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「音の向こうの空」第二十三話⑤

第二十三話:強く、強く。



夜通し続いた祝宴も朝日が照らせば幸せな疲労感を体に残す。
オリビエはいつ自室に戻ったかも覚えていなかったが、ぼんやりと天井を見上げ寝転んだまま伸びをした。
ここちよい枕を振り返ると抱きしめ、もう少し眠っていたい誘惑に耐え切れずに顔を押し付ける。
幸せなまどろみは扉を叩く音で破られた。


リエンコだろうと「どうぞ」と枕の中から声を出す。
「まだ寝ているのか。午後には宮殿に招かれているのだろう?」

オリビエは顔を上げた。
リツァルト侯爵は濃紺の上着に白いスカーフ。きっちりと帽子を被った姿は、どこかで見たような。
オリビエは慌てて起き上がると、床に裸足で降り立ち挨拶をする。
苦笑いする侯爵の背後で荷物を抱えたリエンコがくすと笑みをこぼした。

笑わなくても、とそちらをチラと睨むとオリビエは
「おはようございます。あの、朝早くからお出かけですか」と荷物と侯爵の姿を見比べた。
侯爵が手にしたコートから、工場でないどこか遠いところに行くような気がした。

「お前に、話しておきたい事があってな。わしはこれからクランフ王国へ向かう」
クランフ王国。
「そ、それは?あの、エスファンテに帰られるんですか!?」
それとも、アンナ夫人を追うのか?
侯爵が目を細め、リエンコに「荷物を馬車に」と指示した。リエンコは一礼して扉を閉め、室内は二人きりになる。
明るい日差しを届ける窓から、パールス教会の鐘の音が入り込む。

「あの?」
侯爵は苦笑いした。
「オリビエ、わしはアウスタリア軍の一人として、戦場に向かう」
え?
「そ、そんな、こんなに突然ですか?あの、戦争って、あの」
「亡命貴族どもをな。統制する人間が欲しいそうだ。我らが亡命の折、越えたライン川を覚えておるか?あの場所よりずっと北部になるが、マインツの辺りの川岸で戦線がしかれているのだ。そこへ向かう」
「……本当に、あの、侯爵様は戦争に反対だったのでは…?」

「護るべきもののためになら、戦わねばならんときもある」

昨夜の幸せが嘘のようだ。
馬鹿みたいに明るい日差しが足元にかかり、オリビエはそれを睨むように見つめていた。その先にある、侯爵の長靴が憎らしいほどつやつやしている。その姿で、まるで新兵のような真新しい姿で。僕を置いていくのか。毎日侯爵の帰りを待って、世話をしてきたメイドやリエンコを、置いていくのか。
冗談のような、いや、夢を見ているのかもしれない。

オリビエはもう一度、ごしごしと目を擦った。

「お前にな。話しておきたいのだ」
夢の中の侯爵は、ホンモノのようにいつもの仕草でオリビエに座るよう示す。オリビエは黙って自分のベッドに腰を下ろした。

おかしい。
こんなこと。

何度も首を横に振るオリビエに、深い溜息が聞こえた。
顔を上げれば、椅子に座り少しだけ首をかしげてオリビエを見下ろす侯爵がいる。
ホンモノ、なのか。
夢ではないのか。

「一度しか言わん。だから、しっかり聞きなさい」
リツァルト侯爵の厳しい口調にオリビエは姿勢を正した。

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