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片翼のブランカ 16

<<説明できない感情で涙があふれる。嬉しいのか、悲しいのか、悔しいのか…けれど、その感情の力がどれほど大切なことか、ココちゃんには、まだ、…分からないだろうなぁ。ココの冒険第16話です>>

「うは、大きい!」
石造りの城壁を潜り抜けながら、その門を見上げる。
地上二十メートルほどの高さの扉は、最上部までぎっしりと青銅の鋳物で植物を表した文様がはめられ、その重量感は目がくらむほどだ。
真上を見上げて、間が回りそうになって、笑う。
うれしそうなココ。
中庭にいた、幾人かの神官が、足をとめて、ココたちを眺めている。
神官見習いだろう、幼い子供が、丈の長い朱色のローブを身につけて、列になって歩いていた。
ココの乗るラタを指差して、何か言っていた。
わくわくする。ココは足をじたばたしだした。
「ココ、降りる!」
「だめだ。約束しただろ」
シェインは、ココをずっとラタに乗せておくつもりだ。
そうすれば、シェインの一言でラタはココを上空に逃がすことが出来る。だれも、その状態のラタに手は出せない。もし、ココが落ちるようなことになれば、契約に反するからだ。
手段として、結局、ブランカを守る守人の第一の契約を頼らなくてはならない。
それは、仕方がない。

門からまっすぐ、美しい芝生の中庭を抜け、大聖堂に入る。
扉は開け放たれ、入ってすぐ、礼拝堂がある。円形をしたその中央奥に、聖壇がある。聖壇の左右に、奥へと続く扉があった。聖壇の正面に、黒髪の緑席の神官が立っていた。
ココは、ラタの上から、にらみつけた。
「怖い神官」

 「片翼のブランカ」第一話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-51.html

 「片翼のブランカ」前回のお話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-77.html



神官は笑った。その穏やかな表情が、かえってふてぶてしさを感じさせた。
「ようこそ、お待ち申し上げておりました。シェイン様」
ふん、と、嫌な顔をして、シェインは止まった。ラタの手綱に、手をかけている。
「久しぶりだなレニアン。盗まれたものを、取り返しに来た」
「まずは、そのブランカを、お渡し願いたい」
「いやだね」
シェインはにやりと笑う。

「ルーノに会わせろ」
緑席の神官レニアンは、黒い瞳を細めた。鉄色の髪の男を眺める。
「…以前のあなたなら、私は立ちはだかることすらできなかった。神職を解かれることがどれほど大きなことか。ご自身で、分かっておられるのではありませんか?」
神官の合図で、黒い衣装の神官が、二人を取り囲んだ。
皆、金の槍を持っている。
「力とは内なるもの」
シェインがつぶやいた。
神職にない自分が、彼らより力があることを、自らに言い聞かせる。それは、過去に受けた暗示を、覆すほど、強く、深い。
取り囲む、いずれも緑席の神官たちの動きが止まった。
シェインの小さな呟きに、何かを感じたのだろう。

「元朱席とはいえ、聖職にない、ただの盗賊だ。恐れるな」
黒髪の神官の一言で、再び彼らは威嚇を始めた。
持っている槍を、同時に床につく。
石の床にその硬い音が響き渡る。そのリズムは独特で、ラタが不安げに、下がりかける。
「ラタ、落ち着け」
シェインの穏やかな笑み。それでも、ラタは鼻息を荒くしている。ココは、よろよろと揺られて、落ちそうになる。片翼がパタパタする。
『静まれ』
シェインの一言だった。
ざわりと、空気が揺れた。
広い礼拝堂には、他にも神官や、神兵がいて、遠巻きにながめていたが、皆が動きを止め、緊張した表情に変わっていた。

『案内しろ。ルーノに話がある』
シェインの力をこめた言葉に、黒髪の神官は負けずと言葉を吐き出した。
『ココを渡せ』
びりびりする空気を頬に感じる。それでも、黒髪の神官は、目の前の男を威嚇し続ける。
シェインはしばらく神官の言葉を受け取っていたが、にやりと笑った。
面白がっているような、不敵な笑み。
『じゃあいい、勝手に行く』
シェインはラタを引いて、歩き出した。
黒髪の神官が立ちふさがる。シェインは腰の剣を抜いた。
「神職に刃を向けるとは、何事か!」
「まだ、自分が上だと、思っているわけだ」
シェインが笑って、剣をなぎ払うと、神官は飛びのいた。

「つまり、だ。契約の効果がなければ、言葉の効果もない。結果、剣の腕がものを言うわけだな」
シェインは剣を構えたまま、神官をにらみつけると、ラタの手綱を引いた。
歩き出す。
遠巻きに彼らを見ながら、黒髪の神官は、悔しげに睨む。神兵でない彼には、武器はない。このまま、盗賊を神殿に入れるわけには行かない。
彼は、背後にいた神兵の弓を奪うと、シェインに向けて引き絞った。
「レニアン様!駄目です、殺しては!」
弓を奪われた神兵は驚く。
守人は、守人を死に追いやるわけにはいかない。それは、守人の持つ第一の契約に、反する。
神殿を守る役目でありながら、強引に通ろうとする盗賊を引き止めることすらできない。矛盾を感じた。

いや、本来ならば、こんな状況に追い込まれることはないはずだった。
第二の契約によって、守人は、それより力の強いものには、逆らえない。
たかが盗賊が、神兵に逆らえるはずはなかった。
だが、この元神官の男は違う。
神兵に逆らう、神官に逆らうことが出来る時点で、盗賊のほうが、力が上なのではないだろうか。

ぞくりと、する。
つまり、シェインが上。
第二の契約で言う、逆らえない、相手。

緑席の神官レニオン様は、気付いていないのだろうか。
すでに、逆らってはいけない相手に、弓を向けている!

「おやめください!」
矢が放たれた。神兵の声で振り返ったシェインが、剣でなぎ払った。
シェインは笑った。
「レニアン。気付かないか?俺がお前に逆らっているのに、なぜ、平気なのか」
神兵はシェインの言わんとするところを感じ取って、知らずに胸に手を当てる。
「?」
「俺のほうが、お前より力が上だからだ。第二の契約によればな」
緑席の黒髪の神官は、立ち止まった。
胸を押さえている。気付いたのだろう。
「行くぞ、ラタ」

シェインは剣を鞘に納め、鉄色の髪をゆらして、傍らの空角の手綱を引いた。
聖壇の奥、右側の扉を開け、シェインは悠々と歩き始める。
ココはラタにまたがったまま、天井を見上げる。
その回廊は美しく、白い壁に金の文様が施される。天井のアーチに描かれた宗教画には、色とりどりの花や動物、ブランカが描かれている。回廊は左手に小さな庭があり、その向こうにたぶん聖壇の左側の扉から通じているのだろう、同じような回廊が見える。二本の回廊の中心に丸い泉があった。その白い大理石でできた海竜の像が、口から水をちょろちょろと流している。
「ふーん、ふーん」
嬉しそうに、ココはあちこち見回している。
中庭の上には、高いドーム型の天井がある。ステンドグラスを透かした朝日が、泉にはじかれ、金色の輝きが、まぶしい。ココは目を細める。
回廊とそこは、並び立つ円柱によって仕切られ、柱が泉を隠すたび、ココは首をかしげて、なおも泉を見つめようとする。
なんだか、興味がある。
そのきらきらする水は、ココをドキドキさせる。

「シェインー」
回廊を今、通り過ぎようとしているシェインに、ココは場違いな甘えた声を出した。
「なんだ?」
「あの、泉、あれ、何?」
「ああ、ブランカの泉と同じ水が、ここに引かれているんだ。あそこは、封印されているんだ。神王しか近寄れない。何か、意味があるんだろうが。」

ブランカの本能で、何か感じるのかもしれないな。
シェインはそう考えながら、歩き続ける。
背後から、距離を保って、先ほどの神官たちがついてきていた。
立ち止まるわけには行かない。

いくつもの扉の前を過ぎ、シェインはまっすぐ、紫席の間を目指していた。
そこに、いるだろうと、信じている。
紫席の間は書斎、主寝室、居室、客室の四つの広い部屋を持ち、それは大聖堂の三階部分に当たる位置にある。そのすぐ下の階が朱席の間。内容も広さも、ほぼ紫席と同じだ。
神王の間はさらに上の階にあり、そこに出入りできるものはほんの数名だ。
シェインは、幼い頃からよくそこに通った。
彼は、この神殿で育った。

じわりと、剣を持つ手に、汗を感じる。
カータ。無事でいてくれ。


紫席の間の居室への入り口には、神兵が二人、立っていた。
「通してくれ」
シェインの言葉に、二人は扉を開けた。
ルーノから、何か言われているのだろう。
黒檀の分厚い扉が静かに開かれる。

目の前の居室に、カータが居た。
天井の高い、白い壁の明るい部屋の奥に、絹を張った長椅子が二つ。豪奢な窓を背にした一人がけの椅子を中心に向かい合わせにすえられている。
そこに、座っている。

その衣装は、普段と違った。
白い絹に、豊かなドレープを聞かせた柔らかいもので、広く開いた胸元はカータの美しい体を際立たせていた。結い上げたクリーム色の髪に、耳につけた金のピアス。とても似合っていた。
その、見慣れたはずの美しさとはまた違う、女性らしい姿に、シェインは言葉を失った。
「きれい!」
ココが無邪気に喜んで、ラタから降りようとする。
シェインは、女性に目を奪われたまま、立ち尽くしていた。
こちらを向こうとしないカータに、その悲しげな横顔に、シェインは何かしら深刻なものを感じて、ただ、見つめていた。

バタバタと翼をはためかせて降りようとするココに、ラタがだめだよと、声をかけた。
「カータ!カータ!こっち見て!」
ココの声が響く。
カータが、ゆっくりこちらを見た。
その額に、小さな紫色の石がつけられていることに、シェインは気付く。所有の、証。
「カータ、お前」
カータは黙ってうつむいた。その頬に涙がつたう。
シェインは、拳を強く握り締めた。怒りが、あふれるのを抑えるように、目をつぶる。

「カータ。お前が悪いんじゃない。泣くな」
それだけ言って、シェインは目を見開いた。
一つ、息を吐く。
その男は、向かって左側の、書斎への扉の前に、腕を組んで立っていた。
じっと、面白そうに目を細め、二人の様子を眺めている。
エノーリアの紫席、ルーノ神官。派手な金髪を一つに束ね、肩にかけている。青い瞳は涼しげに、元神官の兄に向けられていた。

「契約を、解け」
静かな、シェインの声が、低く室内に響いた。
ルーノは、笑っていた。
「いやだな。その女は私のものだ」
「ルーノ、俺に逆らうのか」
シェインの怒りの声は、一瞬ルーノの金色の髪をぞわりと揺らした。声の恐ろしさに、カータは震えていた。
力ある言葉。シェインが、これほどの力を持っていることに、改めて、心臓が震える思いがする。涙が、あふれてとまらなくなる。

「第二の契約の意味、私にも分かったのだ。老は、お前にだけ、教えていたのだな。ふん、お前は昔から、白席老のお気に入りだった。だが、今はただの盗賊。下賤の輩に過ぎない。いくら、言葉に力があろうともな」
「老が、お前に話したのか」
「・・・そうだ。第二の契約は、すべて、虚偽であったと。ただ、その契約の暗示を掛けられただけであったと、老はおっしゃった。つまり。白席老でも、そう、いかにリアータ神王といえども、すでに私をとめることができるものは、いない。そういうことだ」
「!老に何をした!」
ルーノは、それを知れば、必ず利用する。分かっていたからこそ、老は俺にだけ話した。それを、今になって何故知らせてしまったのか!
睨みつけるシェインに、紫席の神官は笑った。
「なにを言う。老は、私の味方だ。そうでしょう?」
ルーノの背後から、車椅子に座ったままの、リアータ神王が、静かに現れた。
「久しぶりじゃな、シェイン」
シェインは、神王に正対し、床にひざをついた。右の拳を床につけ、正式な礼をする。
その、しわの刻まれた穏やかな顔。やせてしまったと、シェインは思った。決してかなわない相手と、幼い頃から思っていた。年老いたその姿は、以前よりずっと小さく見えた。寂しさすら、感じる。

「老、あなたは、無理やり女を所有するような、こんな神官に、組するのですか?」
まっすぐに伸びた眉が苦しげに寄せられている。鉄色の髪の盗賊は、目の前の神王に、心から、尊敬の念を抱いていた。

「シェイン。まずは、そのブランカを、引き渡すのだ。そして、その女の契約を解いて欲しければ、神職にもどれ」
「…ココをどうなされるおつもりですか」

床についた右拳が、小さく震えるのを感じている。
「あれは、存在してはならん。始末する」

 「片翼のブランカ」続きはこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-80.html



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eigoさん と 団長さん

ありがとうございます…
らんらら、今日は
ごめんなさい。
次回ちゃんと、
コメ返します!
ああ、二度とお酒なんてぇ(>_<)

そんなの無理な話ですよ!
ココがいなくなっちゃうのも嫌ですし
カータがあのままなのも嫌です(>_<)
私って我がままでしょうか^^;
でもとにかくなんとかしてあげたい!
次の展開に期待!!
ココはいったい何者なんだろう?

緊迫した展開ですね!!
かっこいいです!
カータはどうなるのか、ココはどうなるのか?
この先突拍子もない展開になるんですよね?
うーむ、どうなるのだろう?
うーむ。
次回更新が非常に楽しみです!!
ではぽちっと。
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