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「音の向こうの空」第十二話 ⑤

第十二話:マリアの虚像



馬車は程なくエスファンテの市街に入っていった。
通りは静まり返っていた。

朝もやの中、小麦を積んだ五台の馬車がからからと音を響かせて裁判所の前に停まる。
さすがに早朝だけあって、人影はない。
オリビエは朝の冷え込みに少し震えながら、降り立った。

市役所の前に陣取っていた見張りの姿が見えない。
パーシーも気付いたのだろう、小麦をおろそうとしている男たちに手で何か合図を送った。
「どうしたの?」
キシュが赤毛を一つにまとめながらオリビエのほうに歩いてきた。
朝日が、靄を払うように差し込んだ。

「動くな」
その声は凛と響き、同時に裁判所と市役所、双方の塀から衛兵たちが姿を見せた。皆、銃剣を構えていた。
通りの真ん中で、左右から挟まれ、パーシーはゆっくり手を上げた。

「なんだ?」
オリビエがキシュを引き寄せようと手を伸ばした時、ばらばらと衛兵が駆け寄ってきた。
「!あの」
「何すんの!」
オリビエは大勢に取り囲まれ、担がれるようにして連れて行かれる。
「なんだよ、どうしたんだよ!」
「ご無事で、オリビエ様。ご安心ください、市街は我ら衛兵が制圧しました」
「市民も、貴族の皆様もご無事です。革命軍は排除しますからご安心を」
市民、革命軍。
そうだ、ロントーニ男爵が去り際に仕掛けた罠。そのために革命軍は内側から破綻した。そこに衛兵がつけ込んだのか。ズレンらしく、隙がない。

キシュの声が聞こえた気がして、オリビエはすぐ目の前の衛兵に訴えた。
「あの、彼らはどうなるんですか?キシュは」
「ズレン様から伺っていますよ、拘束はしますが。ひどいことはしません。彼らも我がエスファンテの市民。少しばかり悪戯の過ぎたものたちです」
余裕の笑みを浮かべる衛兵たち。確かに、制圧したのだと思わせる。

たった、一個中隊で。数千人いるはずの市民をこともなげに静まらせたのか。


侯爵家の中庭には、見慣れないテントが並んでいた。まだ早朝、オリビエが衛兵と共にそっと屋敷に入ると、後からズレンも到着した。
珍しく、屋敷の中に入ってきた。
これまでずっと、前線である中庭に留まっていた。ズレンもやっと、屋根のある場所で、ゆっくりできるということなのだろう。

廊下で出くわし、ビクトールに背後を護られるオリビエを見やると、にやりと笑って見せた。
「来いよ」
「ズレン殿、オリビエ様はお疲れですし、このお姿」
「かまわん、来い。どうやって男爵の手から逃れたか、聞かせてもらう。あれの様子を聞かなくては落ち着いて眠れないからな」
ズレンに引かれ、来客用の寝室、今はズレンの部屋になっているそこに招かれた。
渋い顔をしつつも二人のために茶を入れるビクトールに、オリビエは礼をいい、「まだ早いから、お前も休んだらどうだい」と笑う。「再会を祝うのは、アンナ様が起きていらしてからでいいから」
ビクトールは満面の笑みを浮かべた。
「ええ、そうですね、貴方様に見せたかった。お話したいことがありますよ。ゆっくり休まれたその後で」
何か、いいことがあったのだろう。こんな状態になる前、ビクトールのそういった笑みは必ず楽しいことを知らせてくれた。以前の、温かい生活に戻れる気がしてオリビエは心から喜んでいた。紅茶の温かさもまた、胸に沁みた。

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