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片翼のブランカ 15

<<「守りきれるだろうか…」ココの冒険、第15話です!>>

前髪が、誰かにつかみ上げられて、カータは目を覚ました。
目の前にいるのは、紫席の神官だ。
あの、黒い髪の緑席の神官ではない。
では、ここはどこ?
ルーノの視線と、あった。
「シェインの趣味は分からんな」
「失礼ね。…これが、神官のやること?盗賊だってもうちょっと丁寧に扱うわよ」
「口の減らない女だ。下層民は守人の恥だ。動物以下だ」
にやりと笑うルーノを、カータは横たわったまま、にらんだ。
神官に、その気がないのだろう、今は恐ろしさが感じられない。
震えずにすんでいる。
ルーノは、ふんと鼻で笑って、カータに背を向けた。
室内をすばやく見回した。

高い豪奢な天蓋のついた、寝所。背に当たる布団の柔らかさが、それが神殿内であることを思わせた。下層にはこんなものはない。
そして、中層でも、こんな天井の高い建物は、滅多にない。
大きな、神殿だ。
紫席のルーノがいるのだから、フロマルクスなのかもしれない。
初めて、見た。
白い壁。大理石のそれは、部屋の角に当たる部分に天上から床まで、美しい彫像が彫られている。ブランカをあらわしたのだろうか、翼の有る子供の像が、何人も、天井に向かって飛び立つようなしぐさで描かれている。
床には黒大理石と、赤、緑。石を薄く削ってタイル状にし、組み合わされたモザイクが、美しい模様を作り出している。
毛皮の敷物が、寝所の足元にあるのがちらりと見える。
ルーノは、窓際に立って、外を見ている。
夜なのだろうか、暗い窓の外に向かって、彼の表情は見えない。
カータはそっと、起き上がった。
自分の、皮の服に、なんと似合わない、部屋だろう。
彼も、シェインもこういう部屋で生活していたのかな。とても、遠い世界だ。
ゆらゆらゆれるランプの明かりと、天井から下げられた圧迫感を感じるほどの金のシャンデリアに灯された炎が、カータの足元に醜い影を作っていた。
「まだ、所有されていなかったとはな」
「!」

気付くと、目の前に、ルーノが立っていた。

 「片翼のブランカ」第一話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-51.html

 「片翼のブランカ」前回のお話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-76.html



寝台に腰をかけていたカータは、動けず、上目遣いで見上げる。
ルーノの手が、あごをとる。
「!何すんのよ。放しなさいよ!」
声は威勢がよくても、動けない。
逆らうことを、その恐怖を、体が覚えているのか。震える。
「お前を、私が所有したら、シェインはどんな顔をするのだろうな」
「!いやよ、私はシェインと契約するんだから!」
ルーノは白い顔に、冷たい笑みを貼り付けた。
「早い者勝ちだろう?のんびりしているあいつが悪い」
「それが神官のやることなの?シェインは契約の、大切さをちゃんと知ってるから、だから、…」
ルーノに睨まれて、言葉が途切れる。
私が、やんわりと、拒否してきた。それは、それは、私なんかと契約してしまっていいのか、自信がなかった。
高貴な生まれ、類まれな才能、たやすく手に入る地位、それらを、すべてシェインは捨ててしまった。私なんかのために、そんな、大それたことをする彼が、不思議だった。
シェインは、互いに所有しあうことを望んだ。エノーリアを動かすほどの力ある人を、私が所有するなど、そんなこと、出来ない気がした。怖かった。
だから、ずっと、目をそらして、あいまいなままで…。
彼は、いつでも、待っていてくれたのに。私が、…嫌がって。

「力あるものが所有する」
そのルーノの言葉には、力がこもっていた。
カータは、言葉に縛られたことに気付いた。
震えることすら、できない。鼓動だけが、やけに大きく耳に響いた。
逆らえ、ない。意識のどこかで、神官を恐れている。
説明できない恐怖が、体を縛る。考えることを、拒絶する。
逆らえば、死。
神官の、声がかすかに聞こえる。カータの目の前で、契約の文言を唱えている。
「…汝、我に従い、反するは生を以ってあがなう。我、汝を統べる。ここに約す。」
ルーノの青い瞳が、見つめた。

『誓え』
カータは、目を閉じることもできず、額に当てられるルーノの指先を感じた。熱い。いっちゃだめ、だめ。
シェインの笑顔を思い出そうとした。
うまくいかない。
心臓が縛られていく感覚。鼓動ばかりが高まって、息が苦しい。
ぼんやりした意識に、ただ、ルーノの重い言葉が繰り返される。
『誓え』
……苦しい。
「死ぬつもりか?」くす、とルーノが笑う。
涙が、こぼれた。
「ち、かいます…」
シェイン。
息苦しさが解かれると同時に、カータは意識を失った。
倒れる女を、支えようともせず、ルーノは見下した目で見つめていた。


エノーリア中層。
まだ、明け切らないほのかに白い空の下、真っ白い空角が朝日の金色をはじいて、飛んでいた。
眼下の町は、地域ごとに違う色の屋根で、今の高度から見るとそれはいくつもの色の布を張り合わせたかのような、美しい模様に見える。
子供の頃、初めて空角に乗った時に、感動したことを、思い出した。
澄んだ上空の空気は、冷たく、シェインの胸にしがみついているココの吐く息も白くなる。
「すまないな、ココ」
「…?きれいだなぁ」
ココは、町の眺めを、じっと見詰めていた。
シェインのどきどきが伝わって、ココも、少し、緊張していた。
ラクは、こんな景色を、見たかったのかな。
今、見ているのかな。
それは、きっと、気持ちいいんだ。
ちょっぴり、涙がこぼれた。
ココ、よく泣くな。なんだろう。
自分でも説明のつかない感情。悲しいのでもなく、寂しいのでもない。
ココの知っているどの言葉でも説明は出来ない。
ラタが、静かに小さく言った。
「大丈夫、泣かないで」
その声は、シェインには聞こえないみたいだった。
フウガもいつからか、ココと話すようになっていた。この前、カータと来た時に、ココが泣いていたら、フウガも言った。泣かないでって。
「ココ、よく分かんない。でも、でも、大丈夫」
「何言ってんだ?」
シェインが、ココの頭をなでた。
「ラタがね、泣かないでっていうの」
「ふん」
男は首をかしげる。
「フウガも泣かないでって言った」
「フウガ?あいつは下層にいるだろ?」
「でも、言った」
ラタが不意に、首を回して背後を向く。
それにつられるように振り向いたココとシェインは、ラタの背後から距離を置いて飛んでいる、白い風牙を見つけた。
「…カータが、呼んだのか」
「一緒に行けばいいのに」
ココが手招きする。
この距離では見えないだろう。
「何か、ある、か」
シェインがつぶやく声に気付くことなく、ココは背後のフウガに手を振り続けていた。

「ココ。俺の教えた通り、ちゃんとやれよ」
「うん。ココ覚えたよ。ずっとラタと一緒にいるの」
「ああ、そうだ。えらいぞ」
ココはうれしくなる。
ブランカを傷つけられる守人はいない。
だから、ずっと、ラタに乗っているんだって、シェインは言った。
近寄る奴がいたら、痛いって言って、脅してやれ。
「いや、きらい、いたい、怖い」
ココは練習を始めた。
「そうだ」
「痛い、いたい、いったいーい」
「歌うな」
「んー」
ラタが、小さく、降りるよ、といった。
「おりる!」
ココの声にあわせるように、白い空角は、降下し始める。
真下には、フロマルクス。

上から見るとそれは四角い城壁に囲まれ、ずっしりとした量感の建造物は、中層の中心に鎮座して見える。城壁の内側は、大聖堂と、講堂、側堂に別れている。
四方に塔を持つ城壁は、それ自体が巨大な建物になっている。
食糧庫、武器庫、守獣の棟、書物庫。神兵の居所。
その内側に、側堂が大聖堂を挟んで二棟ずつ。それは細長く、神官を養成する寄宿施設となっている。中心の大聖堂の背後に当たるところに講堂。それは、神官のみが使う施設だ。
大聖堂だけが、上から見ると円の形になっている。大小十二本の尖塔が突き出ていて、それぞれに代々の神王の像が据えられている。
神王の像がささげ持つ、白い長い旗が、十二本、ゆらぐ。
何年ぶりか。シェインは、深い色の瞳を細める。

神兵が見上げるなか、二人を乗せたラタは城壁の正面、真門の前に降りた。
遠巻きに、神兵が見守る。
どきどきする。
ココはひらりと降りるシェインに続こうともがいていた。
「お前は降りるなって言ったろ。都合のいいとこは忘れるのか?」
ココは、降りようとしていたのに、押し戻されて、ちょっと頬を膨らめた。
「いつ覚えるんだか、そういう顔」
「カータがやったの」
「ああ、たまにやるな、それ」
シェインが笑う。
「面白いの。めっていったの」
「め?」
「うん」
閉じられた巨大な門の前で、一旦ラタが止まった。
「ルーノ神官に呼ばれているのでな、通してもらう」
シェインが、にやりと笑うと、門兵は、慌てて、門を開いた。
穏やかな言葉なのに、従わなくてはならないと、分かる。
第二の契約によって、力あるものにはたとえ神兵であろうと、逆らうことは出来ない。
巨大な鉄の扉を、ほんの少し開き、フロマルクスはココたちを招きいれた。

 「片翼のブランカ」続きはこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-78.html




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らいさん

ありがとうございます!
なんだか、可愛い可愛いって、皆に言われちゃって、照れちゃうなあ(作者じゃないって;でも、嬉しい)
ココちゃんのように素直に生きる、これ、理想です(^∇^)
また来てくださいね!!

団長さん

守りきれるだろうか…って、既に守れてないですね(^^;)
シェイン、かっこよくしすぎたので、ちょっと、
情けないとこも表現したくなりました。

いいとこも悪いとこもあるから、可愛いんですよね。
また来てくださいね!次回、起承転結でいう、転の部分に入っていきます!

アポロさん

どきどきした?
らんらら、最近コンセプト決めました!
「どきどき!」
日常の反動かも(^^;)
大丈夫、ハッピーエンド主義だから。
ひどいことも、エロいこともしないよん!(残念?)

こんにちゎ

お久しぶり?ですww続き読みにきました。「佐々くんのキモチ」も楽しく読ませていただきました。なんだか青春って感じで、登場人物一人一人が生き生きと書かれて読んでいてこっちまで若返った気がしました。
そして、うーん ココちゃんがやっぱかわぃぃ~♪仕草言動全てにおいてラブリーですね!

カータどうなっちゃうの(・_・;)
ひどいよそれは、なんとか助けられないの!
シェインとココ遅いよ~(>_<)
これからどうなるのかますます続きに期待です♪

(;□; ウアー

カータが・・・カータがぁ。
ココちゃんみたいに胸がきゅぅんってなりました (T□T エグエグ
シェインがんばれ~~~!!!
でもね~意外とルーノも好きだったり・・・(* ̄ω ̄*)
強引なところが素敵・・・☆☆
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