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「音の向こうの空」第二十二話⑤

第二十二話:そこから見つめる未来



「レイナドさんは?」
控え室で紅茶を貰い、少し落ち着いたオリビエはいつの間にか人の減った室内を見回した。
気付けば室内にはアントニオだけ、他の歌手と楽団の皆は午後からのティロル伯領のオペラを観るのだとつい先ほど出て行った。
「あの人は営業活動さ。この会場に来ている貴族や諸侯に掛け合って、出張公演なんかを取り付けてくるんだ。たとえ賞が取れなくても、コンクール作品だと銘打てば各都市で人気が出る。拠点はバイエルヌでも、そこから動いちゃいけないってことはないからな」
「ふうん。……あの」
オリビエはカップを膝に抱える。少しだけ残った紅茶はランプの明かりをきらりと跳ね返す。
この劇団で、様々な町へ行って公演する。
それはひどく魅力的で、オリビエの心を揺らす。
「ま、お前は辞めるんだろう?」
アントニオの一言は明るく、優しく、「気にするな」と言っているように思える。

「僕は。本当は、リツァルト侯爵様にお仕えしながら、続けられるなら…」
「オルガニストは辞めるのか?」
「あ……」
「教会のオルガンもよかったが、俺はお前の才能はやっぱりピアノが一番発揮できると思う。まあ、オルガニストって職は安定しているからな、捨てがたいだろ。オリビエ、いろいろやってみるのも大事だろうけどな、何もかも一度にやろうなんて、贅沢だぜ」
オリビエは小さく頷いた。
「僕のオルガンを…聞いてくれていたんですか」
アントニオは肩をすくめた。「あの頑固なエミリーを説得するのに、俺が努力してないとでも思うのかい?」
エミリーと教会に来てくれたんだ。
「ありがとう。あの、また機会があったら是非、手伝わせて欲しいんだ。すごく、楽しかった。いつも、たった一人で演奏してきたんだ、だから」
背中を叩かれた。
「俺たちは仲間だ。いつでもお前を歓迎するし、レイナドなんか、誘拐してでも連れて行きたいって本音では思っているさ。そうなったら兵隊王の兵士と同じ、逃げ出せばむち打ちだぜ?」
「冗談でも嫌です」
身をすくめて背を叩くアントニオを避けるオリビエに、いつもの大きな笑い声で応える。
「なあ。お前がこの町のパールス教会にいてくれるなら、俺たちはいつでも会いに来られるだろ。お前の演奏を聞けるんだ。流れ者の俺やエミリーには、そりゃ故郷が一つ出来たようなもんだ。だから。お前はこの街で俺たちを待ってろよ」
「待つんですか?」
「ああ、で、いつでも俺たちをもてなす。うん、そりゃいい考えだ」
「随分ですね」
笑いながら、肩を叩きあう。
二人はリエンコが呼びに来るまで、他愛ない話を続けていた。


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