫人のドレスがきれいなんだろうなー、と妄想しています。脱ぎがちですが(^_^)
また来るです。
贅沢な日曜になりました♪

kazuさん♪

うひゃひゃ(←?)
ズレンはそんな奴です~♪
一応イケメン設定なので、読んでいただく女性にはドキドキしていただかなくては♪
オリビエはまさにそれどころじゃない(笑

歴史が動き出しています。
この町は、フランスの東の端っこの設定なのですが、ここにも新聞は届きます。
バスチーユ陥落にはエリーやマルソーも活躍したのだけど、そこは描けなくて…ごめん、ってかんじ。全部描いていたらとてつもないことになるから…。

続きはオリビエちゃんの危機からっ♪
ようし、盛り上げていきますよ~♪v-392

なっなに~っ?!

ちょっ、ちょっとまてズレンくん!!
やめてくれ~
や~め~て~v-12
でも、きゃ~っていいながら、指の隙間からこっそり伺っている感じのkazu^^;

急転直下。オリビエくんの心の中は・・・頭の中は嵐の中のようですね。

自分の出自の秘密。
両親の秘密。
ロントーニ男爵の秘密。

ズレンくんの態度。
キシュちゃんとの想い。

ズレンくんがオリビエくんにいうことも分かるけれど。
知ろうとしなかったのではなく、知ることを許されなかったオリビエ君に、その言葉はきつい。。
それほど、事態は危険になっているのですね。

バスチーユの陥落。

革命の波が、どんどん広がっていくのですね。。。

来週、楽しみに待ってます^^
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