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片翼のブランカ 17話

<<所有の契約で自由を失ったカータ。ココを渡せと迫る神官。どうする!シェイン…ココちゃんの冒険、第17話です!!>>


「始末?何をおっしゃっているのですか!ブランカを守ること、命を守ることが我ら守人の存在意義ではなかったのですか!」
シェインの言葉に、神王はうつむいて、小さく首を振った。

「ココだけは、大人にするわけには行かない」
「老、できることではありません!おやめください!」
くすくすと、神官の笑う声がシェインの気分を逆なでした。
「ルーノ」
睨みつける男に、神官はにやりと笑って見せた。

「守人は、やれない。確かにな。だが、獣なら、可能なのだ。多少の犠牲は伴うが。なあ、女」
振り返ると、カータの背後から、フウガがゆっくり立ち上がった。
カータは、震えている。うつむいて、視線を床に落としたまま。
「その女は、私には逆らえない。そして、その風牙も、その女に逆らえない。逆らえば、死」
カータが震えて、自らを抱きしめた。

「カータ?」
ココが、心配そうに、見つめている。先ほどから降りようと、ばたばたしていたが、ラタが翼でそれを防いでいた。

「どちらにしろ、風牙はブランカを傷つければ死。風牙を所有するその女も、意志が弱ければ死ぬ」
「ルーノ、お前が命じたのなら、それは、お前が三つの命を奪おうとしているのと同じだ」
シェインが立ち上がった。
「いくら、お前でも、第一の契約には、逆らえないはずだ」
くくくと、ルーノは笑った。

「ココを殺すことは、多くの命を助けること。その矛盾により、私は契約に反するものではない。女、風牙に、命じるのだ。あの、出来損ないのブランカを、殺せと」
シェインが剣を抜きかける。
その視線は憎しみに近い。
確かにルーノほどの力があれば、矛盾により死を免れる。だが、下層民のカータには、避けようのないこと。ルーノに逆らっても死、ココを傷つけても死。どちらにしろ、カータを犠牲にするつもりなのだ。
どうやれば、救えるのか…

カータは目をつぶった。
「フウガ」
カータの小さい声に、フウガは頭を上げた。
ぶるっと身震いを一つして、ぐんと体を低くしならせ、ラタに飛び掛った。

「!ラタ、逃げろ!」
シェインが剣を抜きながらかけ戻って、横からフウガに切りつけた。
「!」
カータが手で顔を覆う。


 「片翼のブランカ」第一話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-51.html

 「片翼のブランカ」前回のお話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-78.html



「カータ、お前は何も、考えるな、すべてルーノの言うとおりにしろ!逆らうな、大丈夫、俺が守るから!」
フウガの鋭い爪をよけながら、シェインは叫んだ。
守るしか、ない。

ラタは、カツカツと室内を駆け回り、威嚇するフウガに、鼻を鳴らす。
「フウガ、どうしたの?ラタが怒ってるよ!」

ココは必死にしがみつきながら、フウガに声をかける。
シェインが、フウガの胸に剣をつきたてようとする。飛んでよけたフウガは、音もなく今度はシェインに向かってきた。

フウガの鋭い前足が、しなやかに振り上げられる。
その大きさは、丁度シェインの頭ほどある。
剣で受けようとするが、その重みに、跳ね飛ばされる。
転がって、シェインは壁に背をしたたかぶつける。

うめくまもなく、目の前にフウガの牙。
首に噛み付かれる寸前で、膝蹴りを喉に、牙には剣を当てる。
ぐうと、低くうなって、一旦離れたフウガは、全身の毛を逆立てて、長い尾をゆらりと振って、シェインの周りを行ったり来たりし始めた。肩を打ったのか、シェインは、左手で肩を押さえたまま、かろうじて、剣を構えていた。
懐から、白いクリスタルを取り出す。
『睡』
『無』
シェインの言葉は同時に、ルーノにかき消された。
クリスタルは白い霧になって消えた。
「ルーノ!」
「邪魔はして欲しくない」
あくまでもニヤニヤ笑う神官を、視界の端に感じているが、シェインの意識は目の前のフウガにあった。
左右に歩いて威嚇を続けている。

「やめて!」
カータの、声だった。
「だめだ、カータ、なにも言うな!何も考えるな!大丈夫、俺は大丈夫だから!」

カータがルーノの命令に逆らえば、死。
それだけは、それだけはさせてはいけない。カータには、第二の契約を跳ね除けるだけの、力はない。
「でも、シェイン!」
一瞬動きを止めたフウガが、シェインの肩口に前足を振りおろした。
跳ね飛ばされて、シェインは長椅子の足元に転がる。
肩はぱっくりと傷口を開け、流れ出る血が大理石に冷たく広がる。
「シェイン!」
カータは、男に抱きついた。
フウガは、低くうなって、視線をラタに戻した。

「ラタ、逃げ・・・ろ。ココ、お前も、約束、したよな・・・」
シェインの、声は大きくはなかったが、その力は強い。
ラタはフウガの飛び掛るのを寸前でよけ、扉を体当たりで開くと、外に飛び出した。
「きゃあ!」

ココの声が遠くなっていく。
「シェイン・・・」
目の前にある、美しい青い瞳に、シェインは微笑んだ。
「カータ。よく覚えておけ。心を強く持って、フウガが、もし契約に反しても、それは矛盾しているんだ、いいか、ココを傷つけても、フウガもお前も死なない。お前が所有することで、フウガは契約に縛られている、だから、おまえ自身を縛る第一の契約によって、フウガは大丈夫なんだ。そして、お前も」
「分からない、シェイン。私にはわかんないよ」
「怖くない。頼むから、聞けよ・・・俺が、見込んだ女なんだ、大丈夫」
言いかけたシェインは、横から引っ張り起こされた。
「ルーノ!」
強引に傷ついた男を引き離そうとする神官に、カータはすがりつく。

「情けないな。兄上」
「…」
「やめて!」
すがるカータをルーノが蹴りつける。
「黙っておれ!」
「やめろ、ばか…」
カータをかばうように間に飛び込む。
傷の痛みと壁に叩きつけられた衝撃で、くらくらする。よろめくシェインを、ルーノは捕まえた。
「…むかつくぜ、お前…」
その言葉に頭に血が上ったのか、ルーノが殴りつける。
数発、続けざまに殴られて、シェインは気を失った。
「ルーノ、そこまでにしておくのじゃ」
白席老の言葉が、ビリと、空気を揺らした。
「殺しはしません。さすがに、私も第一の契約は破れませんので。老、何も兄上を神職に戻すことはありません。すでに、身を落としたものです」
「ルーノ、逆らうか?」

白席老の鋭い視線を、ルーノは笑って返した。
「ええ。何しろ、私が、このエノーリアで最も強い力を持っているのです。たとえ、白席老であろうと、私に命じることはできません」
ルーノの涼しげな笑みが、残酷に年老いた神王を見下ろした。
「ルーノ」
「誰も、私を止められません。いいことを教えていただきました。身分ではない。言葉の力と強靭な心があれば、どんな契約をも跳ね返すことができる」
神王は、じっと、まだ若い紫席の神官を見つめた。
それでも、このようなものに、エノーリアを任せることになったとしても。
ココを大人にするよりは、ましであろうと。
うまくいって、シェインを聖職に戻すことができれば、なお、好都合。シェインであれば、この神官を止められる。
そう、神王は考えていた。


ラタは、白い翼を、狭い回廊の柱に当てないように、不自然な飛び方になっていた。
「ラタ!がんばれ」
背に乗る小さなブランカは、ラタにとって、仲間と同じだった。
仲間。
それは、守人とは違う。生き物として、何か感じるものがあるのだ。
だから、言葉も通じるし、所有者のシェインより優先しても、何の咎もない。
ラタは、必死で、背後から迫る風牙から逃げていた。
もっと、広いところであれば、もっと高いところであれば。
空角のほうが有利であるのに。
狭いところを自らの柔軟な前足で潜り抜け、壁を蹴って、走るように飛ぶフウガには、今はかなわない。

追いつかれ、その鋭い爪が、何度もラタを傷つける。
「止めて、フウガ!だめだよ!」

しがみついたココが叫んでも、フウガは主人の、カータの命に逆らえない。
それも分かるから、ラタは黙って、ただ必死に飛ぶ。
あと少しで中庭。天井のない場所。優位な広い場所。そう思ったときだった。
翼を、フウガの前足に掻かれた。
バランスを、損なう。

「きゃあ!」
落ちそうになるブランカを、支えたくとも、翼が動かない。
大きな白い体を、その勢いのまま、ラタは回廊の中心にある、白い泉に投げ出した。
泉を縁取る大理石の彫刻に突き当たって、止まった。

ラタは翼を下に、硬い地面に落ちた。
ココも跳ね飛ばされ、泉に、落ちた。
とぷん。という水音がした。

目の前に、フウガ。
その黄色い、獰猛な瞳。ちらりと唾液を落とす、その牙に。ラタは、黒い丸い瞳を、細めた。
前足を、折っていた。
もう、立つことができない。自覚できた。

空角の、それは、致命傷だった。
角が、ラタの動かす頭に連れて、カツカツと乾いた音を、大理石に響かせる。
大理石でできた白く冷たい床。
ラタの吐く息が、少しだけ白く丸く、曇らせた。
頭を、上げることは、もう、できなかった。
ココの、声が聞こえた気がした。



小さなブランカは、白い泉に落ちた。
泉に落ちる寸前、何かチカリと光った。
それは、ぴりと、痛い感触をココの頬に感じさせた。
目をつぶる。
どぷん、と、冷たい。
重苦しい水の中、ココはあの時の、満月の夜のブランカの泉を思い出した。
もがいても、もがいても。
ココは沈んでいく。
どろりと絡まる冷たい水に、ココの服も翼も鬣も。
全部染まって、水に溶けて。
ぴりりと、身を切り裂くような冷たさに、ココは震えた。
怖い、怖いよ。



パチ。
変な音に、気付いた。
ココは、ふと、息を吐いた。
先生、ココ、変な夢をたくさん見た…そう、報告したかった。
でも、開いた瞳に映ったのは、ネムネ先生ではなかった。

ぼんやりと、目の前の、小さな女の子らしきものを、見つめた。
「だれ?」
ココの言葉に、女の子は、赤いスカートを翻して、走っていってしまった。
「ママ!起きたよ。ねえ、あの子起きたの!」
起き、た?
ココは、ゆっくり、体を起こした。
ちょっと、すすけた白いお布団。くすぶる松のにおいのする、小さな暖炉。
赤い、四角い石が敷き詰められた床。
ココの寝ていたすぐ横には、レンガの壁。小さな窓がある。
ちょっと、見てみた。
木の枠で。
外が、白い。
「なあに?これ」
ココは首をかしげる。
外は、真っ白だ。
ぱち、また、暖炉で何かがはじけた。
ふと思い出して、ココは、大切な翼を、きれいに整え始めた。
それは、大切なこと。
ココにとって、それは、とても大切なこと。
ココはだんだん、思い出してきた。
三つに結った鬣。カータはきれいに編みこんでくれた。
カータは、悲しそうで、シェインが、フウガに飛び掛って、それで、ラタは。
ラタは。
その先が、思い出せなかった。
ココは、ココは、泉に落ちた。
とぷんと、落ちた。


ここは、どこ?


 「片翼のブランカ」続きはこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-81.html



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