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「音の向こうの空」第二十一話 ⑧

第二十一話:ヴィエンヌ・オペラコンクール



ピアノの前に座り、オリビエは白いそれに映る自分に溜息を吐きかけていた。
アントニオはオリビエの肩に手を置き、「まあ、気楽に行こうぜ」と笑ってくれた。
黙って頷くオリビエに、レイナドが話しかけた。
「オリビエ、君が何を考えて黙っているかは想像できる。あの曲は以前君が言ったとおり、すべて君が書いたものだね。皆には言わない、約束しよう。だから私たちにだけは本当のことを言って欲しい」

オリビエは顔を上げた。
そうだ、確か原曲の楽譜を持ってきたときに、アーティアに書いてもらったとレイナドに話したのだ。

「まず、私から話そう」
レイナドは傍らの椅子を引き、座った。
「私は以前、オリビエに台本を渡すため侯爵家を訪問した。その時、オリビエの友人としてアーティア・ミューゼと出会った。あれはまだ、初夏だったね。それからしばらくして彼が突然私を訪ねてきた。あの楽譜を持ってね。この作品を見て欲しい、これでオリビエの代わりに自分を雇って欲しいと。私は、彼の演奏を聴いたことはなかった。だから、聞かせてくれと頼んだ」

オリビエはあの日、レイナドに出会ったことに興奮し喜んでいたアーティアを思い出す。
なぜかオリビエに対して意地悪だった。

「けれどね、オリビエ。アーティアは君とは違う。あの楽譜に書き込まれた全てをアーティアは演奏できなかった。演奏できないものが、それを書いたと言い張る。私は曲を聞いてとっさに君を思い浮かべた。君なら楽譜に書かれていないものも表現するだろうと。彼の様子から君の作品に違いないと確信した。だから、アーティアの申し出を断り、追い払った。自分以外の誰かになろうとしてもそう簡単には行かないものだと、そう、彼を諭した。まさか、シュタイアーマルクの楽団に入っているとはね。今回、彼は随分努力してきたんだろう、張り詰めたいい演奏だった」

オリビエはそこで微笑んだ。
「はい、アーティアの演奏はよかった。彼は、音楽家でいるべき人です。あの、楽譜は。僕が即興で演奏したものを、彼が譜面に写してくれたものです。その日以来、アーティアは姿を見せなくて、僕のほうもごたごたしていたから」
やっぱり、とアントニオが派手に頷く。
「でも、アーティアの文字だし、僕が演奏したものだという証拠なんかない。これがアーティアなら、きっと何かしら自分の作品を護ろうとしたはずなんです。僕には、音楽家としてそういう部分の意識が足りない。結局、僕の落ち度なんです」
アーティアはこんな危険な真似をしてでも、音楽家として生きようとしている。正しくはないかもしれない、だけど、その意識は立派だと思う。

「ほんと、乙女ボウヤだな。呆れるくらいお人好しだ」
アントニオが腕を組んで睨む。
「すみません……」
「友達も恋人も、何を犠牲にしてでも音楽家として生きる、ま、あの男の行動は理解できる。獣の世界と同じ、弱者が敗者だ。俺なら、あの男を蹴倒してでも自分の作品だと認めさせる。あの男が二度と楽器に触れられなくなっても平気だ。向こうもその覚悟さ。こっちに牙をむいているんだ。だが、お前は違う。獣たちの中、一人まっとうな人間でいる。噛み付かれても耐えようとしている。だから逆に、エミリーじゃないが、お前を見ていると苛立つんだ。お前はどこか必死じゃない。何か、欠けている。性格なんだろうし、悪い奴じゃない。嫌いじゃないさ。だけどな。だからこそ、周りが心配して気をもむんだ。そうだろう?」

オリビエはアントニオの顎が示す方、つまり傍らのリエンコを見つめた。
リエンコは小さく肩をすくめた。
「オリビエ様は、可愛いです」
ぶ、と。アントニオが噴出す。
「ま、オリビエ、今回は必死になってもらわないとね。皆の未来がかかっているんだ」
レイナドの言葉にオリビエは頷いた。

「あの作品をオーケストラの皆と演奏できないのは悔しいけど、やっぱり僕は誰かを蹴落とそうとは思えない。ただ。僕は、僕の最高の作品を演奏してみせます。生まれて初めて、皆で一つの作品を作ってきて、とても楽しかった。いつも一人きりで演奏してきた僕にとって、こんなに楽しいことはなかった。何の問題もないなら本当にずっと、この歌劇団で作曲し、演奏したいと思いました。多分これが、アントニオやエミリー、レイナドさんと演奏する最後だと思う。だから、絶対に後悔しない物にします」

次回、第二十二話:「そこから見つめる未来」は2月2日(月)公開予定です♪

らんららです♪日記もサボりすぎなので(笑)ここに生きてるよ~ってメッセージをば。
現在、ヴィエンヌ編の次を書き始めております…オリビエ君の未来。
結末に向かって、すべての物事が静かに動いています。

ピアノの音。この物語を書いたことで興味を持って習い始めたわけですが(←影響されやすい)
つくづく、音色の美しさにうっとりです…オリビエ君の時代、モーツァルト、ベートーベン、あたりですか。
でもらんららが妄想しているオリビエ君の演奏は、少し後のショパンのそれに近いかな。
特にノクターンが好きなので、ぜひ、聞いてみてください♪ノクターンという分類はオリビエ君の時代にはまだ、出来ていなかったらしいです。(でも作中で使ってしまったな~許して…^^;)

まだまだ、知れば知るほど深い歴史と音楽の世界。
少しでもその魅力を感じ取っていただけたら嬉しいですっ!
では、また。二週間後に~!!
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藤宮さん♪

オリビエ君、もどかしい性格ですよ~(笑)
きっと、読者さんはヨウ・フラやアントニオ的な気分なのだろうなぁ~なんて思いながら書いています!でも。
はい。
皆に「おおっ!?」と思わせる行動を取るときがいつか…いつか…(遠い目)

そうそう、藤宮さんの予想通りなのです(笑)
読まれてる~って。思いましたもん♪
藤宮さんと発想が似ているなら嬉しいことです♪

ノクターン。いいですよね~♪
オリビエは基本的にピアノの独奏曲しか作りませんし、侯爵様のために静かな夜を演出するのです♪
うう、いいなぁ~誰かに自分のためにピアノを弾いてもらいたい~藤宮さんは確か、ピアノ弾けるんですよね~、いいなぁ~(^∇^)

続き、がんばりますっ♪
また来てね~!!

波乱が…

うー、何というか、オリビエ君の受難は続きますね…。

と、いうか、前の予想は意外と当たっていたのでしょうか。
まあ、先は全く予想ついてなかったですけどね~(笑)

…アーティアは、そう悪い人ではないんでしょうけれど、盗作は許されないことだと思います。
それを、庇うオリビエ君は、確かに優しいんでしょうけど…。
もっと、怒ってもいいんだよ?と、ちょっと言いたくなりました。

…それが、オリビエ君の良いところでもあるんでしょうが。

さて、次は二月ですね!
これからオリビエ君がどう乗り切っていくのか。
また、こっそり追いかけさせてもらいますね!

そして、ノクターン、夜想曲。
ショパンのものが一番有名ですが、抒情的な感じで良い曲ですよね…。

なかなか、来られませんが、更新心待ちにしてますね♪

kazuさん♪

ありがとう~♪

ノクターン、全部で19曲ありますが、12番とか、3番が好きです!いつか自分で弾いてみたい~と無謀なことを考えていますが。

もともとは、オリビエが演奏するときの気持ち、感覚を共有したくてピアノに興味を持ったのですが。いまや、癒しとストレス発散に欠かせなくなってます♪
まだまだ、苦労しそうなオリビエ君ですけど~応援してやってください♪

うぐぐ@@;

らんららさん、こんにちは^^
マクシミリアン候、なんちゅーかもう・・・
そこまでの憎しみを、侯爵様に持っているって分かっていても、アーティアとオリビエくんがかわいそうになってしまいます;;

対抗する楽団にアーティアがいるだけじゃなくて、オリビエくんの作った原曲を基にして作曲したなんて。

それを庇おうとするオリビエくん、優しすぎます><
アントニオさんの言葉が、ホント沁みますね。

どうなっちゃうのか、ドキドキしながら、2月!
待ってますね^^
ノクターン、聞いてみます♪
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