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『音の向こうの空』第二十四話②

第二十四話:待ち、願う



「皇帝陛下に頼むんだから、大丈夫だからさ。オリビエが責任を感じることなんかない、いいね」
オリビエは小さく頷いたようだ。
「侯爵様は。オリビエの代わりに戦場に向かったんだ。僕が調べた限りではアウスタリア軍の将軍はリツァルト侯爵の戦歴や経験、亡命貴族に対する指導力を必要としていた。でも侯爵様は年齢を理由に断っていた。そこにマクシミリアン候が将軍に入れ知恵したんだ。オリビエも亡命貴族。それも、二十歳から二十五歳という徴兵に当てはまる年齢。将軍はマクシミリアン候の私的な思惑なんかどうでもよかった。利用できるものを利用しようとして、オリビエを徴兵する代わりにと、侯爵様を呼んだんだ」
将軍。以前、マクシミリアンの屋敷で彼の前で演奏したことがある。あの場に将軍がいたこともマクシミリアンにとっては意味があったのだ。マクシミリアン候、穏やかな表情しか思い浮かばない。それがまた寒気を誘い、オリビエは小さく身震いした。
僕のために侯爵様は大公と話をした。それがどんな取引を導いたのか推測できる。
「……マクシミリアン候の、狙い通りなんだよね?僕への暴力を辞めさせようとして、侯爵様は」
命のやり取りにこそ価値を見出す彼らが、逆恨みする侯爵様に望むのは命。戦場で侯爵様がどんな目に遭うのか。オリビエは唇を噛んだ。
ずっと、毎晩のようにうなされた悪夢。
僕のせいで侯爵様は死んでしまうかもしれない。

「オリビエ様に心配させないように、黙っていることを約束しました」
リエンコが口を開く。
「でもさ、なんだか。逆効果だったからさ。余計にオリビエを苦しめちゃってると思うんだ。だから話すことにしたんだ」
ヨウ・フラはオリビエの両手を取って強く握り締めた。
「オリビエ。考えてみなよ。マクシミリアン候は確かに、有能な指揮官かもしれない。だけど、将軍にとってはリツァルト侯爵様も同じくらい重要な人材なんだ。当然、マクシミリアン候の身勝手な遺恨なんか晴らさせるはずはないんだ。きっと、侯爵様を護ってくださる。みすみす殺させたりしないさ」

「ヨウ」
「心配なら心配って言ってさ、戦況を知りたいなら僕に聞いてくれればさ、いつでも、できる限り力になるんだ。そういっただろ?オリビエ、あれ以来、侯爵様のこと何にも言わなくなってさ。悲しい曲ばかり演奏するくせに仕事ではいつもニコニコしていて、痛々しくてさ、こっちが参っちゃうよ」
痛々しい。情けない響きに幾度も瞬きする。
「泣いてもいいです」
リエンコの言葉に、オリビエは噴出した。
「リエンコまで!大丈夫だよ、僕は」
「僕らだけじゃないよ、オリビエ。エリーゼも、ロスじいも、ルードラーさんも。劇団の皆も。たくさんの人がオリビエのこと心配している。オリビエ、分かってないんだ。オリビエが思っている以上に皆はちゃんとオリビエのこと見てるんだからさ」
オリビエは黙った。
何を口にしていいのかわからず、思わず動いた手は鍵盤に向かおうとする。
「っと、待った。オリビエ、それは宮殿に行ってからだよ。まずは着替えてさ、ほら、侯爵様のためにも宮殿で最高の演奏してさ、皇帝陛下に訴えなきゃいけないんだからな!」
そう手を引かれ。リエンコに背中を押され。
オリビエは自室へと連れて行かれる。
いつの間にかオリビエよりずっと男らしくなっているヨウ・フラ。そばで口数少なく護ってくれるリエンコ。通り過ぎる廊下の脇から、ちらりとのぞいて微笑むメイドの二人。
「こんばんは」とエントランスの扉を開く可愛らしいドレス姿のエリーゼ。

感謝しなくちゃ。
オリビエは笑いながら少しだけ泣いた。

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