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「音の向こうの空」第二十七話 ①

第二十七話:革命の表裏


馬車から眺める景色。隣に座る衛兵は、オリビエに同情の視線を送り。
「貴方の演奏はすごかった。もし、できるなら。もう一度聞かせて欲しい」
そう、肩を叩いた。
馬車が停まり、先導する騎士が門兵に何事かと尋ねられている。

「お、オリビエ様!」
覚えのある顔が窓からのぞいていた。毎日オリビエがここを通う姿を見送っていた衛兵だ。
オリビエが少しだけ微笑んで見せると、驚きの表情を強張らせ、「…お帰りなさいまし」と。深く頭を下げた。
それが何を意味するのか。主を失い、新しい街づくりを勧めてきた人々、それを見守ってきた衛兵たち。オリビエは彼らにとって、侯爵と同じ印象をもたらす存在だった。
見知った顔を見つけるたび、彼らがそっと視線をそらすたび、オリビエは不安を掻き立てられた。

「なかなか、人気がありますな。以前はこの町の名士でしたか」
ダンテスがオリビエを導き屋敷内を進む。後ろ手に組んだふくよかな手が、神経質に何度も開いたり握ったりされる。オリビエは後ろから眺めながら、「名士ではないです」と応える。そう、ただの雇われ楽士だった。

「オリビエ様!」
駆け寄りかけた、大柄な黒い姿。
モスが。真っ黒な顔に透明な涙を浮かべていた。
その姿に気おされるのか、振り返るオリビエを衛兵が後ろから小突いた。

「オリビエ様!」
モスの声が大きくなる。手に持っていた箒が音を立てて床に倒れた。
気付けば目の前にモスがいた。しっかりとオリビエの両手を握りしめる。暖かい手はそのままなのに、モスは以前感じていたよりも小さく思えた。オリビエは淋しくなる。モスにも老いが見えていた。

「オリビエ様、お久しぶりです」
「モス、お前も元気そうだね」
「お一人ですか、どうして……」
頼りになる大切な友人にサーベルが突きつけられ、引き離される。オリビエが名を呼んでも、その姿を振り返ることも衛兵が許さなかった。


市庁舎として使われているという屋敷は以前とあまり変わりなく。ただ、壁に無造作に貼られた宣言文や法律の告知の紙がひらひらと目に留まった。
使用人たちの部屋への通路からヘスが姿を見せる。ビクトールと夫人が逃げたことなど知らないだろう。知らない方が、幸せだろう。
オリビエは少しだけ微笑んでヘスたちメイドの前を通り過ぎた。

広間は議場として使われているらしい。
中央の演台を囲むようにテーブルが据えられていた。
大きな窓から中庭が。そして薄暗く曇る向こうに六角形の音楽堂が見えた。
空を描いたチェンバロは残っているだろうか。懐かしいそこはなぜか廃墟のような印象だ。気になってオリビエはずっとそちらを見つめていた。

「ああ、カーテンがないから」
そう気付くと口をついて独り言になっていた。

「必要でない装飾品や調度品はすべて、街のために売り払いましたからね」

反対側の扉から、長身のルグランが姿を現した。かつて、エスファンテの市長を務め、リツァルト侯爵とも親交が深かった。亡命の際にはこの街に残ったのだ。
その背後に、三人の紳士が立っている。さらにその後には、ダンテス中尉が衛兵を従えている。
「お久しぶりですね、オリビエ殿」
ルグランはしわの増えた顔に愛想のいい笑みを浮かべた。
「ルグランさん、今も市長をなさっているのですか」
「市長ではなくてね。議長なんですよ、今は。街の議会を代表しています」
「そうですか」
ルグランが議長というなら、この街では相変わらず、貴族階級のものも力を持っているということだろうか。それとも賢い転身を遂げたのだろうか。ルグラン自身は貴族ではないが、昔から貴族に取り入り財を蓄えていた。革命を最も恐れていた一人だろう。


「こちらは、ファリから派遣された調査委員の方々です。普通なら、オリビエ。亡命貴族は財産を没収され、祖国への裏切りにたいして罰が下される。つまり、死刑ということですな」
ルグランは薄情にそう告げ、オリビエはうつむいた。

「……そうですね」
マルソーが言っていた。故郷はなくなったと思えと。

「ところがオリビエ。君はとんでもないものを隠し持っていた」
オリビエは顔を上げた。
とんでもないもの?

「まあ、かけようではないか」
三人の調査委員のうち最も高齢と思われる男が適当に座った。それに習って、ルグランもダンテスも、他の委員も座る。
オリビエも衛兵にサーベルの柄でつつかれ、示された椅子に座った。

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