08
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「音の向こうの空」第二十八話⑤

第二十八話:牢獄の天使



程近いカフェに入ると、男は窓際の席を選ぶ。
「いらっしゃいませ。今夜は鴨が入ったの。夕食、楽しみにしてくださいね」と。メイドが男に笑いかける。
「ありがとう」
そっけない返答の男に、少しふっくらしたメイドは嬉しげに笑い返し、それからズレンを見つめ「お飲み物はどうされますか」と首をかしげた。
ズレンの視線が厳しいために途中から声が小さくなる。
「コーヒーを」男は二つだと手で示した。
メイドが去れば、ズレンはやっと息を吐き、椅子にもたれかかった。
強面の外国人はここで宿を取っているらしい。メイドが親しげになるにはそれなりの魅力、安心感を与える何かがあるのだろう。ズレンは張り詰めた警戒を少し緩める。
「名前を聞いていないが」
問えば男は「ああ」と。忘れていたといわんばかりにそっけなく応えた。
「オリビエ様にはリエンコ、と呼ばれている」
「様?…使用人には、見えないが」
どう見てもオリビエと並べばオリビエが従者だろう。そう想像したのを察したのか、リエンコはふふ、と小さく笑った。
それが、妙に似合わず、ズレンは見てはいけないものを見たような気分になる。
「協力したい。オリビエ様を救う」男は真っ直ぐズレンを見つめそういった。
「……協力、されても」つい、ズレンは言葉がこぼれる。
あいつは自分から、助かる道をふさいだ。ズレンが視線を手元のカップに落とすと、リエンコは笑った。
「署名のことを悔いているのか。道は一つではない。私は何をしてでも救い出す。貴方にその覚悟が無いのなら、見て見ぬ振りをして欲しい」
リエンコの視線は鋭く、決意の深さを物語る。
「何をしてでも、とは。あんた、物騒なことを考えていないだろうな」
「無実の人間をギロチンにかける。それほど物騒な世の中は無いと思うが」
ズレンは言葉に詰まった。
「亡命の何がいけないというのか。自由を謳う革命政府がおかしいだろう。人は行きたい場所に行き、住みたい町に住む。貴族が生きづらい世の中を作っておいて、逃げ出してはいかんなど。これほど無慈悲なことは無い」
リエンコの言葉は正しい。
そう感じてしまったからには、ズレンは反論もできない。
「私はこの国から、オリビエ様を助け出す。ズレン・ダンヤ。貴方は頭の良い人だ。出来れば敵に回したくはない」
「……あんたが、何者であれ。一生追われることになるかもしれないのだぞ」
リエンコは肩をすくめた。
「すでに祖国など失っている。制覇したい国も無ければ、上り詰めたい地位も無い。砂上の楼閣に夢見るときは終わっている。自らの信念を曲げずに生きる。それが、私の行き着いた答えだ。ズレン・ダンヤ。貴方は何を求めここに生きている。幸せそうには見えない」
「……悪かったな」
「オリビエ様に、会わせて欲しい」
もしかするとこれが。この男の真の狙いなのか。
そう思いつつ、ズレンは「まあいい。ついて来い」と。冷めたコーヒーを一気に飲み干し立ち上がった。

次へ♪
関連記事
スポンサーサイト

Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。