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「音の向こうの空」第二十三話⑦

第二十三話:強く、強く。



なぜ、リツァルト侯爵が戦場に向かうことになったのか、誰も教えてくれなかった。ヨウ・フラは「さあ、理由までは知らない」とそっぽを向き、リエンコは「リツァルト侯爵様でなくてはお勤めできないです」と。
「だけど、侯爵様は戦争は嫌がってたはずなのに」
一人心配するオリビエに、「信じて待ちましょう」とリエンコは笑った。


その日の午後、宮廷からの迎えの馬車が来ても、オリビエの気持ちは晴れない。初めて入るホーフブルク宮殿もあまり興味をそそらなかった。
衛兵を見るたび、その制服が今朝の侯爵を思い出させ悲しい気分になる。
「おい、しっかりしろよ。二日酔いか?」
アントニオが背中を叩くのもどこか遠い感覚で聞き流した。
近衛兵たちが整列し、警備のためだろうか行進しながらオリビエたちより先に広間へと入っていく。まるで軍隊だ。
またそんなことを考え立ち止まっていると、丁度馬車で到着したマクシミリアン候が降り立つのを待つ形になった。
先に降りて扉を開くジースト。

突然、なにか。
オリビエは思い出した。

マクシミリアン候はこの件が終われば連合軍の将校として参戦する。戦場でこそあの方は生きる。
その大公様がお前にこだわり、参戦を遅らせてまでコンクールに参加させる理由が分かるか?リツァルト侯爵からお前を取り上げる、そんな程度で済むはずがないだろう?
そんなふうにジーストが言った。

戦場。
侯爵様が何かマクシミリアン候と話しをして、僕への暴力はなくなった。
マクシミリアン候はもう僕には手を出さないと、侯爵様はおっしゃった。
それは、まさか。

自然睨みつけるオリビエに、すれ違いざまにジーストが拳を振り上げた。
「!」
寸前でアントニオがオリビエを庇い。
ふん、と笑いながらジーストはマクシミリアンの後を歩いていく。

「なんだ、あいつ」
「…マクシミリアン候は、戦争に、行くのかな」
「あ?」
オリビエの呟きにアントニオは聞き返す。
「だから。あの」
「マクシミリアン候はライン戦線の指揮官として参戦なさるそうだ。あの人にとっては歌劇団なんかどうでもいいのさ」
ライン戦線。侯爵様が派兵される、同じ戦場だ。

オリビエは唇を噛んだ。
僕は。護られるばかりだ。


広間でレイナドやエミリー、ヒルダたちと合流し見守る貴族たちの中でバイエルヌ歌劇団にこの年最も優れたオペラ作品の栄誉が与えられた。
オリビエたちの前に立つマクシミリアンは皇帝レオポルト二世に恭しく頭を下げ、場内からの拍手に笑顔で答えた。
「オリビエのピアノは本当に素晴らしかった。宮廷歌劇場での公演にはまた違う演奏をしてくれるのだろうな」
レオポルト二世の言葉にマクシミリアンは困った顔をした。
「オリビエとの契約は……」
「はい、あの。皇帝陛下」
オリビエが進み出るとマクシミリアンの隣で膝をついた。
「私の演奏だけでなく、このバイエルヌ歌劇団を支えるオーケストラが素晴らしい演奏をお約束します」
「うむ。楽しみにしておるぞ」
マクシミリアンの視線を感じながらオリビエは頭を下げる。

皇帝が二位のシュタイアーマルクの劇団へと言葉をかけに向かうのを見送りながら、オリビエは立ち上がる。
「お前は」眉をひそめるマクシミリアンに、オリビエは一つ息を吐いた。
ここで。僕が強くならなきゃいけないんだ。

「バイエルヌの歌劇団全員をこれからも雇ってください。その条件でなら、僕はご協力します。必要でない劇団員は一人もいません。皆、貴方を劇団の庇護者として尊敬しています。だから。これからも、彼らを大切にしてください」
ジーストが一歩前に出ようとするのを、マクシミリアンは手を上げて制した。
「ふん。生意気なことを言うようになったものですね。どちらにしろ、私は不在になる。劇団の運営はレイナドに任せます。好きにするといい」
ふわとした毛皮のマントを翻してマクシミリアンが背を向ける。オリビエは顔を上げた。柔らかく強い、オリビエの真っ直ぐな視線は。何を感じさせたか、ジーストを立ち止まらせた。

「侯爵様を」
マクシミリアンの背中が止まる。
「リツァルト侯爵様を、お願いします。貴方は類希な才能をお持ちです。そして、部下の信頼厚い指揮官だと伺いました。優れた指揮官とは部下の命を救うものだと。ですから」
侯爵様を…無事に帰して欲しい。

「部下が馬鹿でなければ、な」
振り返りもせず、マクシミリアンは歩き出す。

もし、僕がリエンコなら。腰に武器を持っていたなら。
迷わず目の前の敵に向けていたかもしれない。それがどんなに意味のない、一撃だとしても。なのに。僕は。
護られるばかりだ。

アントニオが肩を叩き、エミリーが手を握るまで、オリビエは凍りついたように立ち尽くしていた。

次回「第二十四話:待ち、願う」は3月2日公開予定です♪

さて…
やっと侯爵様の気持ちを語ることが出来ました…。
オリビエにもっとも深く関わってきた侯爵様の生き方。どう思われました~?
どうなってしまうのか、オリビエはどうするのか。
次回、お楽しみに~♪
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藤宮さん♪

ありがとう~♪
人間味ある…嬉しいお言葉です!
迷ったり失敗したり、アンナ夫人みたいに暴走したり(笑)
そういう不可解でかっこよくない行動が案外好きだったりします~♪

ネットが見られなく???
何か事件?
それとも春から新生活~♪?
…だとしたらそれはイイコト♪

奏でる音の道行き…?

なかなか人生ままならないもの…、と言いますか。

オリビエ君にも苦悩があるように、侯爵様にも言葉に出来ない想いがあったのですね…。

罪悪感、けれどそれだけじゃない。

アンナ夫人の悲しい過去にも、少し驚きましたが。
侯爵様の語る言葉は、ある意味とても人間らしくて、今まで本音が見えなかった分、強く響きました。

オリビエ君と侯爵様の道は、今分かれて。
また交わることを祈るしかないのですが…。
願わくば長い道の先で、笑って出会えることを。

…読者としては、そう願わずにはいられないのです~。

次の更新、また楽しみに待っています!
いつものように、柱の陰からこっそり、じーっと(笑)

…あ、でもネットが見られなく(泣)

kazuさん♪

コメいつもありがと~♪
支えられてますよ~♪
侯爵様、ずっと口数少ない人で、よく分からなかったけど、こういう考えだったんです。
純粋に芸術としてオリビエの音楽にほれ込んでいる、というのが最初の設定だったのだけど、子どもの頃のオリビエの音楽を聞いただけでそこまでほれ込む、というのも随分現実離れした設定だと思いまして直しました。(浮世離れした設定も返ってオリビエの才能を印象付けるとは思ったのだけど…)

人が誰かのそばにいる、というのには、本当は理由がある。語る必要もないけど、理解する必要もないけど、やはり理由がある。

そばにいる間は必要なかったけれど、離れなければならなくなったときに、初めて「言葉にしなければ」と侯爵様は思ったんだと思うんです。

次回、むむ~怒られないように謝っておこう!!(←?)
オリビエ君の冒険はまだまだ、続くのです~!!

罪悪感・・・

罪悪感が侯爵様の心を占めていたのですね。
だからこそ、オリビエくんに対してあのような態度をとりつづけてしまった・・・と。
アンナ様の哀しい過去。辛いけれど。
せめてそのときの事を、忘れないでいてくれたのなら。
オリビエくんの苦悩も、少し和らいだのではないかと思ってしまいました。

深い、です。
罪悪感の中生きてくるのは辛かったけれど、今はオリビエくんがきっと侯爵様の支えなんですね。

お願いです、マクシミリアン候。
侯爵様を、無事に帰してください。
心から、願うばかりです。

オリビエくん・・・頑張れ!!
次回、楽しみにやってきます^^
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