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「音の向こうの空」第十話 ④

第十話:革命、夜明けのエスファンテ



その日の正午過ぎ。数名のメイドが侯爵家の通用門から外に出た。
門番の男は名残惜しそうに、見知ったメイドたちにさよならを告げていた。
キシュは一人その集団から離れて立ち、胸にいっぱい抱えたパンをただ抱きしめていた。
振り返るとズレンの視線とぶつかる。
腕を組んでじっと見ている。
「あの、あのさ、オリビエちゃんは」
「お前は帰れ。パーシーが心配しているだろ?」
「あの、でもね!オリビエちゃんに話を」
「あんなところを見せておいてか?」
キシュは黙った。
あの時のオリビエの悲しそうな顔が今も浮かぶ。声をかけたものの、振り返りはしなかった。
「会ってなにを言うつもりなんだ?お前もあいつの気持ちは知っていただろう?」
キシュは、唇を噛んでうつむいていたが。顔を上げた。
「オリビエちゃんを自由にしてあげたい。それはね、どんな方法でもいい、革命軍に入るのでも、侯爵様から逃げ出すのでもなんでもいいの!とにかく自由にしてあげたい」
ズレンは小さく肩をすくめた。
「それだけは無理だな。侯爵様がお許しにならない」
「どうして?だって、皆に選べって言ったじゃない!ズレンが中庭で言ったでしょ?辞めたいものは申し出ればいいって、オリビエちゃんだって自由になれるじゃない!」
門番の男が、困ったように二人を見ている。
ズレンはとん、とキシュの肩を押し。少女はよろけて二歩、門の外へ出る。
「ちょっと…」
ズレンの合図で、衛兵がガラガラと音を立て通用門の扉を閉めた。
「ねえ、ズレン!どうして!」
少女の声は幾重にも閉じられた鉄の扉の向こうに消えた。

「あの……」
門番の男が口を挟もうとする。
ズレンは目を細め、少しだけ笑った。
「侯爵様のご命令なのだ。オリビエだけは自由にするな、とね。その理由が分かれば、いくらでも口実をつけて追い出してやるものを」




オリビエはアンナ夫人の足音で目を覚ました。
いつものかけてくる足音。扉の前で深呼吸を二回。

オリビエはそのタイミングを数えながらも、枕に深くうずめた顔を起こそうとはしなかった。医師が冷やすべきだと言い、ベッドからはみ出した片足は、台の上に置かれた桶に突っ込んでいる。腹に残された男爵の暴力の痕を見て、ビクトールも医師も厳しい顔をしていた。よく、逃げてこられました、と低く力強い口調で言われ、オリビエはリトーのことを思い出す。
人生をかけてマリアの偽者であろうとする。
その強さを思い出せば、あれくらいのことで水を含んだ真綿のようにげんなりしていた自分が情けなく思えた。
最初から、キシュとは友達でいようと決心したではないか。ズレンに対する彼女の想いも想像できていたではないか。
何より、気まぐれな野良猫は、鎖につながれた飼い犬など相手にしない。自分の手には負えないのだと、分かっていたはずだ。

明日、侯爵様が戻れば、また、以前と同じ日々に戻る。
侯爵が戻れば。以前の穏やかで淋しい日常に戻るのだ。

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