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片翼のブランカ 22

<<…美味しい食事は幸せにしてくれます。
ステキな物語はココロを満腹にさせてくれます。
ココちゃんのお話、美味しくいただいてくださいね。
ココちゃんの冒険、第22話です!>>


食卓を五人で囲んで、にぎやかな楽しいランチになった。
普段静かなシュナイダーさんが、張り切っているのだろうか、たくさん話した。
たいていは、教授がジュネーブでいかに日々の生活に無頓着で、研究に没頭すると食事を取ることも忘れてしまうかというような、面白い話だった。
教授は、始終照れたり、反論したり、顔を赤くしたりして、楽しそうだった。
ヨハンナは、じっと、笑っている母親を見上げていた。そして、教授の顔を見つめていた。
ココは、そんなヨハンナの顔を見ていた。
「ヨハンナ、お話しよう!」
ココがヨハンナが食べ終わるのを見て、その手を引っ張った。
「うん」
「あらあら、後でおやつを持って行ってあげるわ」
シュナイダーさんは二人が席をはずすことを喜んでいるようで、ニコニコ笑って言った。細い目が余計に細くなっている。
二人はシュナイダーさんに肩を押されて、二階にある、小さな白い部屋に行った。
「ココちゃんのお部屋?」
「うん」
ココは、ベッドのフワフワに寝転んだ。
「いいなぁ」
ヨハンナが、スカートにつけた、小さなエプロンを握り締めて、ココを覗き込んだ。
「じゃあ、半分こしよ」
ココは、ごろんと転がって、ベッドを半分あけた。
「うわ、ふわふわ!うちと違う!」
ヨハンナもココの隣に寝転んだ。
「ヨハンナね、ココちゃんに会いたかったの。ママがココちゃんがいないってずっと泣いていて、かわいそうだったの」
「ココも会いたかった」
ヨハンナはうつ伏せで顔の下に腕を組んで、あごを乗せた。
その横顔が、気になって、ココはずっと見つめていた。
「あのね、ヨハンナね、ここに住むんだって」
「ママは?」
「ママも一緒。最初はね、病気だからって遠い町の病院に入院するんだって言ってたんだけど、ブッフェルトさんが一緒にこないかって言ってくれたの。ママ、迷ったんだけど、ココちゃんがいるよってヨハンナがいったら、じゃあって。ねえ、ココちゃん。ママのおそばにずっといてあげてね」
ココは、なんだか不思議な気分になった。
「ココ、ママのそばにもいるけど、ココ、ヨハンナのそばにいたい」
ヨハンナの、大きな目が、ココを見つめた。
「ココちゃん、優しいね」
「うん?だってね、ココね、ヨハンナのこと大好きなの。えと、恋なの」
どきどきしていた。きっと、顔も赤くほてっている。
ヨハンナが隣のココを見て笑った。
「ヨハンナもココちゃんのこと好き!大好き」
そういって、ごろんと横になって、ヨハンナが手を伸ばした。
ココも同じようにごろんとして、手をつないだ。
向かい合っている。
ココが笑うと、ヨハンナも笑う。
どきどきした。

 「片翼のブランカ」第一話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-51.html

 「片翼のブランカ」前回のお話はこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-86.html




「えとね、ココちゃん。ヨハンナ女の子だから、ココちゃん男の子ね」
「なあに?」
「ヨハンナ、一度ね、教会で見たことあるの。結婚式って言うんだよ」
「けっこんしき?」
「うん。結婚するときにね、やるの。ママも昔パパと結婚式したんだって。女の人がとってもきれいでね、牧師さんが、言うの」
ふんふん、とココはうなずく。ココは、ヨハンナとずっと一緒にいたい、そう思った。
どきどきして、他には何も考えられなかった。
「誓いますかって。それでね、そういわれたら、誓いますって、言うのよ」
「ふうん」
ヨハンナは神妙な顔になって、続けた。
「やめるときも、すこやかなるときも、えーと、ヨハンナを大切にしますか」
「誓います」
「次、ココちゃんだよ!」
「えと?誓いますか?」
「誓いますっ!」
そういうと、ヨハンナはココの口元にキスをした。
目をまん丸にしたココは、飛び起きた。
また、ドキドキが大きくなって、胸を押さえた。
「ココちゃん、いやあね、感動した?」
ヨハンナがいたずらっぽく笑った。
「ココ、よく分からないけど、えと、えと」
ヨハンナは寝転んだまま、笑い出した。
「ココちゃん顔、真っ赤だもん!可愛い!」
「いやん」ココは恥ずかしくなって、手で顔を覆った。
「ヨハンナも、ちょっと、どきどきしちゃった。ママとキスするのと、ちょっと違うね」
「ココもどきどきするの…」不思議だった。
泣きたいような、気持ち。でも、いやなドキドキじゃなかった。
その時ドアをノックする音。
「入るわよ。クッキー焼いたのよ」
シュナイダーさんの声に、ヨハンナ起き上がって、ココの口元に人差し指を当てた。
「結婚式のは、ひみつよ」
「…」
ココはまた、赤くなった。

シュナイダーさんが、お部屋の窓際の小さな机に、お茶とクッキーを置いいてくれた。
「ありがとう!シュナイダーさん、あとは私がやります」
ヨハンナが慣れた手つきで、お茶をカップに注いだ。
「あら、おませさんね」
「あら、違うの、私、ママがやることは何でもできるの」
大人っぽい口調で話す七歳の子供に、シュナイダーは笑った。
本当に、しっかりしていること。また、そうでなければ、生活できないのかもしれなかった。
その大人ぶった態度に、一抹の寂しさも、シュナイダーは感じていた。
いずれ、ここにいるからには、もっと、子供らしくしていていいのだと、教えてあげなくては。
子供が子供らしくあることは、人間の成長にとても大切なことなのだから。

シュナイダーさんが、ドアを開けて部屋を出ようとした時、階下から、いやな感じのやり取りが響いた。怒鳴り声に近い。
ココは驚いて、ベッドから飛び降りた。
ココの名前を誰かが言った!
もしかして、シェインが来たかもしれない!
シュナイダーさんの脇をすり抜けて、階段を駆け下りていく。
「ココちゃん!」

玄関で、教授と村長の息子が、声を荒くして話していた。
ココの姿を見ると、村長の息子はうっすら笑って、話しかけてきた。
「おや、これは、ココ、おいで」
青年は黒いコート姿で、背後に体の大きな男の人二人を従えていた。
その内の一人が、青年を押しのけるように前に出て、ココのほうに手を伸ばした。
ココは驚いて、数歩下がる。
「ココ、奥にいっていなさい!私は大事な話がある」
先生が大きな男の人の前に立ちふさがった。
「教授、申し訳ありませんが、政府の要請でしてね。連れて行きますよ」
「止めて!」
ロザーナだった。
廊下を駆け抜けて、黒い服の男にすがりついた。
髪を振り乱し、形相が変わるほど睨みつける彼女の様子は、ココも驚いた。
男は、一瞬ためらった。
「絶対だめよ!ハンスと同じことには、しないんだから!連れて行かれて、彼は二度と帰ってこなかった!もう、絶対、どんなに脅されたって!」
男は、乱暴にロザーナを振りほどいた。
その弾みで、壁に肩をぶつける女性を、教授が抱きとめる。
「何てことするんです!乱暴な!あんたたち一体、なんなんですか!警察を呼びますよ!」
教授の言葉に、男は銃を取り出した。
「な…」
村長の息子も驚いて、廊下の隅に座り込んだ。
「このことは、黙っていてもらいます。
教授、あなたならわかるでしょう?ハンスは甲状腺がんだった。
あの時期に、その病気になることの意味が。
いえ、まあ、検査の結果、彼の病気の原因は、事故とは関係なかったのですがね。
このあたりにセシウムの風が流れたという証拠もありませんし、そういう正式発表もない。単なる、偶然だったのですがね。
ただ、その子供は違う。明らかに、何かの汚染によって生まれ出てしまった」
シュナイダーさんが、ココを後ろから抱きしめていた。細い眉をひそめて、言った。
「一体、なにを言っているの?」
教授は、思い当たるうわさを聞いていた。
「チェルノブイリ、か。政府はこのあたりに汚染された塵を含んだ風が流れてきたといううわさを否定した。しかし、調査は続けていたというわけだ」
「もちろん、調査は必要です。結果がどうあれ、ね」
1986年4月に起こったチェルノブイリ原発事故。
その長期にわたって燃え続けた核の灰は、気流に乗って北ヨーロッパのほとんどの国に降り注いだという噂が流れた。
それは、認めた国もあったが、スイスではその事実はなかったことになっている。
しかし、政府が、灰に多く含まれていた放射能物質セシウムの影響がもっとも顕著に現れる甲状腺がんの患者を調査していることは、当然でもあった。
それが、その性質上、密かに行われていたことも。
「主人を、帰して!あなた方が、病院から連れ去って、連絡があったときには彼はもう…」
「ご主人はお気の毒でした。
連れ去ってと言うのは語弊がありますがね。より大きな病院に転院させただけですし、治療しようとしていたわけですから。
今となっては、まあ、ご主人はそういう病気で、亡くなる運命だったわけで。
ただ、奥さんを死に目に合わせられなかったことは申し訳なく思っていますよ」
ニコリともせず、男はいった。
「なんて、こと…」教授は拳を握り締める。
そんなことが、あったとは。その事実を、彼女は抱え込んで、だから、ハンスの病気の話を嫌がっていたのか…
教授はロザーナを抱きしめた。
ロザーナは泣いていた。震えていた。
「誰にも、話してはいけないと、そういって、脅しておいて…あなたたちは、ココちゃんまで…」
ふんと、一つ鼻で笑って、大柄な黒い服の男は、銃を構えたまま、ココに近づいてきた。
「ココちゃん、逃げて!」
シュナイダーさんが、ココを背後の階段に押しやる。
「逃げろ!」
「逃げて」
みんなの声に押されるように、ココは懸命に駆け上った。

背後から、怒鳴り声がいくつも聞こえる。
悲鳴。
一瞬、振り返りかけたけれど、ココは懸命に走った。
戸口でそっとのぞいていたヨハンナと部屋に入ると、扉を閉めて、鍵を閉めた。
「どうするの?ココちゃん!」
それから、テーブルを引っ張って扉の前に置いた。
どきどきする、足が震える。
どうしよう!
「ココちゃん?」
ヨハンナが抱きついてくる。
「わかんない、わかんないの」
ココ、どうしたらいいの?
扉をどんどんと叩く音。

鍵が、いやな音とともに壊れて、はじけるように床に落ちた。
「きゃ」
「ヨハンナは、ベッドに座っていて!大丈夫、ココだけ、逃げるから」
ココは窓に、たった一つの窓に駆け寄る。
「ココちゃん!」
屋根とおそろいの緑の色の枠で、ガラスがはまっている、その窓を開く。強い風が吹き込む。
それでも、そこしか、出口はなかった。

変な音がして、扉が開いた。
臭い煙のにおい。
男は足でテーブルの蹴り倒して、どんどん入ってくる。
ココは、窓の外をのぞいた。
窓の下は、緑の屋根。
もう一度だけ、ヨハンナの方を見た。
ヨハンナはベッドに座って、怯えたようにココを見ていた。

そろそろと、屋根に降りると、風に翼をあおられて、転びそうになる。
すぐに、男が後を追って、屋根に降りる。
ココは必死で緑の薄いタイルを敷いたような屋根にしがみつきながら、横に進む。
冷たい感触を、裸足にひたひたと感じる。
男は、窓枠に片手でつかまって、こちらに手を伸ばす。
「おい、落ちるぞ!こっちに来い」
「いや!」
強風にあおられて、男の帽子が飛んだ。屋根にその影が走る。
ココは震えながら、ふらふら揺れる翼を必死に小さくたたもうとしていた。
男の後ろから、シュナイダーさんが組み付いた。
「ココちゃん、じっとしていて!危ないわ!」
男に殴られて、シュナイダーさんが窓の向こうに消えた。

「だめ!ひどいことしないで」

ココが怒って、男のほうに向かおうと、身を翻したときだった。
ひときわ強い風に、あおられた。
ココの手が、離れた。屋根がするりと離れていく。
「あ!」

空が見えた。
足元には何もない。
まぶしい太陽と、白い光。
ぐるりと目が回って、ココは目をつぶった。

 「片翼のブランカ」続きはこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-88.html


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