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「音の向こうの空」第二十七話 ②

第二十七話:革命の表裏



ルグランが懐から丸めた紙を取り出した。
それは、覚えがあった。
「オリビエ、君が侯爵様の養子になっていたとは知らなかったよ」

荷物を没収されたのだ。公爵に会えたら、報告したいと持ってきていた。
オリビエがサインしたそれは古い用紙。オリビエのサイン以外は十年近く経っている。それが、とんでもないものなのだろうか。
オリビエが黙っていると、ダンテスが口を開いた。

「つまり。貴方の本名はオリビエンヌ・フォン・オルファス・シュスター。ファリにいるリツァルト侯爵が亡くなり爵位を継げば、侯爵。というわけだな」
「侯爵様は。あの、ご存命なのですか。ファリにいらっしゃるのですか」
ダンテスはにやりと首をかしげた。
「さあ。人のことを心配している余裕などないのではないかな」
ごほん、と。咳払いがダンテスを黙らせた。

「すまないが、中尉。我らに仕事をさせてくださらんか」
調査委員の一人がダンテスを睨んでいた。
調査委員は神妙な顔つきでオリビエを正面から見つめていた。眼鏡をかけた細い顔の顎の長い男。黒髪の四角い印象の男、白髪の混じった髭を蓄えた男。三人は皆、きちんと上着を羽織り襟元には小さな徽章が光っている。

「我らは国民公会より任命された調査委員だ。貴方が亡命した貴族であると聞いてファリから駆けつけたわけだ」
正面の男がそう話している間、眼鏡をかけた男が丸めた書状を開いてオリビエに掲げて見せた。遠くて書いてある内容など読めるわけはないが、「ここに、国民公会で決議された法律がある。亡命貴族は1791年のうちに帰国するべし。さもなくば資産は没収し、反逆の罪に問われる」と、どうやら簡略化して読み聞かせたらしい。
「まずは、君がどういった家柄のもので、どこに亡命しいつ戻ってきたのか。どんな資産をもっているのかを聞かせてもらいたいね」

オリビエが押し黙っていると、脇に立っていたダンテスがオリビエの肩をぐんとつかんだ。
「黙っていても、同じことだ。調査委員会は簡易裁判の権限もある。ここで反抗したならそのまま罰することも許されているのだ」
初対面の時からダンテスはオリビエを嫌っている様子だったが、今も執拗にオリビエの頬を剣の柄で押さえつける。
「ダンテス中尉、それでは話したくとも話せまい。離れてくださらんか」
委員の一人がたしなめた。
渋面を作りながらダンテスが離れる。
オリビエは痛む頬を手の甲でぬぐった。
汚らわしいとでも言わんばかりの行動にダンテスが顔を高潮させたが、オリビエにその意識はなかった。

「僕は市内の音楽家ラストン・ファンテルの子として生まれました。十三歳で両親をなくし、リツァルト侯爵様に引き取られ、養子縁組をしました」

引き取られてから養子縁組までの期間についてはわざと言及しない。養子縁組が何かしら処遇に影響のある事柄ならば様子を見てからのほうがいい。

オリビエは委員の一人と視線が合い、ふとそらす。委員のうち最も年配の男性は蓄えた髭のせいか表情は柔和に思えた。侯爵様と同年代の男はきりりと胸を張り腕を組んでオリビエを見つめている。
「ふむ。なるほど」そう、男は呟いた。

オリビエは「僕たちは、1989年の秋、この街を去ってアウスタリアへ移り住みました」と続ける。
「街の資産も土地も衛兵も、市民に譲り僕らは帝国でひっそりと生活していました」

三人はなにやら互いにひそひそと言葉を交わす。市民に譲り、が彼らの興味の対象だろう。オリビエは委員の反応を観察していた。そのうち、業を煮やしたダンテスが、
「真にリツァルト侯爵の後継者であるなら好都合でしょう。このエスファンテの資産を国へ譲り渡したという書面を取ればこの混乱も解決するというものです」
三人は一斉にダンテスを見つめ、真ん中の男が眉を寄せた。
「黙っていればよいものを」

オリビエは彼らを見比べた。ダンテスは意味が分からないようで憮然とし髭をなでている。
ダンテスは余計なことを言ったのだ。
ルグランは委員とダンテスと双方に視線を泳がせている。

ああ、そうか。
オリビエは目を覚まされた。街を取り巻く状況がはじめて理解できた。
つまり。

「先ほどの法律でいう没収される財産にエスファンテの土地は含まれないのですね。わざわざ譲渡の書面を取らなければならないというのはそういうことでしょう。確かに我らが亡命した年にはそんな法律はなかった。侯爵様はこの土地を市民の代表に委ねた。国が没収を決めた時にはこの街は侯爵様の資産ではなかった」

侯爵の資産でないものを、国が没収するなどできはしないのだ。
まして国有財産として市民に売りつけるなど。

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