08
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「音の向こうの空」第二十一話 ⑦

第二十一話:ヴィエンヌ・オペラコンクール



マクシミリアン候の屋敷の広間で、全員が集まっていた。見学に行った出演者だけではない、大道具やプロンプター、照明の係りまで。全員だ。

舞台の上に立ったまま腕組みをするもの、自分の席に座り落ち着かない様子で足を揺らすもの。彼らの視線をピアノの前に座ったままオリビエは一身に受けていた。

黙り込んでしまったオリビエは、誰が何を言っても口を開こうとしない。エミリーが詰め寄ろうとすれば、庇うようにリエンコがオリビエの前に立った。

「いい加減にしなよ!黙ってたんじゃ分からないよ!言えないってことは、あんたが、盗作したってことなのかい!?」
だれもが、怖くて口に出来なかったそれを、エミリーが鋭く突きつける。

「……そんなことする奴じゃないだろ?」
「そうよ、きっと、あいつらが」
「だけど、どうやって?確かにこのオリビエの楽譜は、オリビエの字とは違う」
それは、オリビエが編曲した時の筆跡とまったく違っている。誰が見ても、明らかだ。
「あんた、あのアーティアと知り合いなんだろう?裏切られたんだろ?楽譜、渡したの?それとも書いてもらったの?」
問い詰められても黙ってうつむいたまま、オリビエはじっと何か考え込んでいる。その肩にリエンコが手を置いた。
「よくない、男です」
庇う必要など、ないではないですかと。リエンコの視線は語る。
「……」

アーティアが楽譜を写し取るとすれば、最後に会ったあの日。僕が作曲したものを楽譜にした、あの日だ。
ビクトールに蹴られた僕はそのまま寝室へと休み、アーティアは一人階下へ。
あの時、ヨウ・フラは僕を心配しそばにいた。
あの翌日アーティアは。侯爵様に、オルガニストの件を密告したのだ。
どうしてそんなことを。問いかける自分の内のもう一人は理解している。成功したいのは、誰も同じ。欲が出ることもある。友達と偽って騙すことだって、やる人はやる。
じゃあ、最初からそのつもりだったのか。
初めて出会った、あの時から?

オリビエは小さく首を横に振る。

「何とかいいなよ!あんた、皆を裏切るつもりなのかい!?」
エミリーが怒鳴る。
「どっちでも、いいさ。そうだろ?」
アントニオの言葉に皆が舞台に寝転がる男を見つめた。エミリーの矛先は素早くそちらに方向転換。
「何を悠長なこと言ってるんだよ、アントニオ!」
「黙って聞け。どっちがどうって、もう相手のは公開されちまった。後でやる俺たちが圧倒的に不利だ。同じものやるんだ、どっちがどう盗んだとかじゃない、問題は俺たちのオペラをどうするかだぜ」

静まり返った。
「やっぱり、あんた、疫病神だよ」
エミリーの呟きはオリビエに突き刺さる。
「あんたが災厄を運んだ。それが気に入らないんだよ!責任とりなよ」

広間は静まり返っていた。
「皆さん、お帰りなさい!」と、顔を覗かせた無邪気なアマーリアを、様子を悟ったメイドがとどめる。レイナドが今はダメだとメイドに首を横にふり、同時に立ち上がったヒルダと供に、少女は扉の向こうに消えた。
「なあに?ねえ、ヒルダさん、だめなの?」わずかに少女の不満げな声が響く。
その閉じた扉を見つめていたオリビエは、再び視線を床落とした。
その手はぎゅっと握り締められたまま。

「エミリー、君の言うとおりだ。オリビエに責任を負ってもらう」
レイナドが睨むリエンコを無視し、その向こうのオリビエに向かって話し始めた。

「オリビエ、今からすぐにアリアを全曲、作曲しなおすんだ。それ以外の演奏はすべて、君の即興の演奏で乗り切る。オーケストラを合わせる時間もないし、楽譜を書く間も惜しい。アリアだけなら、歌う歌手が覚えるだけで済むから明日の朝には間に合う。エミリー、アントニオ、オペラはどうやっても歌なしじゃ成り立たない。大変だろうが、君たちにかかっている」

ざわ、と楽団の皆が顔を見合わせる。
「あたしたちはプロだからね。できるさ。坊やは、どうなのさ」
「……やります。失敗したら、全部、僕の責任です」

「よし、そうと決まったら独唱のアリアから行くぞ。アントニオ、君は全部で四曲だったね。他の歌手は妨げにならないよう別室で待っていてくれ。楽団の皆も、だ」

レイナドの指示で、広間はリエンコを含めた四人だけになる。

次へ♪
関連記事
スポンサーサイト

Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。