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「音の向こうの空」第九話 ①

第九話:女優、そして下心


頭の中に音叉が一つ、らの音を響き渡らせている。
小さく頭を振るとそれが痛みなのだと理解できた。かすかに鈍い頭痛を残したのはあの、紅茶に入っていた薬だろう。
目を開けると、室内はランプが灯されすでに夜なのだと分かる。

オリビエは天蓋のついた立派なベッドに横たわっていた。
起き上がってみる。
狭い正方形の部屋だ。オリビエは何かの気配にぎょっと表情を強張らせ、その原因となるものをじっと見つめた。一つきりの窓の反対側。ランプの揺れる炎に照らし出された、巨大な肖像画だった。
「母さん……だ」
立ち上がり、靴を探し当てると絵の前に立つ。
ほぼ等身大の肖像画だ。美しく花を抱えて立つマリアは穏やかに微笑んでいた。その笑みを誰に向けていたのだろう。
嫌なことを考えてオリビエはまた、小さく頭を振る。
自分と、父ラストンにだと思いたいが。

狭い部屋だった。ベッドが一つ、それ以外は何も置かれていない。ほかに見るものもないので、オリビエは窓から外をのぞいてみた。手のひらくらいの四角を作る格子からのぞく景色は真っ暗だ。遠く、色のない地平線と林のシルエットをいくつか越えた向こうに街明かりが見えた。額を擦り付けるようにして目を凝らし、窓のすぐ下を見ようとする。どうやらここは高い場所だ。
三階くらいはありそうな。
何か分からなかったが、部屋のランプを消し、もう一度眺めると、庭らしきものと古びた塀、さほど立派でない門が分かる。ランプか、松明か何かを持った人が大勢行ったり来たりしている。よくみると、何かを運びこんでいるようだ。

遠く見える街明かりはエスファンテの中心街に思えた。星の位置と、街の見える方角。計算すればここは市から北東へ進んだ辺り、見えないがこの背後には山岳地帯へと続く丘陵地があるはずだ。
扉はやはり鍵がかかっていた。

この狭い部屋で、男爵が何をどうしたいのか分からないが、ただじっとしているわけには行かない。何かをする気なのだ、侯爵のいない間に革命軍を使って内戦でも起こすのかもしれない。そうなれば、今、手薄な侯爵家は、この町は。
ファリのようになってしまうだろう。
バスチーユを陥落させたファリの市民は、何を得ただろう。【エスカル】で叫ばれていた、自由か。エリーやマルソー。彼らはどうしているだろう。
ズレン、今頃は僕のことを探して。

ベッドに腰掛けていたオリビエは顔を上げた。
ズレンは以前、オリビエが抜け出したときキシュのいる界隈に兵を向けようとした。今回も同じことをしたら。
そこには、もしかしたら革命軍が潜んでいるのかもしれない。
革命軍というものがどういう人たちで、どんな様子なのか想像もできないが。オリビエには常に整然とし侯爵家や大通りを行進する衛兵たちのほうが、はるかに勝っているように思えた。
銃剣を肩にかけ、腰にサーベルとダガー。侯爵家の武器庫には移動式の砲台もあるという。見たことはないが、それはきっと町を破壊できてしまうほどだ。

革命軍が叶うはずもない。
ズレンはキシュにそそのかされたとでも勘違いするかもしれない。アンナ夫人とビクトールが男爵の仕業だと伝えてくれてあればいいが。
もし、僕が原因で争いが始まるなら、それは止めなくては。

オリビエは何度も部屋の中を行ったり来たりしていた。


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