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「音の向こうの空」第十二話 ⑥

第十二話:マリアの虚像



ズレンは、オリビエが語った男爵とリトーの行動に途中目を見張ったり、ニヤニヤしたりしながら聞き入った。
「しかし、あれが女とは。さすがに気付かなかったな」
「最期には、可哀想なことをしました」
「想いを貫いたのだ、良かったとしよう。しかし、あの騒ぎは男爵が起こしたものだったとはな。忍び込ませておいたものに連絡を受けたときは天の采配とまで思ったが」
「忍び込ませた?」
「ああ、暇を出すふりをして、メイドを数名。女であれば怪しまれない。お前が市役所に連れ込まれたところまでは報告があったが。そうか、危うくマリアにされかかったか」
「笑い事じゃない」
「ああ、ああ。そうだ。やはり、感謝しなくては」
「それ、前も言ったな、どういう意味だ?」
「マリアに似たお前に執着し、きっと男爵が手を打ってくると踏んでいた。予想では、お前にこだわる男爵と革命軍とを敵対させるつもりだったのだが。パーシーも案外、落ち着いていたな。侯爵様が戻られていれば、もう少し緊張感が増して、人質の価値も重要になっただろうに。少しばかり、ことが早く進んだ」
「それで?」
「マリアに感謝、だろう?お前がいなければ、お前に執着する男爵がいなければ納まりはしなかった」
釈然としない。
「だけどズレン、男爵は元々母さんに執着するあまり侯爵に対抗する革命軍を援助したんだ、逆じゃないか」
「マリアのせいでこの混乱が起こった、自業自得だと。言って欲しいのか?」
「……」
「つくづく苛められたい性格なんだな、お前は」
「そういうわけじゃ」
「どちらにしろこの時勢。形は違えど市民の憤懣は噴出さずにはいられなかったさ。革命軍に男爵が絡んでいなかった場合、困難は増す。結果的に収まったんだ、よしとするさ」

「あ、そうだ」
二人同時にそれを言った。
「なんだ?」
ズレンが笑う。
久しぶりに見た気がした。そんな、心から笑う青年を。町を護り侯爵家を護る、その重圧から解放されたからなのか、あるいはオリビエの予想もつかない意味のある演技なのか。分からないが。笑っていてくれたほうが心は休まる。

「いや」
せっかくの笑みも、オリビエの言葉を聴けば曇る。迷いをどう受け止めたのか、ズレンはニヤニヤと笑い出した。
「なんだ、言いたいことがあるなら言え。拗ねた顔をしているぞ」
「…あの、キシュのこと。やっぱり、ズレンもあの子のこと好きなんだろ」
ぶ、とズレンは笑い出した。
「なんだよ」
「いや、まあ、悪くはないが。まだ、ガキだな。お前も」
「なんだそれ!」
「お前がキシュにかどわかされないように、突き放すつもりであれを誘ったんだ。誰が本気で子供を相手にするかよ。見せ付けたときのお前の顔、今思い出しても笑える」
「わ、笑い事じゃない!」
あれも演技なのか!一体この男の本心とはなんなのだ!?

「お、本気だろ、やっぱり。素直じゃないな。いい加減認めろ、ここで俺に当り散らすくらいなら、奪えばいいだろ?女は強引な男を待っているものさ」
「違うだろ、それ」
「お前はまだ、分かってないさ」
「ズレンだってキシュのこと分かってない!」
「おお?お前は分かるってのか?」
「からかうなよ!」
ますます嬉しそうにズレンは紅茶を口に運んだ。
詰め寄るオリビエに「紅茶がこぼれる」と手をかざし、一気に飲み干すとにやりと笑った。
「まあ、自分のことは自分で何とかできるだろう?明日の昼には侯爵様がお着きになる。多少、乱れたこの街をどう建て直されるおつもりか、俺も少し楽しみなんだ。お前もどこまで報告するのか、考えておけよ。余計なことを言えばまた、アネリアの二の舞だ。頭を使え」
急に現実に引き戻された。
今は革命軍として捉えられているキシュたち。侯爵様が彼らをどうするのかは、ズレンにも分からない。
自室へと向かいながら、差し込む朝日に目を細めた。気付けばあちこち傷だらけで薄汚い野良犬のようになっている。ふとランドンを思い出した。あの犬も野良犬を経験したことがあるのだろうか、そんなおかしなことを想像し。
オリビエは泥も血も涙も、洗い流せる人間であることを温かい湯に浸りながら実感するのだった。

次回、第十三話「革命の後」は9月29日公開予定です~♪

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ゆつきさん~♪

うむ~ゆつき嬢、褒めすぎ!
まだまだ、勉強不足ですもん。

人を描く。
難しいですよね~。漫画やラノベ的な分かりやすいキャラ設定にすれば受け入れられやすいけれど、でも人間って皆裏表があるし、状況で変化する生き物だし…。とか。
難しいことを考えながら描いているわけでもないので(お?)つい、好みに傾きます。
うん。
リトーの価値観は、賛否両論。もちろん男爵も。理解できるばかりが人ではないので、まあ、こんなこともするんだろうな、なんて。

現実はほんとうに、予想できないことや理解できないことで満ち溢れているから、それを少しでも、メッセージや分かりやすいカタチにして、読む方に伝わればいいな~なんて。考えています♪

リトー……

衝撃の十二話でした。
リトーも男爵も……恋に生きて、必死で。

らんららさんの小説を読むと、いつも「生半可ではない」と思うのですが、今回もまた考えました。
人が人である小説を書くことは、難しいことだと思うのです。
らんららさんはその向こう側にいる人だ……。

物語の感想からは離れてしまいましたが、らんららさんに出会えたこの世界を称えたいです。
当然! らんららさんも!!

ではは。

kazuさん♪

いつもコメントありがとう~!!励まされてます!
そう、男爵とリトーはこんな感じでした。

アンナ夫人、良くも悪くも言いたいことをいう人です(笑
彼女の存在はこれからもオリビエについてまわりますし…どうなるかな?んふふ。

のんびり更新ですけど、お付き合いくださいな~♪

こんばんは

エスファンテの革命の日が、明けましたね。
アンナ夫人、さすが公爵夫人ですね。
少し我侭が過ぎるけれど、本当はとてもしっかりとした女性だったのですね^^
ビクトールさんの嬉しそうな顔が、目に浮かびます。

男爵とリトーさん。
とても哀しい結末を迎えてしまったけれど、でもそれでも。
リトーさんにとって、最後は自分のものになった。
そこだけは、幸せだったのかな・・・。
男爵は・・・マリアさんを追い求めるあまり迎えてしまった結末ですものね。

そしてキシュちゃん、革命軍の人たち。
公爵が帰ってきて、いったいどうなってしまうのか。。。
29日、楽しみにしています^^
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