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「音の向こうの空」第十一話 ①

エスファンテの街は生まれ変わろうとしていた。市民が侯爵家を囲む中、キシュの姿を見てオリビエは逃げ出す。そう、逃げ出したのだ…
第十一話:飼い犬、つながれた鎖の先に


オリビエはただ。音楽を奏でたかった。
飼い犬扱いは、分かっていた。
可愛がろうとでも言うキシュの態度も面白かった。
けれど。

振り払おうとしてもあの時のキシュとズレンを思い出す。脳裏から消えて欲しくて何度も頭を振った。

情けない。
ズレンのような機知も、キシュたちのような逞しさも持ち合わせない自分がひどく情けなくて、エリーに呆れられたあの瞬間を思い出していた。【エスカル】でマルソーに怒鳴られた言葉も。自分の足で立つことすら忘れたというのか。そう、マルソーが怒鳴り。それでもオリビエの音楽がオリビエの思想であり生き方であると納得してくれた。

僕は僕の音楽で誰かを幸せにしたい。音楽を奏で続けたい。
それは、キシュのいるあの場所でも同じだろうか。
彼らは【エスカル】に集う思想家たちと同じに見えた。思想のない人間を見下していた。オリビエの曲に聞き入っていたものの、音がなくなればまた自由と平等を高らかに宣言するのだ。

そのためなら多少の犠牲など平気なのだ。だから、あんな殺し合いまでする。僕の両親も殺されたのだ。目的が崇高であると思い込んでいるからこそ、暴動など起こせるのだ。
崇高かどうかは、ズレンが見切っているように今後の彼らの能力にかかっている。
自由だから幸せになれるなど、絵空事。
彼らの目的に賛同すれば何の不満もなく生きていけるのか。
違うだろう。

僕は。
楽器を弾ければそれでいいんだ。
それがどこだろうと、誰の前だろうと。
可能であれば、その誰かを僕の曲で幸せにしたい。

ただ、それだけだ。

キシュが僕に望む自由は、何かが違っている。

彼女の心を奪えないから、僕は拗ねているのかもしれない。
情けない嫉妬心に駆られ、自己嫌悪に陥っているだけ。

それでも。

オリビエは音楽堂に入ると、動くもののない室内を一人ずるずると歩いた。
鍵盤に触れ、弦を張り音を響かせる。
調律の間も心は急いて、オリビエは楽器にしがみつくように音を奏で始める。
描かれた空に雲が浮かぶ。
侯爵は今どんな空を見ているのだろう。エスファンテに向かっているという。ファリを目の当たりにし、議会で疲れ果てた侯爵が、この状況にどんなことをするのだろう。
どう収拾をつけるのだろう。
幾度も見た少しだけ疲れた侯爵の顔を思い出す。
けっして、愚痴などこぼす人ではない。ただ黙って音楽を聴き、じっとしている。
その姿を思い浮かべオリビエは遠く離れた主人に音を届けたいと願う。
すくなくとも、侯爵だけは心からオリビエの音楽を楽しんでくれる人だ。


騒がしい声に気付いたのは、数人の衛兵が音楽堂の扉を開いたときだった。
濃紺の上着に赤いスカーフをつける彼らはオリビエを見つけるなり真っ直ぐに向かってくる。
「あの?」
立ち上がったときには囲まれ、背後から肩を押さえられた。
「なにを?」
振り払おうとする腕が他の一人につかまれ、「ご同行ください」と低く言った年長の衛兵の指示でオリビエは引きずられるように連れて行かれる。
楽器から、引き離される。
「何ですか?あの、どこへ……」
どんと背中を押され、勢いで体重を乗せた足の痛みに言葉が途切れる。
引きずるように連れて行く彼らの歩調は容赦なく、何度も転びそうになりながら、オリビエは衛兵の集る中庭につれてこられた。
一段高い花壇の縁にズレンが腰掛けている。傍らに立てたサーベルにもたれるようにして引きずられてきたオリビエを眺めている。
「ズレン、なんだよ!これ、は」
「オリビエ、喜べ。お前を自由にする理由が出来た」


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