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「音の向こうの空」第十二話 ④

第十二話:マリアの虚像



「ほれ、これでも着てな。風邪引くぜ」
揺れる馬車の中、オリビエは小麦の袋の間に座り込んだまま、渡された服に着替えた。

「男爵のことは、御者に聞いた。あんたは何にも悪くないさ、だから、そんな顔してるなよ」パーシーは元気付けようというのだろう、荷物からリンゴを一つ投げてよこした。それがトンと肩をたたき、転げ落ちる前に受け止める。
男爵とリトーの遺体は革命軍の男たちの手で布にまかれ、それを積んで御者は彼の家のあるリンスへと向かった。そこで手厚く葬られるのだろう。

「ありゃ、しょうがないだろ。男爵は使用人にはつらく当たる人だったからな。恨みを買っても仕方ないさ。本来はリンスの町に住んでるはずだろ?けど、あっちの屋敷で、下男を殴り殺したことがある。それでいられなくなったのさ。家族はもう諦めていたんだろうよ。男爵は一人、エスファンテに移り住んだ。変わり者だった。どこかいつも飢えた顔をしていた。それが、少し俺たちに似ていると思ったんだ」
パーシーの低い声は、なぜか腹に沁みた。

「リトーは、男爵を愛していました。最期まで、男爵のために歌を歌っていた」
涙がこぼれた。
「なんだそりゃ」正面に座っていた男が肩をすくめた。
リトーを男だと思っているのだろう。

理解されない想いを二人で抱えあっていた。どうしようもなく満たされない想いを抱えて、苦しんでいた。リトーは、それを終わらせたのだ。
少しだけ、アネリアを思わせた。アネリアも僕を愛していたのだ。だから、終わらせようとした。

そんな悲しい愛は、間違っている。
間違っていると思うのに。涙が溢れた。

「キシュの前では、泣くなよ」
パーシーが肩にかけていたタオルを投げてよこした。

幸いキシュは前を行く馬車に乗っていた。時折、こちらを心配そうに眺めるのが、朝日に照らされて見えていた。
「太陽みたいな、子ですね」
「ああ、いい女だろ」
「ええ。救われます」
「……やらんぞ」
「……」

朝日に照らされ、じっとりと汚れた髪が軋むように乾き始める頃、オリビエは腹に渦巻いていた疑問を、パーシーにぶつけてみた。
それは、男爵がこだわっていた。
彼がオリビエに関わる原因。
「僕の両親の死に関して、何か知っていますか」
目の前で退屈そうにしていた男がびくりと身体を震わせた。
その顔を見ながら、オリビエはもう一度、同じ質問をし、御者台に座るパーシーからの返事を待った。
馬車が轍にはまる振動を二回数え、オリビエは黙り込んでいるパーシーを睨んだ。
男はこちらをじっと見ていた。

「あの、僕の両親は、殺されたのだとロントーニ男爵は言っていました。それは真実ですか。あの人は信じ込んでいたけれど」
パーシーは少し天を仰ぎ、息を吐いた。
「あんたのご両親は事故だった」
「でも、母さんは父さんと一緒には出かけなかった!僕もそれは知っている!なのに同じ馬車で事故にあうなんておかしいじゃないか!」
「…信じないなら、聞くな。男爵が何か言ったならそれを信じればいいだろう。どちらにしろ俺は直接は知らん。だから、お前が信じたくなるような話は出来んし、そうしてやる義理もない」
オリビエは睨みつける。
「本当に、知らないのか」
「神に誓って」
「…」

黙り込んだオリビエに、正面に座った男が話しかけた。
「俺はさ、俺だって詳しくは知らないけどさ。あんたのお父さん、ラストンさん、好きだったぜ。あの人が教会で弾いてくれる曲は心を軽くしてくれた。俺は司祭会にあの人が出てきてくれて、みんなのためにオルガンを弾いてくれるのが楽しみだった」
ふん、とパーシーも笑った。
「そうだな、そういえばオリビエ。うちのキシュも、ガキのころからあんたの父親の演奏に憧れていた。柄にもなく歌を歌うようになったのもそんな理由があるんだろうよ」
「皆、なあ、あんたがどう思うかは分からないけど、少なくとも俺の知っている仲間内じゃあんたの親父さんを嫌う人間はいなかった。惜しい人を亡くしたよな」
男がタオルを差し出した。オリビエはもう一度それで顔をぬぐった。

僕は、ラストン・ファンテルの子供だと、誇りを持って言える。

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