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片翼のブランカ 13

リノリアから北にいくつか都市を越えた町。
そこに、シェインはいた。
荒れた、辺境の町。家々はどれも古びた焼いた土のレンガでできている。
小さく、ごちゃごちゃと、ひしめいている。
人の姿はまれで、これが中層かと、シェインはつばを吐く。
傍らに、ラタが歩く。
「神殿が、ちゃんとしないからだ。白席老が、ご健在ならこんな風には、ならないものを」
リアータ神王。
かなり、悪いと聞いた。
だから、ルーノなんかが幅を利かせる。
まあ、知ったこっちゃない。俺は、下層民なんだ。

目指す場所は、すぐ先に見えていた。
辺境の町にしては、やけに立派な。
下層から運んだのだろう、黒いつやのある石で作られたその神殿は、精緻な彫刻を施した柱を何本も回りに据え、その円形の門の向こうに、主殿が見える。
シェインは、ラタの首をなでる。
「行こうか」
またがると、ふわりと高く飛ぶ。
神殿の門の上まで来ると、懐からクリスタルを一つ。
『闇』
ふわりと黒い霧に変ったその空間に、ラタとともに入っていく。
シェインとラタの姿が霧の向こうに消える。
後には、ただ、白い空。

神殿の結界を潜り抜けたシェインは、神殿の屋根の突き出た尖塔に立っていた。
ラタは、シェインの足元くらいにある屋根にたたずむ。
「まったく、デデムもろくなこと依頼しないな」

 「片翼のブランカ」第一話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-51.html

 「片翼のブランカ」前回のお話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-74.html





そっと独り言を言う。
神殿の供えに使われる、御灰(みかい)。それは、神聖な煉り香に聖炎をともした後に残る、灰のことだが。貴重品で、神殿はそれを守人に売る。
灰は各家の守りとされる。
聖炎は昼間にともされ、夜は消される。
だから、灰を盗むには、昼間しかない。
夜になれば、灰は回収され、さらに厳重な言霊によって守られた櫃に入れられてしまう。
言霊は、聖職者でなくなったシェインには、解くことができない。
せいぜい、結界をクリスタルで破る程度だ。

昼の祈りは、終わったはずだ。
そろそろ、聖壇の前は、誰も居なくなる。
塔から張り出した排水用の彫像に、細いロープをくくると、天窓のステンドグラスに、赤いクリスタルをあてる。
『烈』
クリスタルは炎の小さな塊となり、それでステンドグラスの縁をなぞった。色のガラスは、固めていた縁の金属が溶け、ぐらりと外れる。左手でそれをはがし取る。人、一人通れる位の穴が開いた。
すいとロープを伝い降りていく。

誰も、居ない。

閉じられた左右の大きな石の扉は硬く閉ざされ、ただ、天窓からの色とりどりの灯りと、聖壇に灯された聖炎の揺らめく灯りだけが、静かなそこを照らす。
シェインは聖壇の前に、そっと、ひざをついた。
そのまま、しばし、祈る。
これは、神王への敬意。
鉄色の髪が、炎の灯りに透けて、赤く燃えて見える。小さく、唱える聖言は風もないのに炎をゆらゆらと揺らす。香の白い煙が、薄暗い中にゆっくりと漂い、シェインを中心とした渦の形になる。祈る彼の言葉の力がそうさせる。
この世界、この神殿、神官という存在、契約、全てが嫌いだが、神王だけは違った。
幼い頃から、世話になった。シェインは、神王の白髪の優しい顔を思い出していた。

「身を落とした今でも、祈りは忘れぬようだな」
「!」
気付けなかった。
背後に、背の高い神官。
『動くな』
『うるさい』
同時に、言葉がぶつかる。
シェインは、聖壇の脇に飛びのいた。
「ふん。憎らしいな」
ルーノだった。額の石が、ぎらリと光る。
「…デデムが、売ったか」
忌々しげに、シェインがにらみつけた。
「ブランカを連れているとなるとな、さすがにデデムも怯えてな」
にやりと、ルーノは笑う。
「ココを、返してもらいたいのだ。そして、お前は、拘束する」
「知らん。あれは勝手に、そばにいるだけだ」
「ずいぶん、お前になついていると聞いたぞ。あのブランカは厄介だ。誰が教えたか、痛いとわめいては守人を脅す」
「お前だ、ばか。」ココはルーノの反応で覚えたんだ。
「・・シェイン、お前はあれの意味が分かっていない。ココは、大人にするわけにはいかない」
言うなり、ルーノは両手に持った二つのクリスタルをシェインの足元に投げつけた。
『破』
『無』
またも同時に声が響く。
クリスタルは石の床に落ちると同時に光って壊れ、その力はそのまま石の床を砕いた。ドンという音とともに、瞬時に半径4メートルほどが崩れる。
かろうじて、シェインの言葉で足元のみ、石で組まれた床が残っている。頬に、一筋、割れた石床のかけらが切り傷を作った。
「お前、ばかか!聖壇でやることかよ!」
シェインのその声に、空気がぴりりと緊張する。
「私を馬鹿にするものは許さん!」
ルーノの声にも空は揺れる。聖壇の備えの花が花弁を散らした。
「お前、守人だろう!」
制御せずに言葉を放ち、生命ある花を散らすなど!
「相変わらず、甘いな。私に逆らうものは、どのような目にあっても文句は言えない。契約に背くのだからな!」
その声に、花は完全に散り散りになった。
シェインも、胸の前で交差させた腕に、いくらかの傷を負う。
「シェイン、お前が、私に逆らうのは、契約に反している」

その、ゆっくりした言葉はぞくりと、シェインの心臓をつかむ。
第二の契約。
力あるものに、逆らうことは許されない。
第一の契約。
言葉と契約に、永遠に縛られる。

シェインは小さく唱えた。
「力とはなんだ、力があるとは!」
その言葉は、ルーノには聞こえなかった。
シェインが、苦しげに胸を押さえるのを、楽しげに見つめている。
「私が、お前の命を奪うことはできない。だが、お前はお前の行動で、自ら命を失うのだ」
「…」
シェインは、膝をついた。
痛む心臓を、静まらない鼓動を、落ち着かせようと目をつぶる。
契約の縛りが、心を弱らせる前に。
「力、とは、身分ではない」
「力とは、内なるもののこと」
小さく、小さくつぶやく。
頬に、汗が伝った。
シェインは震えが止まったことに気付き、一つ、息を吐いた。

「?どうした。あきらめたか」
いつの間にか目の前に立っていたルーノが、シェインの肩を蹴りつける。
シェインはそれを、受け止めた。
ぐりぐりと、つま先をシェインの首にあてがう。靴の先端が抑える手に、首に、傷を作る。

「ん?どうした、シェイン。ココをわたせ。あれはどこに居る」
「ココがなんなのか。俺は知らない。だが、ルーノ、お前などに、渡さない」
鉄色の深い瞳に睨まれて、ルーノは苦々しく口をゆがめる。

「その減らず口を、つぶしてくれようか?」
上げた足で、シェインの顔を蹴ろうとする。
その瞬間、シェインは肩からルーノに突っ込んだ。
後ろに転ぶ神官。
その首に、剣を突きつけた。馬乗りになる。

「ばーか。俺は、契約などに縛られない。自由だ」
「まさか。そんなはずはない!」
軽く息を切らしながらも、にやりと笑って見下ろすシェイン。
「契約の意味が、分かってねえんだ。あんたたちはさ」
『どけ!』
ルーノの言葉にシェインは手のひらを前に、制する。
『いやだね』
にやりとする。
ルーノの顔色が変わった。
「どうした?自分の言葉が一番強いと、そう思っていたか?なんたって、紫席だからな。でもな。なあ、すでに、俺のほうが、力があるってことに、ならないか?・・いいのか?力あるものに、逆らっちゃいけないんだろ?」

ルーノの顔が青ざめる。
「力、契約、言葉。意味も分からずに都合よくつかうからだ」
「・・。」
「言えよ。ココが大人になっちゃいけないって、どういうことだ」
「言うか、ばか」

ルーノは顔を背けた。
剣を当てるシェインの手をつかんで、押し返そうとする。
にらみ合う。
「むかつくな、お前」シェインが口を開いた。
「ふん。あんな出来損ないは、エノーリアの綿ネズミにしてしまえばいいのだ」
「…そりゃ、ずいぶん頭のいいネズミになるだろうな」
馬乗りの状態で、シェインは白い顔の神官をにらみつけた。
数発、殴る。

「…兄上」
シェインの手が止まった。
「…今更、そんな言葉、使うなばか」

立ち上がって、ルーノの腹を蹴ると、紫席の神官は気を失った。何年ぶりかに見る、彼は、当然だが大人びている。もう、二十三になったか。紫席を預かるには、まだ、若いと思うが。
シェインはルーノの懐から、クリスタルをいくつか、取り出す。
「さすが、いろいろ持ってるな。いただいてくぜ、俺は、盗賊なんだ」
二つ年下の、昔、弟であったそれに、ウインクを一つ送る。
シェインは、軽く首を回すと、周りを囲む神兵を眺めた。

「力あるものに、逆らうな。命が惜しければな」
誰も、動けない。
「ったく、デデムの奴」
シェインは小さくラタを呼んだ。
「せっかく、盗賊らしく密かに忍び込んでやったのに。帰りは正面からか」
ゆうゆうと、御灰も奪い、聖炎で煙草に火をつけると、立ち去った。
「力があれば、なんでもできてしまう。そんな世界は、おかしいだろうに…」
背後で、身動きも出来ずに見送る十数名の神兵に小さく言った。

 「片翼のブランカ」続きはこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-76.html


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theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

chachaさん

ありがとうございます!
最後まで楽しんでください!!
今、投稿しようと、推敲してます。
なかなか進まないですが…。
ここ変、とかありましたら、教えていただけると嬉しいです!

本当に楽しいですね!
今日はひとまずここまで読み進めました☆
シェインもカータも、もちろんココも本当に皆大好きです^^
ルーノがシェインの弟だったとは・・・!!驚きです。

明日も楽しく続きを読もうと思います!
でわ、ポチッと押していきますね^^

シェ・・・

シェイン!!!!ちょっとおちゃめなところも素敵☆☆
おっと。続き続き♪♪

そうでしょう(^^;)

シェイン、らんららの憧れです。
理想です。
見ていて下さい!(?)

シェインかっこいい(>∀<)!
ココはやっぱりなんか特別なんですね
そのせいでこれからも大変な事になりそう!
期待してますよ☆
そしてもう一度…
シェインかっこいい!!
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