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「音の向こうの空」第十一話 ⑥

第十一話:飼い犬、つながれた鎖の先に



しばらくしてリトーが飲み物と共に部屋に入ってきたときも、相変わらず男爵はオリビエをマリアと呼び、頬に触れていた。
「!…男爵様。そろそろ始まります」
男爵は窓辺に立ち、町の様子を眺める。オリビエはやっと開放され力を抜いた。

目の前に飲み物を置き、睨みつけるリトーにどうしたものかと上目遣いをしてみるが、立ち上がるついでに盆で頭を軽く殴られた。
せっかく逃がしてくれたのに、意味のないものにしたのは自分か。リトーの想いも分かるがオリビエにもどうしようもないことだった。

かすかに人の騒ぐ声が聞こえてくる。
大通りを挟んで市役所の向かいが裁判所だ。窓からは裁判所が炎に包まれるのが見えた。

「市民は喜び勇んで裁判所に詰めかけました。確認のために戻ったバスドーが裁判所の鍵を開けたので、大勢が入り込みました。市民に混じって流浪民も入り込みそこでも小競り合いに。止めようとする革命軍が加わったところで、革命軍が食糧を独り占めしていると流布してきました」

リトーの報告は誇らしげでもある。そのために血を流す市民が大勢いるのだろうが、彼女にはそれ以上に大切なものがある。彼女自身も戦っているのだ。

「革命軍と市民を争わせるのですね、そうなれば、市民も大勢犠牲になりますね」
オリビエの言葉に男爵は笑った。

「自業自得。市民も農民も。飢えているなどと言っても、それぞれ密かな蓄えを持ち、いかにも哀れを装っているのだ。オリビエ。侯爵家の食事が、毎回食べきれないほど多いのはなぜか知っているか。お前の食事のために、多過ぎる食糧が買い込まれる理由を知っているか?」
男爵の頬に皮肉な笑みが浮かぶ。

「侯爵は見て見ぬふりをなさっていたのだ。我ら貴族は鷹揚で慈悲深い。それを利用し、影で多くを奪っておきながら、あたかも貴族が浪費していると訴える。浪費した先、高額な代金は商人に渡り、必要もなく購入された食料は雇われ人が家に持ち帰る。それらを得た市民は貧農や貧しいものに貸し与え、利息と称してさらに搾取する。この町の中産階級とはそういう輩だ。醜い彼らはそれだけでは飽き足らず自由だの人権だのを叫び始める。翻弄される貧しい市民も、驕った中産階級も皆ばか者どもだ。すでにこの国には、すべての国民を養えるほど食糧も金銭もないというのに」

革命、それは誰かが起こすものではないのかもしれない。
自然とそうなっていく、時の流れに似ている気がした。

「さて、そろそろ行くかな。街境の川岸に衛兵を待たせてある。表向きは食糧の配給だが」
パーシーとの約束だといったあれか。

街境を抜け、隣街の男爵家に連れて行かれれば、オリビエの運命は虚像のマリア。
どこかで逃げ出さなくてはならない。
リトーは協力してくれるだろうか。

ダガーを突きつけるリトーをちらりと見つめる。
返された視線が危険な殺気を含むことに気付き、オリビエは震えた。

「リトー、あの、僕が逃げたら、殺す?」
「逃げてみたほうがいい、オススメする」

男爵の気が変わらないなら、自らのほうを見ないのなら。リトーは邪魔者を容赦なく殺すつもりだ。青ざめ嫉妬に燃えるリトーにはオリビエに対する温情など欠片もないだろう。

オリビエは市役所の階段を引きずられるように降りながら、もしや、一番哀れなのは自分なのではないかと今更のように気づいた。

次回、第十二話「マリアの虚像」は9月15日公開予定です~♪
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kazuさん♪

レス遅くなっちゃった(><)
朝も夜も眠いらんららです…

そう、オリビエ君、お人よしだから(笑
振り回されてばかりですが。
この状況を打開できるのかどうか。

お楽しみに~♪

オリビエくん@@;

一番哀れなのは自分・・
そうだと私も思うよ^^;オリビエくん。
少なくとも、皆自分の周りの状況を知りながら、行動する自由があるもん。
オリビエくんは、大切に守られてきた。とても幸せなことだけど、何も知らされずに守られるのは辛い事なんじゃないかなって思う。

皆、価値観が違うから。
キシュちゃんが望む、自由。
オリビエ君が望む自由。
オリビエ君の言った、「キシュが僕に望む自由は、何かが違っている」の言葉。
凄く納得です。

ではでは次回、楽しみにしてます^^
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