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『音の向こうの空』第二十四話⑥

第二十四話:待ち、願う



オリビエの祖国、クランフ王国は戦争の渦中にあった。右も左も前方も敵に囲まれていた。後退は出来ない、それが新しい民主主義への一歩だったからだ。
アウスタリア帝国は周辺の領邦、サヴォワもプロシアも力を合わせクランフ王国の王政を護ろうとしていた。人民が共和制を敷き自ら政治を行う、それは専制君主制あるいは啓蒙君主制を維持してきたそれらの国々にとって脅威だった。
すでに、国境の都市は市民からクランフの共和主義に歩み寄りを見せ、王政の支配から逃れようとしていた。
この年の八月、ついにクランフ王国の王家は国民議会によって幽閉された。
各地での戦闘は激しさを増していた。
十月。ライン戦線からのアウスタリア軍撤退の報が入ると、オリビエは待ちきれず、ヨウ・フラと供にミュニックまで迎えに出た。


郊外の丘にそれでも軍隊の様相をして、アウスタリア軍は戻ってきた。
並ぶ馬と人は、列を成してはいるものの整然とはほど遠く、誰もが疲れ果て、やつれていた。
そんな中、馬車の姿を認め、オリビエは駆け寄った。その脇に立つ馬にはジーストが乗っていたからだ。
「ジーストさん、侯爵様は」
大柄な男は馬上からちらとオリビエを眺め。ああ、という顔をした。
「亡命貴族どもは」
引き締まるオリビエの表情に苦い笑みを浮かべ、男は続けた。
「まあ、彼らのおかげでわれらは逃げ延びた、といえるだろうな」
「それは、どういうことですか!」
進み続ける馬の脇でオリビエとヨウ・フラは食い下がる。
馬が煩そうに尾を振っているが、気にするはずもない。
「私から説明しよう。我が宮殿に来なさい。アマーリアも喜ぶ」
馬車からのぞいていたマクシミリアンが声をかけた。
オリビエたちは顔を見合わせ、とにかく自分たちの馬車に戻った。



「オリビエ!」
駆け寄る少女はまた一段と女性らしさを増し、オリビエの腰にしっかりしがみついた。
「アマーリア、お父様にまずご挨拶でしょう?」と母親にたしなめられ、慌てて少女は顔を上げる。
「オリビエ、後で、ね」とウインクを残してマクシミリアン候に駆け寄っていく。
「なんか、久しぶりに見たけど相変わらずだな」との感想はヨウ・フラだ。
黙って肩をすくめるリエンコに背後を護られながら、オリビエは視線を合わせた夫人にお久しぶりですと挨拶する。
主の帰還に宮殿内は沸き立っていた。
オリビエたちは客人としてもてなされてはいたが、広間で行われた晩餐会に参加する気分でもなく、与えられた部屋で三人はじっとしていた。
「ね、ほら」と、ノックと供に扉が開かれ、アマーリアが顔を出した。
「あのね、お父様がオリビエの演奏を聞きたいのですって」
室内の湿った空気など気にすることもなく、太陽のような少女は笑ってオリビエの手を取り引こうとする。
それを握り返し、オリビエは穏やかに笑った。
「アマーリア。僕は、大切な人を待っているんだ。今は楽しい音楽なんか、弾けそうもない。だからお断りして欲しいな」
「?」
「いいから、出て行けよ!」と。声を大きくしたのはヨウ・フラだった。
誰かに怒鳴られた経験などないのだろう、アマーリアは凍りついたようになり、オリビエに助けての視線を送る。オリビエは首を横に振った。

「もう、もう!意地悪!」と。叫びながら部屋を飛び出していった。
「ったく。何考えてるんだか」
手をつけられることなく並べられたままの食事を見て、ヨウ・フラはため息をつく。
「食事を、しましょう。オリビエ様」
リエンコが二人のグラスに水を注いだ。
オリビエはグラスを受け取ったものの、膝に置いた手で玩ぶだけで、それ以上は何もしないつもりらしかった。
ヨウ・フラは水を飲み。それから、忌々しそうに肉にフォークを突き立てた。
ちぎったパンをリエンコがオリビエに示して見せるが、オリビエは首を横に振った。

戻ってきた軍隊の中に、亡命貴族は一人もいなかった。
この屋敷の入り口で、中庭で。ずっと立ち尽くして待っていたが、待ち望んだ姿は見つけ出せなかった。
考えたくないことばかりが頭の中を渦巻き、それはいつでもあふれ出しそうになっていた。ヨウ・フラが先に怒鳴ったから押さえ込んだが、そうでなければ怒鳴りつけたのはオリビエだったかもしれない。

静かな食事が、食べているのはヨウ・フラだけだったが、終わろうとしている頃。ノックと供に扉が開かれた。
ジーストを従えたマクシミリアン。
オリビエは立ち上がっていた。

「待たせましたね。まあ、座りなさい」
オリビエは再び腰を下ろし、あいていた一人用の椅子に腰掛ける男を睨み付けていた。

「説明しようか」
「お願いします」
「我らが戦線を張っていたルールズの街の市役所が襲われたのが始まりでした。二ヶ月前には北部の勝利を受け、士気の上がっていた我が軍は優勢でした。しかし、敵は内部にいました。市役所を襲ったのは農民たち。敵軍の共和政府に呼応して自分たちも自由をと、蜂起したのです。挟撃を受ける形となった我らは善戦しましたが、長く続く戦争に疲労は隠せない。先に逃げ出したのは他でもない、ルールズの衛兵たちです。市長と指揮官が殺されるとかの領邦の兵は散り散りになりました。残された我が軍は孤立し、何とか退路を保とうと戦っていました。その内、侵攻して来たクランフ軍は、亡命貴族を標的にし始めたのです。彼らは亡命貴族、彼らの中の裏切り者をまず倒そうとしました。我らはその隙に乗じて退却してきたのです」
「侯爵様は!?」
ヨウ・フラが声を発した。
「おそらく、捕らえられファリに連れて行かれるでしょう」

音は悲鳴に似ていた。
オリビエの足元に硝子が散った。
「オリビエ様」リエンコが肩に手を置いた。オリビエはそこにないグラスを持っているかのようにじっとしたまま微動だにしない。
「ファリでは、連日のように反革命派の人間を裁判にかけていると聞く」
「たすけ、だせないのですか」
誰もオリビエの言葉に返事をしない。
顔を上げ、マクシミリアン、ジースト、ヨウ・フラを順に見つめたが、だれもが視線をそらした。
「僕は、クランフ王国に帰ります!侯爵様を助けに行きます」
立ち上がったオリビエはすぐにリエンコの手で引きとめられる。
「放せよ!侯爵様の居場所が分かったんだ!助けに行く、だから、でなきゃ」
裁判が行われれば、死刑。
「放せ、リエンコ!」
叫んでも。オリビエは身動きできず、リエンコは必死で押さえつける。蹴っても、暴れても、終いには額を胸にぶつけても。押さえつける手が緩むことはなかった。
暴れ疲れ、オリビエはぐったりと座り込んだ。

「とにかく、好きなだけ滞在を許可します。どうするかはお前たちの自由です。クランフ王国の共和主義者どもは気がふれているとしか思えません、あの歌声。今思い出してもぞっとする」
マクシミリアンが疲れた顔をし、ジーストをつれて出て行った。

残された三人は言葉もなく。
しばらくして、リエンコが「オリビエ様、怪我してます」と。大人しくなったオリビエを座らせるとガラスの破片で切った膝に止血の布を巻いた。

次回、第二十五話:「祖国へ」は3月16日公開予定♪がんばれるかな~?(忙しい時期なので少し不安)

これが公開される頃は、ファミリーバドミントンの大会のために京都へ。
(大会自体は滋賀県ですけど、宿泊を京都にしました~)なので予約して自動公開します♪
久しぶりの京都なのに…一緒に行く仲間は体育会系~寺?仏像?別にどこにも行きたくない…って。
もったいなぁぁああいい!!シーズンオフとはいえ京都ですよ?京都!!
半日の観光、私が仕切って見せます!!なんて、まだ、これから計画するのだけど。間に合うか。
大会の結果と旅行の様子はいずれ、日記に…。


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藤宮さん♪

お引越し…。いろいろと変化のある時期ですね♪

そうそう。オリビエの前には困難ばかり~?
懐かしいあの町…どうなっていることやら!!
んふふ。楽しんでいただけると嬉しいです!

まずは描ききれるか、が課題…どきどき^^;

公募ですか!?
おお~。がんばってくださいね!

私も藤宮さんくらい文才あったら、挑戦するのにな~今はオリビエ君で精一杯ですよ~。

何とか…

なんとかネット開通したので、お邪魔できました~。
引っ越しなんて何度もするもんじゃないですね。
まあ、それはいいとして。

侯爵様、一体どうなってしまっているのでしょう。
帰る…、とはいえ、オリビエ君のことだから、また波乱の連続になるんでしょうけど…。

うう、これ以上、ひどいことにならなければいいと、願ってしまいます。
…戦乱の時代、皆少なからず飲み込まれていくのは、運命なんでしょうか。

次がすごく待ち遠しいです…。
でも、公募の原稿がまとまらないと、ゆっくり出来ないので、更新日には来れない(泣)

…いつも通りですが、こっそり応援していますね♪
ではでは、失礼します~。

松果さん♪

お久しぶりです~♪
コンクール、どきどきしていただけました?
あのあたり、もっと他の候補の劇団を出してじっくり盛り上げてもよかったかなと反省しつつ。でも、オリビエくんの物語のツボはそこじゃないのでさらっと、それでも楽しめたらいいなと考えていました♪
よかったです~!
さて、しばらくヴィエンヌで過ごしていましたが。
革命の時代の祖国へ戻りますよ~♪
時代の流れ…。お楽しみにっ♪

お久しぶりです

コンクールのあたりからもう~ドキドキしながら感想書きたかったんだけど、最新話におじゃまします~。

うわ~ん侯爵様ー・・・
どこまで憎たらしいんだマクシミリアン侯!
居ても立ってもいられないオリビエ、これからどうするんでしょう。
何か、大きな時代のうねりに飲み込まれていく予感・・・

kazuさん♪

おはようございます!
kazuさんのコメントもらうと、更新したという気分になります♪
そうなんです。私も昨日、インデックス作り損ねたので修正して、確認しようとしたらもうアクセスできなくて…あせりました!
でも、治ってよかった♪

ぞっとさせる歌声。うふふ。いいところに目をつけて~♪さすが。
いずれ、何の歌かは分かると思います♪
京都のお話…むふ。←多くを語らない

あせりました・・・@@;

昨日、夜、らんららさんのブログが開けなくなってしまったので、めちゃあせりました;;
以前あった、ブログ開けない不具合再到来かと><
よかった~、開けました^^

侯爵様がオリビエくんのために戦場へ行ったというのは、こういう理由だったのですね。
マクシミリアン候がけしかけただけではなく、本当に徴兵対象だった。
それを持ち出されてまで侯爵様は、軍に必要な方だった。
あぁ、侯爵様が無事でありますように。
しかし懸命に祈るオリビエくんやヨウ・フラくんにアマーリアちゃんの無邪気さは辛いものでしたね。
可愛そうだけれど^^;

マクシミリアン候をぞっとさせた歌声・・・
ううぅ;;
お願いします、侯爵様を助けてください!
エスファンテの人たち、ズレンくん、皆に向けて祈ります!!

続き楽しみにしてます~~

京都のお話も、楽しみに今から見に行ってきますね^^
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