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「音の向こうの空」第十一話 ④

第十一話:飼い犬、つながれた鎖の先に



男爵に示されたソファーに腰を下ろすが、サーベルを持ったままの男がやはりそばに立ち、落ち着かない。
「お前、部屋の外に出ていなさい。心配なら外で見張っていれば良い」
ロントーニ男爵に言われ、男は数回オリビエと男爵を見比べていたが、だまったまま扉の外へと出て行った。

室内はロントーニ男爵、リトー。そしてオリビエ。
三人だけだ。
男爵がオリビエのすぐ目の前に立つ。
「手間をかけさせるな」
背けていた顔を強引につかまれ、視線をそらせなくなったオリビエはぎゅと目をつぶった。
この現実に、どう向かえばいいのか。
一つ、頬を叩かれた。

「男爵、革命軍を騙しているのですか。私が人質になど値するとは思えない。それを、パーシーに伝えたらどうなると思いますか」
オリビエはその先を必死に考えながら、とにかくそれを男爵に突きつけた。
このまま革命軍の目論見どおり人質になったとして、どうなるのか。侯爵様が切り捨てればそこで終わりだろう。革命軍と市民の憤懣を一身に受け、果てる。
侯爵がオリビエを救いたいと願い取引に応じてくれたとしたら。どうなる。再び侯爵家に戻ることは出来るかもしれない。だが、市民の望みは侯爵のもつ権利のすべて。全てを失った侯爵はどうするだろう。
ありえない想像だと思い当たり。結局のところオリビエは、自分がキシュの言う「自由を手にしたごく普通の青年」になれるはずもなく、以前の生活に戻ることも出来ないことを知っていた。


「オリビエ、お前を人質になどするつもりはない。革命軍がお前に価値なしと気付く前に新たな敵を押し付けてやる。よいか、革命軍などばか者どもの集りだ。私は知っているのだ、パーシーたち革命軍は侯爵家の食糧を奪い、自らのために地下に蓄えていることを。市民が飢え、争いあう最中にあってもそれを隠し通した」
「……それを」
「本当に飢えている市民に分け与えてやろう。何故そこに隠されているのか、誰が市民から搾取しているのか。市民は内なる敵に気付き、革命軍も自らの立場をわきまえるだろう」

ロントーニ男爵がリトーのほうを見つめ顎で指図する。リトーは姿勢を正し、閉じられた扉を引いた。大柄な先ほどの男がよろけて一歩踏み出したときにはリトーのダガーが男の喉を狙っていた。
「動くな」今は女性のそれとしか聞こえない低い声でリトーが脅し、男の膝裏を蹴って座らせた。膝をついた男の背後、男爵が扉を締めた。
男の目の前でレイピアを抜いて見せた。
「聞いていたのかな?」
「ど、どうか、殺さないでください」
ロントーニ男爵は男の目の前に立ち、レイピアを額に当てる。切っ先が被っている黒い布に食い込み、「うう」とうめくのと同時に赤い血が一筋。
「バスドーといったな。お前の家族は飢えているか」
男は頷きかけ、額の剣を思い出し留まった。
「は、はい」
「パーシーが食糧を備蓄していることを知っているか」
「そんなはずはない、あれは分け与えると言って裁判所に運んだ」
「では、なぜ侯爵家を囲んでパンを奪い合うことになる?ズレンの口車に乗せられたとしても市民が飢えているのは真実だろう。あれほどの食糧が分けられれば、あんな醜い争いは起こらなかった、そうではないか」
「分かりません、あっしらはただ、命じられたまま、運んだだけで」
「もし、そうだな。お前たちが運んだ場所に今も食料が残っているなら、ぜひ市民に、女や子供に分けるべきだと思わんか」
「もちろん、あるなら分けるべきです」
「そうだろう?そうしなければまた、あんな醜い争いが起こる。革命軍がたとえ正しい目的のためだとしても、市民に帰すべき食糧を隠していたとあっては面目が立たないだろう?革命どころではない。お前に少しでも革命に対する信念があるなら、パーシーら指導者を説得すべきではないか?」
ロントーニ男爵がレイピアを鞘にしまう。バスドーと呼ばれた男は膝の上に拳を握り、男爵の「我らはここにいる。大丈夫だ、ここ以上に安全な場所はない」と笑う言葉に立ち上がった。

男の足音が階下に消えると、男爵はリトーを呼んだ。
「女たちに広めるのだ。裁判所で食糧が配布されると。革命軍が食糧を確保してくれたと」
黙って頷き、リトーは出て行った。その表情を見つめたが、ちらりともオリビエの目線に応える気配はなかった。
知らぬふり、なのだろう。

二人きりの室内。
オリビエが黙って座っている前をロントーニ男爵は窓辺により外を眺め、再びオリビエの正面に座るとうん、と伸びをした。
「さすがに疲れるな。オリビエ、お前には死んでもらう」

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