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片翼のブランカ 18

「ほら、ね」
小さな声が、聞こえて、ココは顔を上げた。
「本当」
守人、かな。小さな女の子と、枯れ草色の髪の女の人。丁度、ネムネ先生と同じくらいの年齢みたい。
「あの、ここどこ?」
ココの声に、二人は、一瞬歩みを止め、後ろに下がりかけた。
「あの、ココ、ラタが心配なの」
ココは一つだけの翼を抱きかかえたまま、首をかしげて見つめる。
「本物、かしら」
「すごい!きれい!」
女の子が、そっと近寄ってきた。
今度は、ココが驚いて、少し後ろに下がる。
「大丈夫?」と女の子。
「なあに?」ココはたずねる。
女の子は、ニコニコ笑って、ココの手をとった。
「雪の中に落ちてるんだもん。死んじゃっているかと思った」
「ゆき?」
「ええ、ヨハンナが見つけたの。真っ白な雪の中、あなた真っ白だから、よく見つけたものよね」
女の人がひざを床について、ココと同じ目の高さで笑った。
「あの、ここどこ?」
「リッツデール村。あの、スイスのルツェルン地方よ。分かるのかしら」
女の人は、やせていて、とても白い顔をしていた。女の子のピンクの頬と並ぶと全然違う。
ココの肩に触れられた手も、やせて冷たかった。
「すいすってなあに?エノーリアじゃないの?」
「えのーりあ?知らない地名ね。あなた、その、翼、どうしたの。どうやってつけたの?」
「つけた?えと。ココのは、生まれつき一個しかないの」
女の子が女の人とココの間に入ってきた。手には、毛糸でできたお人形を持っていた。

「ママずるいわ、私がお話しするの!
ね、ココちゃんっていうの?わたしヨハンナ。よろしくね」
女の子は、ココより三つくらい年下に見えた。
それでも、いっぱしの女性らしい口調で、嬉しそうに、ココの手を握ったまま、その白い手に頬ずりしている。
「ヨハンナ」
「ママは黙ってて。ね、ココちゃんは天使なの?わたし、初めて見るから分からないのよ」
ヨハンナという女の子は、少し赤い茶色の髪を、くりくりとさせて、大きな青い瞳でココを見つめた。可愛い。

「てんし?ココは、ブランカなの。ちょっと、出来損ないだけど」
「ぶらんかって、なに?天使のこと?」
「てんしって、えと、わからない。ココ、ブランカなの。翼が一個しかないから、大人になれなくて、出来損ないなの」
「分かった、ブランカって堕天使のことかな」
「ヨハンナ、それは失礼よ、だめ。ココがブランカだって言うんだから、ブランカって思えばいいのよ。きっとね、人間が勝手に天使って呼んでいるだけなのよ」
「だって、天使みたいだもの!」
ヨハンナは、頬をぷくっと膨らめて、ママを軽く睨んだ。
そのぷくっとした顔が、なんだかカータを思い出させた。きれいなカータ。
いつも、美味しいパンを焼いてくれた。チーズも乗ってた。
おなか、すいた。

「ココ、てんしでもいいよ。ココ、おなかすいたの。ママもヨハンナも守人なの?」
「守人?私たちは人間よ、あなたが天使なら、分かるでしょ?」ママが言った。
「うん?ママね、守人の先生に似ているの」
「ココがママって言うの変よ。ママはヨハンナのママなんだから」
「?ママはママじゃないの?ママっていわないの?ココはココって言うよ」
ヨハンナは、目を丸くして、ココを見つめた。
「ココ、ママって知らないの?名前じゃないのよ。お母さんのことよ?」
「ままはいないの。おかあさんもしらない」
「お話は食べながらでもできるわ。こっちへいらっしゃい。一緒に夕食にしましょう」
ココは、ヨハンナに手を引かれて、ついていく。
なんだか、変な感じ。
ヨハンナは丁度、ココと同じくらいの背で、翼がないから守人だろうけど、でも、守人なのにエノーリアを知らない。変なの。人間っていう、守人がいるのかな。


小さな家は、炊事場と居室が一緒になっていた。
ガスコンロの上では、なべが火にかけられ、白い蒸気がコトコトとふたを鳴らす。
そのいい香りに、ココはすっかりうきうきしてきて、椅子に座って足をパタパタしていた。
「ねえ、ココちゃん、ずっといてね」
「ん?」
ヨハンナがココの隣で、パンをかじりながら言った。
「そうね。きっと、ココちゃんは、パパからの贈り物なのよ」
「ママ、ココちゃんを贈り物なんて、失礼よ。それに、パパはもう天国なんだから」
ヨハンナが青い瞳を細めて、口を尖らせた。その口調が、とてもその年齢の子供らしくなくて、ココは、自分より年上なのかな、それとも、守人の子供はブランカと違うのかな、などと考えていた。
ヨハンナが小さく、ため息をつく。
「ママ。パパはきっと、私たちを見守ってくださっているけど、
私たちはそれを胸にしまって、ニコニコしていなきゃいけないんだから。学校の先生も言ってたわ」

「ヨハンナ。そんな、悲しいことをいわないで。ママはパパのこと忘れたりできない」
ヨハンナは、プクと頬を膨らめた。
「パパ?」
「うん、うちのパパ、去年の秋に、死んじゃったの。ご病気だったんだって。それでね、…」
「ヨハンナ!」
皿にスープを取り分けていたママが、大きな声を出した。
ココはビックリして、パンを取り落とした。

「パパのご病気の話はしないでって言っているでしょう!」
険しい表情は、別人のようだ。
ヨハンナは、小さな眉間にしわをちょっと寄せて、うつむいた。
「…ごめんなさい」
ココは、二人を交互に見つめた。
シェインと、カータが言い争うのと、ちょっと違う感じだった。
シェインたちの喧嘩は、いつも楽しかった。最後に、ニコニコ笑った。
「ヨハンナ、笑って」
ココが、そっとヨハンナの肩に手を乗せた。
ココを見た瞳に、大粒の涙が浮かんでいた。

「いいのよ、ココちゃん。気にしないで。ヨハンナったら、大人のまねばかりして」
ママがココの隣に座った。
小さな四角いテーブルに、ママとヨハンナが向かい合わせ、その間にココがいた。
うつむいたまま、涙を拭くヨハンナと、ココの髪をしきりになでてニコニコするママ。
不思議な気持ちだった。
「ココちゃん。天国で、あの人に会ったのかしら?どんな様子なの?あちらで元気にしているのかしら」
「えと、あの人って、パパのこと?」
ココは困った。
「ええ、あの人、優しい人だから、きっと、天国でもみんなを助けて、幸せにしているのでしょう?」
「…あの、ココ、えと。分からない」
ココを見つめるママの顔が、少し怖くなった。
「そんなはずないわ!思い出して、ココちゃん、ハンスっていうのよ。ね、思い出して」
「ママ、止めて!天国が本当にあるかどうかも分からないじゃない!
ココちゃんが知らなくたっていいじゃない!
もう、パパのこと言うの、止めて!パパはもうとっくに死んじゃったんだから、もう忘れて…」
ヨハンナが立ち上がった。
その顔は、涙でくしゃくしゃだ。
パン!
ママの手が、ヨハンナの頬を叩いた。
びくりと、ココは怯える。
「こうして、ココちゃんが目の前にいるのに、お前は天国を信じないというの?教えを信じないというの!」
「…ママ、だめだよ、痛いよ、そんなことしたら」
ココが椅子から立ち上がると、立ち尽くしたままのヨハンナを抱きしめた。
ヨハンナの肩は震えている。
「ココちゃんは黙っていて。ヨハンナは、もうパパのこと忘れたいっていうのよ!この子は、パパにあんなに可愛がってもらったのに、何て恩知らずなのかしら」
「ふ…え」

ココは、どうしていいかわからなくなって、泣き出した。
それを見て、ヨハンナも黙って泣き出した。

ママは、大きくため息をついて、立ち上がり、二人のそばに座って、言った。
「さあ、もう寝なさい。ちゃんと歯を磨いて、お祈りして。ね」

ヨハンナが黙ったまま頷いて、ココの手を引いて、バスルームに向かった。
見よう見まねで、歯を磨き、ココはハミガキの味にむせる。
「ごめんね、ココちゃん」
ココの背中をさすりながら、ヨハンナが笑った。
「ママね、昔はもっと優しかったの。パパが死んでから、ちょっと、寂しいのよ。パパのこといつもお話しするの。でも、病気のお話だけは嫌がるの。ママ、寂しいのよ」
そういって笑うヨハンナの笑みも、とても寂しそうだった。

 「片翼のブランカ」第一話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-51.html

 「片翼のブランカ」前回のお話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-80.html





二人は、ココのいた部屋で、一緒のベッドで眠った。
「ごめんね、他にないから、せまいけど」
ココは嬉しそうに、うつぶせになって、足をパタパタした。
「ふわふわ」
「ふかふか」
ヨハンナが笑う。
なんだか、ラクと一緒にいるみたいな気持ち。
ココは嬉しかった。
「ヨハンナ、お友達!」
「うん。友達」
ニコニコしながら見つめる金色の瞳に、ヨハンナも嬉しそうだ。
二人は、一緒に天井を見つめながら、手をつないで眠った。


ヨハンナは、ココにいろいろなことを教えてくれた。
七歳というのに、ココよりずっとたくさん知っている。
「ココちゃん、何歳?」
そう聞かれて、ココは少し恥ずかしい気分になった。
「あのね、ココ、十歳なの」
ヨハンナは目を丸くした。
「年上なの?きっと、ブランカは純粋なのね!だから、ココちゃん可愛いのね」
七歳の子に、純粋といわれ、ココはますます恥ずかしい気分になる。
ヨハンナは、人間だって言った。人間は守人に似ている。
やっぱりブランカのほうが、何も知らない。
ココは、シェインたちに会って、たくさん新しいこと覚えたけど、でも、まだ、ヨハンナのほうがずっといろいろ知っている。
「ヨハンナはすごいね」
そういって笑うココに、ヨハンナは少し顔を赤くする。
「ううん、私は普通よ。だって、ほら、ママのこと助けなきゃいけないんだから。ママができることは何でもできるようにならないといけないの」
今も、暖炉にくべる薪を運びながら、ヨハンナは笑った。
ココも、それを何とか持って歩く。たまにバランスを崩しそうになって、翼をパタパタさせた。
「ココちゃんだって、えらいよ」
「なにが?」
「だって、ママもパパもいないのに、いつもニコニコしていて。優しいし。素敵だもの」
「?すてき?」
「そう、素敵。憧れるの。ほら、ママと私はよく喧嘩するでしょ?ココちゃんは、何にも怒らないし、我儘も言わないし。えらいよ」
「ココ、ヨハンナとママの喧嘩、嫌い」
「…ごめんね」
そう、小さく言って、暖炉の脇に、薪を下ろした。
ココも続く。
「ううん。えと、悲しそうだから。喧嘩していて、いつも、悲しそうだから。ココも悲しくなるの」
「ココちゃん、優しいね」
ヨハンナが手をつないできた。
ココも握り返す。

「二人ともありがとうね!さあ、今から夕方までは好きに遊んでいていいわよ。ママは縫い物を少ししているから」
ママがニコニコして言った。
今日は、昨日よりも優しいみたいだ。
ココは、ヨハンナの手を引いて、外に連れ出した。
「あのね、あのね、ココを拾ったとこに、連れて行って」
家の庭の、雪の塊があちこちにある小道を、少し早足で歩く。
皮のブーツに、やわらかい解けかけの雪がクシャクシャと当たる。その感触を楽しみながら、ココはヨハンナを振り返る。赤いヨハンナのコートを着て、頭に真っ赤なニットの帽子をかぶって、ココはまるで小さなサンタクロースのようだ。
「あのね、ママがね、だめって言ったの」
「どうして?」
ヨハンナは、立ち止まって、手を引こうとするココの手を、逆に引っ張った。
「ココちゃん、エノーリアっていうところに帰っちゃうんでしょ?ママが嫌がるの。ずっと、一緒にいるって言うの。それは、ヨハンナもそうしたいのよ。それにね、パパがいなくなってからずっと、ママ悲しそうで、でも今ココちゃんがいるからママも楽しそうなの。だから、ココちゃんにはずっといてほしいの」
ココは、悲しげにもう一度ヨハンナの手を引いた。
「ココ、シェインに会いたい、カータにも、ラタにも…」
「ごめんね、ごめんね」
ココが金色の瞳に涙を浮かべるので、ヨハンナも泣き出した。
それを見て、ココももっと悲しくなる。
どうしていいのか、分からなくなる。
二人で雪の庭に座り込んだ。
しばらく泣いて、不意にココが言った。
「ココ、エノーリアに帰っても、また、きっと会いに来るの。きっと、エノーリアに行ったら、今度はヨハンナに会いたくなるよ。ママの美味しいスープ、食べたくなるよ」
「それでも、だめ。それなら、帰らなくてもいいじゃない!ずっと、ヨハンナといるの」
「でも…」
向かい合って、地面に膝をついている。ママが縫ってくれた皮のズボンにじんわりと冷たい水がしみこむ。
「じゃあ、ココちゃん、ヨハンナと結婚するのよ!結婚するとずっと一緒にいるんだって。死ぬまで一緒にいるって約束するの。そうよ、そうすればいいんだわ!」
「けっこん?」なんだか、所有の契約みたい。ココは思った。
「決めた!いい?ココちゃんは、ヨハンナと結婚するの。そうして、ずっと一緒にいるの」
首をかしげる。ココを、所有するっていうことかな。
「きっと、ママも喜ぶわ」
なんだか、どきどきした。
それは、いけないような気がした。
シェインが言っていた。カータと契約するんだって。ココは、ココがそういうのをするなんて考えたことない。
どうしよう。
うつむいてしまったココを、ヨハンナは、覗き込んだ。
「ヨハンナのこと、嫌い?」
ココは首を横に振った。
不意に、ココの頬にヨハンナが小さな手を当てた。
「なあに?」
手が冷たい。
「ヨ…」
言おうとした口を、ヨハンナの口がふさいだ。
「!?」
「ふふ。ココちゃん可愛い」
どきどきした。
なあに、今の、なあに?
聞きたくても聞けなかった。
抱きしめられて、もっとどきどきがひどくなった。
「大好き!」
ヨハンナが言った。
「だいすき?」
「そうよ、ココちゃんのことが大好き!」
ココは説明のつかない感情に涙が出てきた。
それはポタポタと、雪の上に吸い込まれた。

 「片翼のブランカ」続きはこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-82.html


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genre : 小説・文学

こんにちわ^^
とうとう18話まできました☆
途中本当にいろんなことがあって、涙ぐむシーンもあったりで
一気に読みふけっちゃいましたよ!
早く続きが読みたいけれど・・・お昼休みが終わってしまう(笑)
ココは今どこにいるのでしょう?異世界に飛んできた??
ドキドキが続くなか、ひとまずここで止めておきます^^

また今夜!

団長さん(TT)

テスト期間中にも関わらず!
ありがとうございます!
らんらら、がんばります!
でも、次の作品、迷っているので…
ちょっと、更新引き伸ばしちゃおうかな(ずるい?)
でも、でもでも。(こういう時って、考えちゃいますよね^^;)
とにかく。
物語の展開が速くなっていくので、細切れはしません。
もともと一話ずつが長いのだけど…。
団長さん、無理しないで、読みに来てね(?)


龍くん

ありがとう!
今回ちょっぴり、契約とか言葉とか、難しい設定にしてしまったので、上手くまとめきれるか不安大!
分かりにくいとか、矛盾しているとか。
バシバシ指摘してください。
(ちょっと、怖いけどv-12
また遊びに行きます!

eigoさん

いつも期待してくださって、嬉しいです!!
でもあんまり、現代の部分は自信ないかも…(^^;)
でも、多分、驚きはないけど、ちょっと印象に残る話になればいいなと、思ってます!
eigoさんとこのON AND OFFもあと少しなんですね!
寂しいような、どきどきな感じです!
待ってます!

アポロさん

ココちゃん、がんばってます(^^;)
イロイロと…
第三章からがらりと変りますが、最後はキッチリ終わるつもりだよ!
昨夜やっと、最終話、書き終わりました。
楽しみにしていてくださいね!
これから、アポロの世界に、入っちゃいます!!
どきどきv-10

お話が大きく動きましたね!
いったいど~なっちゃうんでしょう?
話が大きくなってきて予想がつかないや(>_<*)
その分次が楽しみだなぁ☆
また読みにこなくちゃ♪
更新頑張って下さいね!!

こんばんわ

今、何とか半分程読みました。
むふぅ、面白い。らんららさんは本当にファンタジーが上手いですね、というより上手な人は何を書いても上手いわけですが、らんららさんは本当にその通りですね。
もう少ししたらまとめた感想やアドバイス、改稿案をしたいと思います。
では。

こんばんわ!!

ココが人間界に!?
うーむ、話がどんどん広がっていきますねえ。
この先どうなっていくのだろう?
カータ達はどうなってしまっているのだろう?
心配ですねえ。

うーむ。次回が愉しみです!!

しかし、らんららさんはすごい創作意欲ですね!
毎日更新ですもんね!
僕も見習わないと。でも、僕には毎日更新は無理だな(泣)
では、ぽちっと、今日の所は退散します!

ぬわ~!!

ココちゃんと・・・キ・・・キ・・キチュしたぁ
(*ノωノ)キャー
急展開ではらはらどきどき・・・。
アポロさんは~そんな展開になっちゃうと~。
いろいろ想像しちゃいますけどいいですかwwwムフフ♪♪
次回楽しみにしてます♪♪
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