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「音の向こうの空」第九話 ②

第九話:女優、そして下心



ガチャ。と鍵の開く音。
男爵ではなかった。
片手にランプ、片手に食事らしきものを持った男。たしか男爵家にいたリトーと呼ばれた侍従だ。
それと理解した瞬間、オリビエは飛び掛り男を突き飛ばした。両手をふさがれている男が派手な音を立ててスープの皿をひっくり返すのを背後に感じながら、オリビエは部屋の外に飛び出した。
部屋からもれるかすかな明かりを頼りに階段を駆け下りる。塔の中なのだ、階段は狭く急な勾配のままらせん状に続く。明かりが届かなくなると壁の反対側に手すりがあるのかも分からない。オリビエはとにかく壁に手をついて、焦燥感をかみ殺しながら慎重に階段を降りた。
「待て!」
上から声が聞こえる。
見上げれば螺旋を張り付かせた上階でランプの明かりがゆらゆらと激しく揺れる。近づく足音。壁についた右手を離さないようにしながら、オリビエは走る。
が、ランプの明かりの残像はますます視界を遮り、階段を駆け下りようとした瞬間足を踏み外した。
「っつ……」
数段滑り落ちた。途中で止まったものの、下が階段であることくらいしかわからない。うつ伏せに座り込んだまま左手を伸ばしてみるが壁は遠いらしい。右手を伸ばしてみる。階段に手すりが着いていることを祈るが。伸ばした手に触れるものはない。
と、上からランプと足音が近づき、かすかな明かりでオリビエが起き上がったときには、リトーの腕がしっかりとオリビエの腕をつかんでいた。

「立ちなさい」
「…放せ」
リトーが片手をランプでふさがれていることに気付いて暴れようとした時。男はランプを振りかざした。
重い衝撃を頭に受けた。

目を開けると、再び最初のベッドの上だ。ランプは傍らのテーブルに置かれている。身動きしようとしたが動けない。
「二度としないでください。次は容赦しませんよ」
リトーはオリビエの上に乗り、オリビエの両手首を後ろ手に縛り上げていた。
炎の明かりでリトーの表情が不気味に揺れる。
よくよく見ればオリビエとそれほど違わない年齢。まだ二十歳そこそこというところ。深い色の髪は真っ直ぐで肩の少し上まで伸ばされている。
オリビエの上に乗ったまま、じっと見つめていた。
身じろぎしようとすると頭がずきりと痛んだ。オリビエは目の前に置かれた凶器のランプを恨めしそうに睨んだ。
「お前、…それほど似ていないのに」
リトーはオリビエが睨み返すとおもむろにオリビエの前髪をつかんだ。
「お前が男爵様の血を引くなど、信じられない」
「そんなの、僕だって同じだ。たとえつながっていても切ってしまいたいね」
リトーの背後にうっすらとマリアの肖像画が見える。
「あの男爵の血が流れているなんてぞっとする」
肖像画の母の笑みに向かって吐き出した。オリビエの言葉にリトーは眉を吊り上げた。
それは黙って殴りつけると言う行為に及んで、身動きの取れないオリビエはただ、耐えるしかない。

誰かが、飛び込んできた。
それは重いリトーを吹き飛ばしたように見えた。
「何をしている!ばかもの!」
男爵だった。侍従を引きずってオリビエから引き離すと、鈍い音が響く。
かすかに、リトーのお許しください、と言う声が聞こえた。

執拗に叩かれている音に、オリビエは耐えられなくなる。
「止めてください!男爵、そんなに」
男爵は叫び声にオリビエの存在を思い出した。立ち上がると目の前まで来る。
縛られている両手を解いてもらえるかとオリビエは期待し、訴えるように見上げたが。ロントーニ男爵はリトーのものだろうか、かすかな血痕を胸元の白いリボンに散らせたままオリビエを抱き寄せた。
「あ、あの」

男爵は改めてオリビエの顔を見つめ、先ほど殴られて切れた唇に親指を這わせた。
その男爵の目つきに嫌なものを感じてオリビエは黙る。
脳裏に、ズレンの言葉がよみがえる。

あの年で結婚もしないし、女性の影もない、男色家だって噂もある。間近にある男爵の顔。目をそらすと、かすかに息がかかったような気配を感じてオリビエは震えた。

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